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ICTを使って子どもの創造する力をはぐくむ 株式会社グッド・グリーフ代表取締役 朝倉 民枝さんインタビュー 第1回(全4回)

スマートフォンやタブレットなどの電子機器は、タッチひとつで気軽に操作でき、子どもを魅了するコンテンツにあふれています。ICTを子どものために活用するには、どんなことに目を向ければ良いのでしょうか。自らもクリエイターとしてICTを活用し、子どもの表現活動をサポートしている朝倉民枝さんにうかがいます。

インタビュアー 梅本真由美(サイエンスライター)

朝倉民枝(あさくらたみえ)
クリエイター。株式会社グッド・グリーフ 代表取締役。日本子ども学会理事。子ども服デザイナーをへて、1991年よりNHKテレビ番組などの3Dコンピューターグラフィックス(以下CG)を制作。2001年、個人事務所開設を機に子どもたちの創造表現活動をサポートするピッケシリーズの開発をはじめる。最初にリリースした「ピッケのおうち」がキッズデザイン賞、グッドデザイン賞を受賞。その後リリースした「ピッケのつくるえほん」「ピッケのつくるプレゼンテーション」は、教育現場や子ども向け施設、小児医療施設で幅広く活用されている。NHK Eテレ「てれび絵本」で「ピッケとがーこ」シリーズがオンエア。2004年度 IPA未踏ソフトウェア創造事業スーパークリエータ認定(経済産業省)。

第1回 子どもとICTの幸せな出会いを願って

――はじめに朝倉さんの活動について教えてください。


ICTならではの機能を活用し、子どもたちの創造表現活動をサポートする活動をしています。ICTの良いところをいかしたソフトウェアの企画・デザイン・制作、学びのカリキュラム作りと実施がおもな業務です。

――ICTを活用した子どもの創造表現活動において、朝倉さんが具体的にどのようなとりくみをされているのか教えてください。

子どものためのお話づくりソフト「ピッケのつくるえほん」を開発して、それを活用したお話づくりワークショップをおこなっています。

わたしのワークショップの目的は、ICTを活用した絵本をつくる体験を通して、言葉と物語の喜びを子どもたちに届けることです。
満足度という意味において、絵本のできはもちろん重要ですが、より大切に考えているのは「つくる過程」です。そこをソフトウェアで支えようとしています。

想像の世界で心を解き放ち遊ぶことは、子どもの心を楽しみで満たします。また、大好きな人が自分のつくったお話を心から喜んで聞いてくれることは、子どもにとって格別な喜びです。
この喜びは、自尊感情や人への信頼につながり、どんな技巧にもまさるコミュニケーションの基盤となります。

“ソウゾウする力(=想像力と創造力の両方)”は、本来どの子どもにも備わるものです。ソフトウェアは単に、その芽をさらに伸ばすことに、少しばかり手を貸すにすぎません。子どもの生来の力を信じて、ソフトウェアをつくりたいと思っています。

テクノロジーを創造のために使い、子どもたちに、消費者としてではなく、つくる人としての深い喜びを味わって欲しいと願っています。

――朝倉さんがつくったソフトウェア「ピッケシリーズ」誕生にこめた思いを教えてください。


ピッケといっしょ http://www.pekay.jp/

2001年にピッケシリーズをつくりはじめた当時は、インターネットやデジタルメディアなどの新しいメディアは子どもに悪い、という風潮だったんです。「子どもに与えるな」とまで言われていました。

その当時、わたしは3DCGクリエイターとして、こうした新しいメディアが人びとに夢や希望を与え、人が本来持っているすばらしい力をわき出させてくれるものだと実感していました。

そうした人の創造力を誘発する可能性のあるものを「子どもに与えない」という考えが本当にもったいなく思えて、自分にできることはなんだろうかと考えました。これからの子どもたちはコンピュータやインターネットと生涯つきあっていくだろうから、その最初の出会いを幸せなものにしたいと願ってつくったのが、親子で遊ぶインタラクティブウェブ絵本「ピッケのおうち」です。

その後、成長してからもピッケと遊びたいという子どもたちのリクエストにこたえる形で「ピッケのつくるえほん」「ピッケのつくるプレゼンテーション」へとラインナップが広がっていきました。

――ピッケシリーズは、クリエイターとしての朝倉さんの経験と願いから生まれたのですね。次回はピッケシリーズの活用例である、お話づくりワークショップについてたずねたいと思います。

「ピッケ」および「ピッケのつくるえほん」は、株式会社グッド・グリーフの登録商標です。

第1回 子どもとICTの幸せな出会いを願って
第2回 ICTの得意わざをいかす! 子どもの創作活動サポート「お話づくりワークショップ」
第3回 小児医療施設におけるICT活用事例、院内学級でお話づくりワークショップ
第4回 大学でのゲスト講義&小学校の先生向けレクチャーレポート 青山学院大学・青山学院初等部

梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。