あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、昨年から引っ張っているファイヤージェルの後編。やっと本題です。
身近なものを使ってファイヤージェルと似たような性質のものが作れないかということになりました。
PVA入りの洗濯のりと硼砂を使って、スライムに似たものを作り、早速実験です。遠目には、生身の指から火がボウボウと燃えているように見えるし、時間も20秒以上保ちます。
「これで行きましょう。」
どうやら、ディレクターの満足のいくものができたようです。ファイヤージェルとは違うかもしれませんが、人間が火だるまになっても大丈夫な裏づけ実験には使えるだろうということで、私も納得し目前に迫っているロケに臨むことになりました。
ロケでは、ファイヤーマンの行う、実際のファイヤースタントに圧倒されましたが、私にとって一番の関心事はファイヤージェルの成分です。いったい何を使っているのでしょう?スタッフからファイヤージェルを作れるのは、世界で二人しかいないということを聞いて、なお一層興味がかき立てられました。
「なぞの白い粉に水を混ぜて慎重にかき混ぜています。」
「先日、実験で作ったスライムより粘性度は低いみたいです」
一緒に実験したスタッフから逐一情報が届けられます。
私に正体を暴いて欲しいと言いつつ、本人が一番その正体を知りたいようです。
いよいよ本番。
局側が準備した実験と平行して、本当のファイヤージェルを使った実験も行います。

「どうぞ、触ってみてください。においをかいで見てください。味見してもいいですよ。」
この心の広い言葉に甘え、五感のうちの四感と第六感をフルに使って分析を始めました。正体を暴くのにそんなに時間は必要ありませんでした。
学研で長年「科学」のふろくの開発に携わってきた私の頭の中には、創刊以来40数年、アイテム数にして3500を超えるふろくのデータベースができあがっています。ファイヤージェルを触りながら、その中の一つがヒットしたのを感じました。ロケでは、それに言及することはありませんでしたが、早く実際に実験したくて仕方なくなりました。
翌日、早速、湯本データベースにヒットしたアイテム〜「4年の科学」のふろくのある素材を使って実験し、昨日の推測はほぼ間違いなかったことを確信しました。指に火をつけてもまったく熱くありません。ついに正体を見つけたのです。
この瞬間、私は世界で3人目の男になったのです!!
ロケは終わったので、3人目の男が活躍できる場はありませんが、それでも十分満足でした。「科学のふろく」を活用して正体を暴くことができたからです。
数日後、番組スタッフから電話が入り、私がロケで作った“ファイアージェルもどき”を使って、スタジオで実験したいとのことでした。これは願ってもいないチャンスです。
「科学のふろくの素材で実験し、世界で3人目の男になれたことが証明できる!」
打ち合わせをすると、大きな問題が出てきました。
ロケで使った、ホワイトガソリンやベンジンなどは、消防法の関係でスタジオ使用ができません。比較的引火性の低い灯油を使わなければならないのです。灯油は、ストーブの燃料として使われるので、燃えやすいと思われがちですが、芯になるものがないとなかなか火をつけることができないのです。
ファイアーマンたちはさすがに火の専門家です。スタジオで演じる時は、灯油にシリカ系の細かい粉を混ぜていることがわかりました。早速、実験室にあるシリカゲルを使って実験してみると、見事に火がつきます。私にとって新たな発見です。科学する喜びに胸を躍らせながら、最良の素材を見つけるべくさらに実験を進めました。結局、スタッフが当たりをつけて取り寄せてくれた粉が最良で、その粉を灯油に混ぜて当日の収録に臨みました。
収録当日、楽屋で“学研版ファイヤージェル”を準備していると、そこへ先日のロケで顔見知りになった通訳のアメリカ人(おそらく)が現れました。流暢な日本語の挨拶とともに、私たちが準備しているものを覗き込み、ヒョイとジェルを指につけました。そして、
「ロケのときも日本の科学者(私のことらしい)は、すごいと、ファイアーマンたちと感心してたんだけど、本当にすごい。ついに、作ってしまったんですね。」
と言ってくれたのです。私としては0から作ったのではなく、あくまでも「科学のふろく」を利用しただけなので、多少後ろめたい気もしましたが、直感的ではあったものの、ファイアージェルが科学のふろくの素材に近いと見破ったということへの評価と解釈して、その賞賛を素直に受けることにしました。
結局、放送で実験はそれなりに成功したものの、ファイヤージェルに近いものを作り上げた話などは出ませんでした。これは、本作りでも往々に経験することですが、調べたり準備したことをすべて載せるわけには行きません。ページの関係もあるし、こちらの意図を汲み取ってもらうためにわかりやすく構成するのが編集の仕事です。TVも編集作業が一番大変だと聞いています。放送された番組から、相当苦労されて、編集されたことが伝わってきました。結果と成果は私の頭の中のデータベースにしっかりインプットされましたので満足です。

今回の番組作りを通して、いろいろな実験にチャレンジすることができ、また私の財産が増えました。
だから、実験はやめられないのです。
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このブログ、今年もこのようなボチボチペースで更新していきます。
よろしくおつきあいください。