日本の子どもの学力〜OCEDレポートより〜

第3回 ICTを使うと成績はよくなるの?(後編)

第3回 ICTを使うと成績はよくなるの?(後編)

「21世紀のICT学習環境―生徒・コンピュータ・学習を結びつける」(以下「レポート」という)について、2回にわたり紹介しました。

今回は国立教育政策研究所※1 教育課程研究センター基礎研究部研究員の小田沙織さんにこのレポートについてお話をうかがいます。

※1 国立教育政策研究所
教育行政に関する国立の政策研究所で、「全国学力・学習状況調査」「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」など様々な調査研究を実施している。

読み書きの基礎を学ぶことが大切

−−日本の生徒の情報活用能力は、国際的に見てどうなのでしょうか。

日本の生徒のデジタル読解力・コンピュータ使用型数学的リテラシーの得点は、国際的に上位にあります。また、2009年から2012年にかけて、日本の生徒のデジタル読解力の得点が26点向上しました。これは我が国の政策や教師が取り組んでいる情報活用能力の育成について、成果が表れた結果だと考えています。

−−レポートの特徴的なポイントを教えてください。

ICT機器を導入し、インターネット環境を整えれば、成績の向上にすぐに結びつくわけではないことをレポートは強調しています。重要なのは、基本の読み書き能力を身につけることです。レポートでは、全体的にコンピュータ使用型調査の得点と筆記型調査の得点の相関が高いという結果が出ています。つまり、紙を使った読解力の得点が高ければ、デジタル読解力の得点も高い結果になっています。

−−読み書きの基礎を学ぶことが大切だということですね。

とくに、シンガポールや韓国、日本などのアジア諸国では、紙ベースの筆記型調査読解力、コンピュータを使ったデジタル読解力がともに上位にランキングされ、それぞれの調査における成績上位層にも重なりが多く見られました。

しかし、こうした国では他の国に比べて学校や家庭でコンピュータやインターネットに特別多く触れているわけではありません。これは、デジタル読解力を高めるためには、教師はICTスキルに加え、義務教育の中で読み書きの基礎をしっかりと指導する必要があることを示しています。

−−情報社会では、教師の役割がますます重要になってきていますね。

レポートのタイトルにあるように、教師は「生徒・コンピュータ・学習」をつなげる存在であり、その役割は大変重要です。教師は生徒がICTを使って何をしたいのか、ICTを活用してどのようなことができるようになってほしいのかを見定め、導いていく必要があります。

インターネットから役に立つ情報を入手し、将来の人生に活かす

−−レポートでは、新しい形の情報格差が生まれていることに注目していますね。

レポートでは2009年から2012年にかけて、社会経済的背景による家庭でのコンピュータ保有台数やインターネット接続の格差が縮まったという結果が出ました。しかし、ICTの活用方法という視点では、社会経済的背景により違いがあると述べています。

とくに日本では、社会経済的に恵まれている生徒は、自由時間にインターネットから実用的な情報や自分に役立つ情報を入手したり、ニュースを読んだりしています。一方、恵まれない生徒は、オンラインゲームで遊び、自分の楽しみのために時間を費やす傾向にあります。

−−これは新しい情報格差ですね。

一方で、インターネットを過剰に利用する生徒は、学校で孤独を感じたり、学校に遅刻したり無断欠席する割合が高いという結果が出ています。インターネットを使うことの利点だけでなく、リスクやネットいじめといった有害な側面についても、十分に指導する必要があります。

−−生徒にはICTを上手に活用してほしいですね。

そのためには、生徒がインターネットから実用的な情報を手に入れ、そこから学んだことを将来の人生に活生かし、適切かつ有効にICTを活用できるよう教師が指導しなければなりません。環境整備といったハード面の取り組みだけでなく、教師のICT活用指導力などソフト面の取り組みを、車の両輪として効果的に進めていく必要があります。また、学校教育だけでなく、家庭でも保護者の指導力が求められています。

−−教師と保護者の指導力が求められていることがよくわかりました。ありがとうございました。

藤田由美子(ふじたゆみこ)
藤田由美子(ふじたゆみこ)
株式会社ユーミックス代表取締役社長。1993年の創業以来、コンピューターリテラシー教育を数多く手がける。
「生きる力」「社会力」の育成をめざして、子ども向けICT教育のカリキュラム作りにも力をいれており、大手携帯電話会社のケータイ安全教室の企画立ち上げ、ネット安全利用推進プログラムの開発など、実績多数。