HOME 特集一覧 > 林彩子さんと「いっすんぼうし」

わんたの Special Interview vol.1

わんたが毎回インタビューするよ! 第5回は、「いっすんぼうし」の絵をかいてくれた、絵本作家でフリーの編集者、林彩子さん。
ぜひ読んでわん!

わんた:彩子さんはフリーの編集者として、作家として「がっけんのえほんやさん」の昔話18作品(2016年9月現在)の製作に携わっていただきましたわん。そのなかの1つ、「いっすんぼうし」は、絵描きさんとして絵も担当! デジタル絵本と紙の絵本では、いろいろ違うことがありましたかわん?

林:10年近く、編集者として幼稚園や保育園で配られる月刊絵本の製作に携わっているのですが、構成を考えてラフをかいて…という編集の作業は、そんなに違わないと思いました。最初、デジタルではどういう動きが可能なのか手探りなところがあったので、ちょっととまどうこともあったのですが、しかけ絵本の構成を考えることもあるので、キャラクターの動きや場面転換などは、それにも通じるな…と。


「いっすんぼうし」のラフ

デジタルの場合、声優さんに読み上げられますよね。昔話は、原作に忠実なものからコンパクトにあらすじをまとめたようなものまでいろいろあります。作家としては、子どもたちが物語としてお話の世界を楽しむのに1画面にどのくらいの文章量が適切なのかに気を配りました。

わんた:この18作品は、打ち合わせをして彩子さんに組み立ててもらった構成をベースにしながら、わんたたちが絵描きさんに絵をお願いしますわん。わんた、絵描きさんとお話しするのが楽しかったわん! そのあと、仕上がった絵をデジタルの製作会社さんに、動きや音楽のイメージをお伝えしてできあがっていくわけなんですけど、完成した作品を見て、どう思いましたかわん?

林:「デジタルではこんなふうになるんだ!」と。あ、もちろんいい意味で(笑)! 「にんぎょひめ」(たなか鮎子/絵)では、水面から画面がゆっくり降りて、お城を背景に、空気の泡がふわふわと浮かんでいく様子が、想像していたよりずっと素敵でした。

自分が絵を担当した「いっすんぼうし」では、川の流れにそって、お椀に乗ったいっすんぼうしがゆらゆらと左から右に流れていく様子も気に入っています。こういうところは、やっぱり紙の絵本とは違ったおもしろさだなと。

いっすんぼうしは小さいので、ちょこまかと動くところもかわいかったです。あまり動きすぎるとアニメになってしまうので、見る側が想像力を使って楽しめるという感じに仕上がっていてよかったなと思いました!

いっすんぼうしがお椀に乗って流れていくところ。 いっすんぼうしがきょろきょろしながら町中を歩いているところ。 いっすんぼうしが鬼に飲み込まれそう!なところ。

わんた:「いっすんぼうし」の川の背景の絵は、横長なんですわん。 原画の場合、キャラクターに動きがつけられるよう、背景を別にかいていただくお願いをしていたんだけど、絵描きさんとしては、やっぱりたいへんでしたかわん?

林:背景を別にかくことはそうでもなかったのですが、人物の場合、顔を左右や上下に振るとこうなるかな…などと、つながった姿をイメージしながら体のパーツを分けてかくのはちょっと難しかったですね。でも、やったことがなかったので、新たな挑戦として楽しめました。

いっすんぼうしがお椀に乗って流れていく、川の背景画。 「いっすんぼうし」のキャラクターの原画。体のパーツが分かれている。

わんた:彩子さんは、「がっけんのえほんやさん」での昔話の文章だけでなく、お話の作家さんとしてもご活躍中ですわん。お仕事のバランスは?

林:そうですね…。絵と文、両方をできたらいいな~と思っていたのですが、お話の依頼を受けることが多いです。うまく説明できないのですが、文章の方が素直にかけるというか。

「いっすんぼうし」では、わんたくんのアドバイスのおかげで、あまり迷わず素直に絵をかけたなと思うのですが…。

わんた:えへへ。わんた、お役にたちましたわん!

