虫にひかれたのは小学生のときです。家から学校までは野をこえ山をこえ、4キロくらいありました。森や林のなかを道草をくいながら歩いていると、脱皮(だっぴ)するセミや、サナギが今まさにチョウに生まれ変わろうとしているところを見つけたりします。虫って子どもと大人のすがたがぜんぜんちがうでしょう? どうしてこんなに変わるんだろうと、すごく不思議でした。
同時に、機械やものの動くしくみにも興味(きょうみ)をもっていました。工作も好きで、たとえばテープレコーダーなんかを見ると、内部はどうなっているんだろうと分解(ぶんかい)しちゃう。分解したうちの半分は元にもどせなかったんだけど(笑)、とにかくそれくらい機械いじりが好きでした。カメラは機械のカタマリですからね。いつか手に入れて、昆虫をクローズアップして撮(と)ってみたいとずっと考えていました。
カメラの設定(せってい)を調整する栗林さん。長崎(ながさき)県にある仕事場は、後ろは野山、目の前は海という自然に恵(めぐ)まれた環境(かんきょう)だ。
21歳(さい)でカメラを買い、仕事のかたわら写真学校に通って勉強したり自分で工夫したりしながら、昆虫のくらしを撮影(さつえい)しました。撮りためた作品が写真コンテストで入賞し、これならやっていけるかなと、昆虫写真家として独立(どくりつ)したのが 30歳のこと。以来、40年にわたって昆虫を撮りつづけてきました。
2006年には科学写真ですぐれた実績(じっせき)をおさめた人におくられる「レナート・ニルソン賞」を、2008年には紫綬褒章(しじゅほうしょう)という国からの表彰(ひょうしょう)もいただきました。こうした評価(ひょうか)はもちろんうれしいけれど、四季の移(うつ)りかわりを肌(はだ)で感じながら昆虫を追いかけていく、その楽しさがぼくにとっては一番の仕事のエネルギーになっています。