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ICTを使って子どもの創造する力をはぐくむ 株式会社グッド・グリーフ代表取締役 朝倉 民枝さんインタビュー 第4回(全4回)

朝倉民枝(あさくらたみえ)
クリエイター。株式会社グッド・グリーフ 代表取締役。日本子ども学会理事。子ども服デザイナーをへて、1991年よりNHKテレビ番組などの3Dコンピューターグラフィックス(以下CG)を制作。2001年、個人事務所開設を機に子どもたちの創造表現活動をサポートするピッケシリーズの開発をはじめる。最初にリリースした「ピッケのおうち」がキッズデザイン賞、グッドデザイン賞を受賞。その後リリースした「ピッケのつくるえほん」「ピッケのつくるプレゼンテーション」は、教育現場や子ども向け施設、小児医療施設で幅広く活用されている。NHK Eテレ「てれび絵本」で「ピッケとがーこ」シリーズがオンエア。2004年度 IPA未踏ソフトウェア創造事業スーパークリエータ認定(経済産業省)。

第4回 大学でのゲスト講義&小学校の先生向けレクチャーレポート 青山学院大学・青山学院初等部

青山学院大学 教育人間科学部3年生 杉本卓先生ゼミでのゲスト講義

2016年6月1日、青山学院大学 教育人間科学部3年生、杉本卓先生のゼミで朝倉民枝さんがゲスト講義をおこないました。この講義は教育学科3年生の専門演習、いわゆるゼミの一環として実施されたもの。

教育関係の仕事をめざす学生たちは「ピッケのつくるえほん」にどんな反応を示したのでしょうか。


教育学科では、幼稚園・小学校・中学校・高校の教員免許、図書館司書、社会教育主事の資格取得が可能で、広く教育に関心のある学生が学んでいます。ゼミに参加しているのは、ICTやコミュニケーション、子どもや教育などの領域に関心がある学生ばかりとのこと。

講義はお話づくりソフトを使った事例紹介からはじまり、朝倉さんがどのようなねらいでソフト開発をしたかなどを解説しました。その後、30分間の実習で学生がみずからソフトを使って絵本をつくり、全員の前で作品を発表する、という流れでした。

実習では学生に1人1台ずつ「ピッケのつくるえほん」のアプリが入ったiPad miniがわたされ、それぞれが絵本をつくりました。

各自の関心領域で、具体的な事例と対象者を想定して進めます。

学生たちは「登園をしぶる幼稚園児のために」「小2でかけ算を習いはじめる子どものために」などピンポイントで対象を決め、30分という限られた時間内で全員が、各自の課題でものがたりをまとめていました。


受講した学生の感想

ゼミの担当教授である杉本先生に、朝倉さんによる授業の位置づけと学びの目的についてたずねました。

青山学院大学教育人間科学部教授杉本卓先生
杉本 卓(すぎもとたく)
青山学院大学教育人間科学部教授。言葉とメディアと教育にかかわる諸問題に関心をもっており、近年はインターネットを利用した教育、電子メディア時代の社会・文化、読み書きと学習・発達の関係などの問題について研究している。共訳に『本が死ぬところ暴力が生まれる』(新曜社)、共著に『インターネットを活かした英語教育』(大修館書店)『教育の方法・技術』(学文社)などがある。

――ゼミの学生たちにどんなことを学んで欲しくて朝倉さんを招いたのでしょうか。

ICTの教育利用についてです。ゼミでは毎年、EDIXという教育向けのIT専門展に学生を連れていっていますが、そうすると「最先端のものをどう使おうか」という考えにかたむきがちです。 しかし朝倉さんはアプリやテクノロジーより前に「ものづくり」があるということをよく認識しています。

ワークショップで子どもと物語をつくって、それを共有する創造の大切さをよくわかっていて、そのなかでテクノロジーを非常にひかえめに使っている。ツールとして必要な範囲で謙虚に使うというスタンスですよね。

そのスタンスは、ちいさい子どもが対象であればなおさら、とても大事なのです。学生たちにはぜひそういうところに触れてもらいたいと思って、毎年朝倉さんに来ていただいています。

――教育の本質的なことを学んで欲しいということですね。

テクノロジーありきではなく、あるのだから使わなくてはという姿勢でもなく、必要なところでどうICTを使うか、学生にはそこを感じたり学んだりして欲しいと思っています。

――杉本先生、ありがとうございました。

青山学院初等部 「ピッケのつくるプレゼンテーション」使い方レクチャー

同日、朝倉さんは青山学院初等部の先生を対象に「ピッケのつくるプレゼンテーション」を授業で活用するためのレクチャーをおこないました。

青山学院初等部では、全教室に電子黒板があり、先生は全員タブレット端末をもっています。一部の学年では児童もタブレットを使うことがあるそうです。


「ピッケのつくるえほん」はお話づくりのソフトでしたが、こちらはプレゼンテーションを作成する学校向けWindowsソフトです。朝倉さんは工作の作品解説カードや絵地図などのサンプル教材を紹介しながら、子どもが簡単にプレゼンテーションを作成できるようすを再現していきました。

先生がたにも実際にソフトを使って教材を作成してもらいます。はじめに担当教科、対象学年、なにをねらいとした教材かを明確にしてから30分間の実習に入ります。

2年生を担任にもつ先生は、国語の「たんぽぽのちえ」を題材に、慎重に言葉を選びながら熱心にとりくんでいました。

子どもや保護者へのはたらきかけに加え、子どもの教育にかかわるおとな達へのアプローチも大切にしている朝倉さん。お話づくりでも、プレゼンテーション作成においても、つねに「だれのために、なにを届けたいか」と、つくる本質を説く朝倉さんの強いまなざしが印象に残りました。

「ピッケ」および「ピッケのつくるえほん」は、株式会社グッド・グリーフの登録商標です。

(おわり)

第1回 子どもとICTの幸せな出会いを願って
第2回 ICTの得意わざをいかす! 子どもの創作活動サポート「お話づくりワークショップ」
第3回 小児医療施設におけるICT活用事例、院内学級でお話づくりワークショップ
第4回 大学でのゲスト講義&小学校の先生向けレクチャーレポート 青山学院大学・青山学院初等部

梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。