林:ありがとう、わんたくん。でも、絵をかくときは、「こうかくほうがいいのだろうか?」などと頭で考えすぎてしまうことがあるのかもしれません。美大受験もそうですが、大学時代は、かいた絵や作品が評価されて成績になるので、失敗したくない気持ちが、今も奥底にあるのかな…。

ほかの人の絵を見ると、のびのびかいているように思えるのに、自分はそうじゃない気がして。自分の表現はこれだ!というものが見いだせていないのかも。

わんた:クリエイターさんの苦悩…ですわん。彩子さんは多摩美術大学のご出身でしたわん。

林:そうなんです。専攻はグラフィックデザインでした。そもそもは、子どものころから絵をかくのが好きで、幼稚園、小学校のときは近所のお絵かき教室に通っていたんですよ。でも、小学生のときにパッケージデザインの仕事を紹介している番組を見た影響で、デザイナーという仕事にあこがれるようになりました。自分のデザインした商品がお店に並ぶなんて素敵だなと。その思いはけっこう続いて、美術系の学部がある大学の附属高校に進み、美大に入ったまではよかったのですが、パッケージデザインの授業を受けてみると「あれ、なんか違う?」…。
商業デザインは制約が多いこともあって、実際にやってみると全くおもしろくなかったんです(笑)。

やりたいと思っていたことが、やりたくないことに変わりました。「じゃあ、何がやりたいの?」と模索する中で、中学校の家庭科の授業で紹介された絵本『わたしのワンピース』(にしまきかやこ/著 こぐま社/刊)に衝撃を受けたことを思い出したんです。その後、本屋さんで『バスにのって』(荒井良二/著 偕成社/刊)を見つけて強く惹かれ、自分も絵本を作りたいと思うようになりました。幼少期によく読んでもらっていたことも影響しているかもしれません。それで結局、卒業制作は大きな絵本を作りました。

卒業制作。840×600×10mmの大型絵本。

わんた:なるほどわん~。

林:多摩美の卒業生はデザイン関連や広告代理店などの企業に就職する人が多いんです。私もいくつかの会社をまわってみたのですが、なんだかピンとこなくて…。大学の外の友人には、アルバイトをしながら月刊誌に投稿したり、出版社へ持ち込んだりして絵本作家を目指している人もいたので、「ああ、こういう道もあるんだな」と。両親も、やりたいようにやりなさいというゆるい?感じだったので、周りと比べて焦る事もあまりなかったですね。
卒業してからは、学童保育や保育園でのサポートといったことをしながら、「あとさき塾」(注1)に通ったり、月刊誌に投稿したりしていたのですが、なかなかものにはならず…。そんなとき、出版社で働く大学の同級生から、絵本の編集の仕事をやらないかと誘われたんです。結局、6年近くお世話になりましたね…。

(注1)あとさき塾:絵本編集者、土井章史さんと編集者・エディトリアルデザイナーの小野明さんが共同主宰する、プロの絵本作家を養成するためのワークショップ。

わんた: フリーになるきっかけは?

林:出版社では、月曜から金曜までフルで働いていたのですが、ずっと契約社員(半年更新のアルバイト)という形だったんです。お仕事は楽しかったですし、編集者としてだけでなく、作家やイラストレーターとしての経験も積ませてもらいました。同じ部署の方々はみなさん優しくて、とても恵まれていたと思います。でも、30歳を前にして、ふと、このままバイトでいいのかな…と。それと、編集者対作家・イラストレーターとしての仕事が9:1くらいだったので、もっとクリエイターとしての部分を増やしていきたいという思いもあり、思い切ってフリーになることにしました。

わんた:わんとー。一大決心ですわん!

