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Case 16 「おもしろいからいい」でいいの?/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

Case 16 「おもしろいからいい」でいいの?/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

わたしもユカもWikipediaが大好き。でも「Wikiは百科事典」というわたしと「読みもの」というユカで、ケンカが起こりました。

出典がたくさんある英語版のWikiを見て気づいたこと

わたしも娘のユカもWikipedia(以下Wikiとします)が大好きです。

Wikiは、だれでも自由に編集に参加できるインターネット百科事典です。話題の人物、知らない言葉……気になったことをググると、検索結果のなかにたいていWikiの記事も入っています。

そんな便利なWikiですが、以前わたしは英語版Wikiである人物を調べることがあって、日本語版Wikiと少し違う印象を受けました。

英語版Wikiは、その人物の生い立ちや業績、発言にびっしり出典のマークがついていて、自叙伝や伝記、新聞など、情報源にすぐにたどり着けました。

一方日本語版Wikiでは、同じような記事でも、発言などに出典がないことがしばしばあったのです。一節(記事中の小さなまとまり)まるごと出典がないものもあり、情報の信頼度という点では、残念ながら英語版のWikiに軍配があがるように感じました。

実は日本語版Wikiの方針でも、「信頼できる情報源が公表・出版している内容だけを書くべき」「内容を検証できるよう、信頼できる情報源にあたり、出典を明記するべき」とはっきりと示されています。*1

でもこの方針は、情報を書き込んでいる人たち、そしてWikiを利用している人たち、全員が理解しているわけではないようです。

「おもしろいからいい」というユカ。それでいいの?

そんなことに気づいたわたしはユカに、Wikiは百科事典なのだから、元がたどれる情報を書くべきで、うわさ話や自説が書いてあるのは本来の形ではないと話しました。

するとユカは反論してきました。

「いまのままのほうが、読みものとしておもしろいからいいじゃん!」

そのあとは、わたしとユカの意見は平行線。口ゲンカになってしまいました。

ユカはWikiを面白い「読みもの」だと言いました。

もしかするとユカのようにネットが身近な若い世代は、Wikiを「NAVERまとめ」や「togetter」と同じ、雑多な意見やうわさを集めた読みものととらえているのかもしれません。

けれど、うわさや憶測を楽しみたいのなら別のサービスを利用すればいいのです。Wikiの目的は「面白い読みものになること」ではありません。

ユカも、出典のない記事をWikiに書いた人も、そのサービスが事実(Wikiの場合「検証可能な記事」)を重視することをわかっていないか、うわさや伝聞と事実を区別できていない可能性があります。

「うわさや伝聞」と「確かな情報」を混ぜてはいけない

Wikiに限ったことではなく、読みものとして面白いからと、うわさや伝聞と、情報の発信源が確かなものを、いっしょくたに扱うことはとても危険だとわたしは感じます。このふたつの違いを意識していないと、ネットのデマに踊らされるだけでなく、デマを発信してしまう可能性があるからです。

「辞書の引き方」や「図書館の利用の仕方」を習ったように、わたしたちは「ネットでの情報収集・提供の仕方」を、常識として身につけるべき時代になってきたようです。

いま小学校・中学校の調べ学習では、Wikiの引き写しを禁止しているところが多いそうです。

いろいろな情報がまとまったWikiだけを見て済ませる安易な学習にならないようにという配慮ですが、きっと子どもたちは「Wikiが使えないなんて不便だ」と感じているでしょう。そんな不満を聞いたら「Wikiの元になった情報を調べることの大切さ」をお子さんに伝えてください。

やがてネット情報の大海にこぎ出す子どもたちが、虚実のはざまで迷ってしまわないよう、大人が注意深く導いてあげてほしいと思います。

*1:Wikipedia 方針とガイドライン 検証可能性

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マリ(まり)

マリ(まり)

マリ(まり)

サラリーマンの夫・大学生の娘(ユカ)との3人暮らし。
大学の恩師の「あなたは一生文章を書きつづけなさい」という言葉を真に受けて、今も日々ものを書いている。
現在はIT系の会社で、セミナー関連の仕事に携わっている。
趣味は映画鑑賞。年に100本みることがひそかな目標。

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