第44回
昆虫(こんちゅう)写真家
栗林 慧(くりばやし・さとし)さん
1 未知の世界を写真にする

昆虫写真家の栗林慧です。
写真家というと、人物や風景を撮(と)る人を思いうかべるかもしれません。でも、ぼくがおもに撮影(さつえい)するのは昆虫。アリ、バッタ、ホタル、チョウなど、いろいろな種類の昆虫を国内外で撮影しています。
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思いどおりにいかないからおもしろい!

昆虫がおとなしくしているときを見はからうのもコツ。たとえばチョウは花の種類によって蜜(みつ)を吸(す)う時間がちがうので、どの花にとまっていればシャッターチャンスがねらえるかを知っておくと、いい写真が撮れます。
ただ、そういう知識(ちしき)や観察力をもってしても、相手は生きものだから思いどおりに撮れないこともあります。NHK総合(そうごう)テレビ『ダーウィンが来た!生きもの新伝説』という番組で、南米のジャングルでグンタイアリの行列のなかにいる女王アリを撮影したときは5日間徹夜(てつや)しました。また、四季おりおりのホタルのすがたを撮影したときは、それぞれのシーンを1年で撮りきれず、結局6年かかりました。1つの作品をつくるのに、大変なエネルギーと時間がかかっているわけです。
でも、つらいとは思わないな。ありのままの自然のすがたをカメラにおさめるわけですから、そうカンタンにいくはずがありません。その意味では、思いどおりにいくほうがワクワクできず、つまらないともいえますね。

また、上のカミキリムシが飛んでいる写真も、じつはそれまで撮影できなかったものです。昆虫は足をたたんで飛ぶと思われていたけど、こんなふうに足を広げて飛ぶのもいるんですね。これは専門家(せんもんか)も知らなかったこと。ぼくの仕事は、未知の世界を写真にするということでもあるんです。
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