林:フリーになった当初は編集者としての仕事の依頼が多かったのですが、いまは編集の仕事が6、文章や絵が4という感じでしょうか。最初は不安ももちろんありました。でも、「がっけんのえほんやさん」の仕事もそうですけど、ありがたいことに違う部署や別の会社の方から声をかけていただいたりもして、活動の幅が広がったと思います。

出版社勤務時代に編集や作を担当した月刊誌「プリン」(学研教育みらい)。 『おにきちおにぎり』(せべまさゆき/絵 学研教育みらい/刊)。
作を担当した1冊1話の月刊絵本「なかよしリボン」(こじまさくら/絵)と
「むしむしみっけ!」(いりやまさとし/絵)は「がっけんのえほんやさん」
でデジタル化されている。

絵よりも文章の仕事が多いといいましたが、今、自分のなかでかきたいのもどちらかというと文章で、「文章の時期」なのかなと。絵本のお話だけでなく、エッセイや小説もかいてみたいです。
まだ始めたばかりなのですが、仕事を紹介するものとは別に、旅エッセイのブログも開設しました。今年から「47都道府県の水辺をめぐる旅」を始め、そのことを少しずつ綴っています。6月に沖縄、7月に埼玉の長瀞、8月は秋田、岩手に行きました。9月は静岡に行きたいと思っています。がっちり予定を決めないで、「あ、来週行こう!」みたいな、ゆるい旅です!

わんた:ブログ、読みたいわん! ぜひサイトを教えてくださいわん!

林:ごめんなさい、ナイショなんです。もうちょっとかきためて、自信がついたら公表しますね(笑)!

わんた:旅といえば、彩子さんはメキシコやグアテマラ、ペルーやアルゼンチンといった南米によく一人旅してたって聞きましたわん。

林:よくでもないけど…好きですね。なんでしょうね、ゆるい造形や色彩に惹かれるのかな。メキシコやグアテマラは、人がきさくで素敵でした。その土地で出会って、ちょっとした交流が生まれて。道に迷っていたら地図をかいてくれたり、タクシーの運転手さんとのぎこちない英語の会話やスペイン語でする店員さんとの値段交渉とか…。毎回、どんなことが起こるかな?とワクワクします。

わんた:わんた、実は人見知りなんですわん~。うらやましいわん。

林:もちろん危険なところは避けるし、変な人にはついていかないですよ(笑)! あまり日本人が行かないところだから、日本人に会うとかえって親しくなったりもしますよね。一人旅どうしだと、一緒にご飯を食べたり。確かに日本に比べると治安はよくないところもありますが、不安よりも、行きたい気持ちが上回ります。まあなんとかなるかな?と。

わんた:これからはどんな活動予定ですかわん?

林:フリーになってすぐは、いただいた仕事をすべて引き受けていて、ちょっと体調を崩したことがあったんです。4年経った今では、自分にとっての適度な仕事量も見えているので、旅や自主制作をする時間も大事にしながら、仕事をしていけたらいいなと。
絵のほうも、ちょっとずつかきためていって、自分の中で「絵の時期」がきたら、また個展などもやりたいなと思っています。

(取材:わんた 掲載:2016年9月)

わんた:わんたも彩子さんとお仕事できて、
楽しかったですわん! 
彩子さんが文や絵を担当した絵本、ぜひ読んでわん!

profile

たなか:鮎子 AyukoTanaka

絵本作家・フリー編集者 林 彩子 Ayako Hayashi

1982年東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。出版社での編集の仕事を経て、2012年作家、編集者として独立。保育絵本を中心にお話の執筆を手がける。主な作品に「名作よんでよんで」シリーズ、『おにきちおにぎり』(絵・せべまさゆき)『おもちマン』(絵・ひらてるこ)(以上、学研)『カガミーマンと なつまつり』(絵・さこうしんじ)(メイト)など多数。『露木式7つの大解法数学1A・2B』『大学入試センター英語プレ問題集BASIC』(以上、学研)等でイラストを担当。6月より47都道府県を巡る旅企画を開始。個人的に旅エッセイを綴っている。

仕事の紹介を中心にしたブログ
http://hayashipurin.seesaa.net/

「がっけんのえほんやさん」では、「ももたろう」「3びきのやぎ」など昔話18作品(2016年9月現在)の文章を手掛ける。「いっすんぼうし」では絵も担当。

*オリジナルのお話『むしむしみっけ!』(絵・いりやまさとし)『なかよしりぼん』(絵・こじまさくら)もデジタル化され、「がっけんのえほんやさん」で見ることができる。

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