シリーズ 専門家にきく!

お菓子でプログラミング!? 次世代の遊びで子どもたちの想像力をはぐくむ――玉井博久さんインタビュー 第4回(全4回)

玉井博久(たまい・ひろひさ)
さん
玉井博久(たまい・ひろひさ)
江崎グリコ株式会社 広告部クリエイティブチーム兼アシスタントグローバルブランドマネージャー。リクルートのコピーライターとして200社以上の企業広告に携わる。2012年より江崎グリコ広告部でグリコブランドの広告を担当、ポッキー史上初のグローバル統一キャンペーン「Pocky day」などを手がける。2016年、グリコードの立ち上げを実施。近著に『宣伝担当者バイブル』。

第4回 失敗は悪いことではないというメッセージを伝えたい


―お菓子の配置でプログラミングが学べるというのはとても新鮮でした。家庭でグリコードを使う場合に効果的になるようなヒントがあれば、教えてください。

 


総務省がグリコードの良いところのひとつとして、子どもが学校で学んだことを家に持ち帰って、お家の人に教える「逆世代教育」を挙げていました。

子どもが家に帰って、今日学校でおもしろいことやったんだよ、プログラミングってこうやってやるんだよ、というふうに自分が楽しみながらお家の人に教える。目の前にお菓子というリアルなものがあるから教えやすい。

教えることによって子ども自身の理解が深くなって身につきますし、家庭のなかでのコミュニケーションにも役に立ちますよね。だから保護者の方は、照明を明るくしたり、まわりを片付けたりしてグリコードが使いやすいような環境を整えていただいて、あとはお子さん自身にどんどんやらせてみるのがいいのではないでしょうか。

じつはグリコードには教材としてのこだわりがあって、多くのコースで解き方がひとつでないようにしてあるんです。目指すべきゴールはひとつだけれど、解き方はいく通りにもなる。そこがグリコードがゲームではなく、教材であるゆえんなんです。

解答に結びつくまでの解き方はいくらでもある。その解き方を自分で考えることを、グリコードを通じて子どもたちに感じてもらえればと思います。


―解き方はひとつではないというのは、これから勉強を進めていくうえでも大切なことですよね。

そうですね。やはり社会で求められるのは、答えを出すことではなく、どうやって考えていくかだと思うんです。それを体験できるのもプログラミングの良さではないかなと思います。

―子どもがまちがえたとき、保護者はどうすればいいでしょう?

グリコードは、まちがえると「しっぱい…」と出すようにしました。教材としてそれは言う必要がありますので。でも失敗すると、「やりなおす」ってすぐに出るんですよ。そこに「失敗は悪いことではない」というメッセージを込めました。失敗しないようにするのではなく、早く失敗をすることによって失敗から学んで欲しい。失敗したからこそ、なんで失敗したんだろう→じゃあ次はどうしようか→こうすればよかったのか→ああこれだったんだ、と思考をめぐらせて完成させていく。

そういう思考の流れが、今までにない商品やサービスの開発につながるということが、われわれ自身も経験でわかっていますので。

失敗したら、もう一回やればいいじゃないですか。それでもう一回やってできたなら、前の回の失敗は本当の意味での失敗ではありません。そういう意識を持って欲しいですね。プログラミング的思考とは別のことですが、そういうことも肌で感じてもらえたらうれしいです。

―そういうときに保護者は、どんなことを心がけると良いのでしょうか。


アメリカ オースティンでのワークショップの様子

アメリカのオースティンでグリコードのワークショップをしたときに感じたのですが、日本の子どもは決められたスペースにきれいにお菓子を並べていくのに対して、オースティンの子どもたちは、びっくりするほど大胆に並べていくんです。

日本だとつい「もうちょっときれいにしようよ」と保護者が口を出してしまいそうになりますが、オースティンの保護者は、すぐそばにいるけれども、手も口も出さず、時間がすぎても見守っている。プログラミングで自分なりのやり方を見つけていくということを考えたとき、こうした姿勢は参考になります。

今回、前原小学校で子どもがグリコードに夢中になっている姿を目の当たりにして思ったんです。好きなことをやっているときの子どもって、本当に夢中にやるんだなって。そういう瞬間が、もしかすると学びにつながるのではないかと思います。

「ご飯だよー」と言っても無視してなにかやっているようなときがヒントになるんじゃないでしょうか。お子さんが熱中しているものってあると思うんですよ。子どもの夢中に気づいてあげられるといいですし、子どもが夢中になっているときは、保護者はあまり手を出さずに、見守ってあげたらいいんじゃないかなと思います。

―子どもの夢中に気づき、発想力とか着眼性は子どもにまかせて見守る。わたしもそんなふうに子どもと接したいと思います。玉井さん、ありがとうございました。

第1回 お菓子でプログラミングってどういうこと?
第2回 創業者の「食べることと遊ぶことは子どもの二大天職」が開発のルーツ
第3回 小学校でグリコード。生で見る子どもたちの反応は?
第4回 失敗は悪いことではないというメッセージを伝えたい

梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。