小学1年生がナイフを使って「鉛筆削り大会」
~早稲田実業学校初等部の学習活動~

早稲田実業学校初等部の学習活動

2002年開校当初からナイフで鉛筆を削る

2016年11月24日、季節外れの本格的な雪に見舞われた東京・国分寺市の早稲田実業学校初等部。外の寒さがウソのように、1年生3クラスの教室は「えんぴつけずり大かい」の熱気に包まれていました。

「手と頭をはたらかせて価値あるものを創りだしていく子ども」を目指す子ども像の1つとして掲げる同校では、2002年の初等部開校初年度から、ナイフによる鉛筆削りの指導を行っています。1年生も例外ではなく、授業で使う鉛筆は、家庭においてナイフで削ってくるようにと指導されます。ただし、通常はナイフを学校に持ってくることはありません。

入学からおよそ8か月が過ぎ小学校生活にも慣れたこの時期、初めて各自が愛用するナイフを学校に持参して、日ごろ鍛えた鉛筆削りの腕前を競い合う活動が、授業の中で行われたのです。

1年生の小さな手が本格的な刃物を巧みに使う

授業が始まると各クラスの担任は、「刃先を人に向けない」「指の位置に気を付けてケガをしないように」などナイフを使うときの注意点をていねいに確認しました。続いて、新品の鉛筆と削りカスの飛散を防ぐ新聞紙などが配られ、各児童は二重三重にくるんだケースから愛用のナイフを取り出し、先生の合図で一斉に鉛筆を削り始めました。

どんなナイフを使っているのだろう?と見て回ると、どの子も鋭利な刃先をもつ本格的な刃物を手にしています。小さな1年生の手に比べてナイフは格段に大きく、6~7歳の子どもに大丈夫だろうかと気を揉みながら作業の様子を見て回りました。しかし、危なっかしくて目を背けたくなるという児童は皆無でした。

保護者がしっかり指導していることがよくわかりましたが、それでは子どもたちに失礼かもしれません。子どもの持つ潜在的な能力の高さや豊かさに改めて気付かされたと言ったほうが適切でしょう。

何人かに「毎日、ナイフで鉛筆を削っているの?」と聞くと、どの子も「はい」と頷きました。平均的な大人より確実にナイフの使い方が巧みだと感心させられる子も、少なからず見受けられました。

すべての児童が削り終わったころ、先生は作業の終了と削りカスの後始末、さらに使ったナイフの再収納を指示しました。子どもたちは削りカスを紙にくるんでゴミ箱に捨てに行き、ケースに戻したナイフをランドセルにしまい、しっかりとチャックを掛けました。

続いて、鉛筆削りの「技」を子ども同士で評価し合いました。評価の方法は各クラスそれぞれでしたが、あるクラスでは、各自がクラス全員の鉛筆削りの結果を見て回り、うまい!と思った鉛筆に一票を投じて「技」を確かめ合っていました。

手と頭を連動させて作業することが大事

先生方は、ナイフによる鉛筆削りの効果をどのように感じているのでしょうか。 「4年生になるとアウトドアクラブの活動で木を切り出したり、その木で何かを作ったりすることがあります。その子どもたちの活動を見ると、真面目に手を抜かず鉛筆削りを続けてきた子は、やはり違う」

と、石井由美子先生(生活指導部主任)は率直な印象を語ります。

「家庭科の実技、図工で彫刻刀を使うときなど、各教科のいろいろな場面で手先の器用さが発揮されますが、そんな場面のあちこちで、ナイフによる鉛筆削りの効果を目にすることがありますね」

4年前から初等部校長を務める橋詰敏長先生は、ナイフを使う活動の理念に立ち返り、手と頭を連動させて作業することが大事なのだと強調します。

「ナイフで鉛筆を削るとき、子どもたちは手だけでなく頭もフル回転させています。刃を入れるとき木がどのように削れるか予測を立て、その結果を目で見て確認・分析して次の作業に活かす。これを繰り返しているわけですね。そして技術が身についてくると、鉛筆削りの次は工作にナイフを活かそうというように、次々に応用する力がついてきます。子どもたちの将来の学業や仕事においても、こうした経験は大きな力になると信じています」

小学生にナイフを使わせることに慎重な意見もありますが、これまで保護者からの「危険だからやめてほしい」という申し出は一件もないそうです。保護者は、手を使うことの大切さや、その活動からかけがえのない力が育つとする学校の教育理念に、十分な理解を示してくれている、と橋詰校長は確かな手応えを感じているようでした。

▲ナイフで鉛筆を削る際に注意することを確認する担任。
▲安全を確認する板書。
▲実物投影機を使って、正しい鉛筆の削り方を示す担任。
▲うまいと思った友だちの削り技に1票を投じる児童。
▲削った鉛筆を大画面テレビに拡大表示して、どの鉛筆がうまく削れているかを確かめ合う子どもたち。

▲作業後の後片付けを指導する担任。