![]() |
![]() |
|
近年、世界のほとんどの地域で気温が高くなっている。とりわけ北極や南極では、地球全体の平均的な気温上昇の何倍ものスピードで気温が上昇しているといわれている。極地の温暖化について調べてみよう。 |
北極と南極の環境は同じ?
地球の両端に位置する北極と南極。どんなイメージがあるだろうか。
「氷におおわれ、雪が降る真っ白な世界」とか、「マイナス何十度にもなるとても寒い場所」のように、似たような場所だと想像する人も多いだろう。でも、北極と南極とではちがうことがいくつもある。
自転する地球を「こま」にたとえると、北極と南極は、そのじくに当たる場所だ。
北極には、北アメリカ大陸とユーラシア大陸、グリーンランドに囲まれた「北極海」があり、北極海には、海水がこおった厚さ数mの「海氷」が一年じゅううかんでいる。つまり、北極には陸地がない。
一方の南極は、面積が1205万平方km(日本の33倍)もある大陸で、数十万年の間に降り積もった雪が固まって氷になり、大陸全体をおおっている。その氷の厚さは平均でも1856m、中には4000m以上の場所もある。このように広大な面積をもつ氷は「氷床」と呼ばれている。
北極と南極の氷の厚さを比べたイラスト。南極の氷のほうが、はるかに厚い。
また、北極と南極では気温にもちがいがある。海に氷がういている北極はに対して、南極は陸地の上に氷ができている。海は陸地に比べて冷えにくいため、南極のほうがより低い気温になる。北極の冬の平均気温は-25℃だが、南極の冬の平均気温は-50℃にもなる。寒さがとても厳しい南極大陸では、植物がほとんど生えないけれど、北極海沿岸の「ツンドラ」という土地では、夏の間は植物が生える。
このように、似たイメージのある北極と南極でも、ちがう点がたくさんあるんだ。
減っていく地球の氷
北極の海氷や南極の氷床など、地球にある氷や雪には、太陽の光や熱を反射して地球が暑くなり過ぎないようにする大切なはたらきがある。しかし、人間の活動によって二酸化炭素(CO2)やメタンなどの温室効果ガスが大気中に増えて地球の気温が上昇し、極地をはじめ、世界各地の氷や雪が減っていると報告されている。
2007年9月には、北極海の海氷面積が、1978年の観測開始以来最もせまくになった。北極海の海氷は、例年、春から夏にかけて減少していき、秋の始めから冬の間に再び海水がこおって海氷ができる。1997年以前は、海氷の面積が最もせまくなる9月下旬でも、北極海のほとんどが海氷におおわれていたが、1998年以降は全体の半分ほどしかおおわれなくなった。1998年は、太平洋の赤道付近で海水温が高くなるエルニーニョ現象のために、世界全体で気温が異常に高くなった年だ。この年に北極海へ温かい海水が流れこみ、もともと流動している海氷の流れを速くして、さらに温かい海水が流れこむようになり、ますます海氷ができにくくなってしまった。そして、2007年9月は、アラスカとシベリア付近の海氷が大きくとけ、過去最小の面積になった。氷は太陽の光や熱を反射するけれど、海はほとんど吸収してしまう。北極海の海氷が縮小すると、太陽の光や熱を吸収しやすい海が広くなって熱を蓄え、海水温が上昇する。海水温の上昇は、気温の上昇や、さらには気候の変化につながると予測されている。
2005年9月(左)と2007年9月(右)の北極の海氷の様子。
2007年には、アラスカやシベリア付近の氷がなくなっているのがわかる。
提供:アメリカアラスカ州立大学北極圏研究センター 宇宙航空研究開発機構
一方、これまで温暖化の影響があまり観測されていなかった南極でも、氷や雪がとけていることが観測され始めている。1999年から2005年7月まで、アメリカ航空宇宙局(NASA)が行った人工衛星での観測によると、2005年1月に南極大陸西部から900kmの内陸部で、日本の面積より大きい約42万kmもの氷や雪がとけていたことがわかった。氷や雪がとけた一帯は、当時、0℃以上の気温が1週間近く続き、最高気温が5℃以上になっていた。氷床のような陸の氷がとけて海に流れ出すと、海面が上昇する。このままでは2100年までに海面は最大で約1m上昇すると予測され、海岸沿いの低い土地は、水没してしまうおそれもある。
すみかを失う動物たち
極地の氷が失われることで、生き物たちにも大きな影響がおよぶと予測される。北極のホッキョクグマやセイウチ、南極のペンギンやアホウドリ、アザラシなど、極地にすむたくさんの動物のすみかが失われることになる。
一生のほとんどを海氷の上で過ごすホッキョクグマは、カナダやアラスカ、グリーンランドなどの海岸付近に約2万2000頭が生息している。泳ぎやもぐりが得意で、アザラシなどを捕まえたりして食料にしている。しかし、温暖化によって海氷が少なくなると、狩りができなくなってしまう。国際自然保護連合(IUCN)が行った調査では、過去20年間にカナダのハドソン湾西部で22%、カナダとアメリカの両国にかかるボーフォート海南部で17%ものホッキョクグマが減ってしまったことがわかっている。
海氷の上に生息するホッキョクグマ。温暖化が進み、海氷がせまくなっていけば、
ホッキョクグマは100年以内に絶滅すると予測されている。
提供:海洋研究開発機構
また、南極では、ペンギンが危機にある。魚類やプランクトンを食料とするペンギンは、乱獲による魚類の減少や温暖化による海氷の縮小によって、ひなをふ化させることが難しくなっているのだ。動物や自然の保護活動を行う世界自然保護基金(WWF)によると、海氷の面積が40%も縮小した南極西側の沖合では、ヒゲペンギンの集団の個体数が30~60%も減ったことが確認されている。また、南極大陸でも、この50年間で個体数が半分になったコウテイペンギンの集団もある。
南極のペンギンたち。
ペンギンは南半球だけに生息し、4種類のペンギンが南極大陸で繁殖地する。
提供:国立極地研究所
地球全体の環境にも影響の大きい極地だけに、北極の海氷、南極の氷床のどちらも、今後の変動が注目される。このままでは、近い将来、わたしたち人間も、さまざまな影響を受けるだろう。今以上に極地の環境を悪化させないためにも世界各国が協力してこの問題に取り組んでいかなくてはならない。
![]() |
南極大陸の自然や、気象現象、そこに生きる生物のほか、南極大陸への挑戦と観測の歴史をおさめた一冊。写真やイラストを使った解説で小学生にもピッタリ。 |
世界最大の自然保護団体「世界保護基金(WWF)」のサイト。地球温暖化についての説明や、ホッキョクグマや南極のペンギンなど、世界中で絶滅の危機にある動物の情報も紹介されている。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)地球観測センター(EORC)
人工衛星によって得られた、さまざまな情報を公開しているサイト。「北極圏海氷モニター」のページでは、現在の北極海の海氷の大きさを知ることができる。
極地の観測や研究を行う研究所。サイトでは、南極に関するまめ知識や南極観測船「しらせ」などの情報がたくさん紹介されているよ。
海洋研究開発機構 地球環境観測研究センター 北極海気候システムグループ北極と南極のちがいや、地球温暖化による北極の氷への影響が説明されているほか、「写真ギャラリー」のページでは、ホッキョクグマやセイウチなど北極に生息する生物の写真も閲覧できるよ。



![[がっけんのずかん] じどうしゃ・ひこうき](images/book/book0801.gif)