パソコンを使わなくてもプログラミングは学べる!

親子のための「ルビィのぼうけん」ワークショップレポート

2016年7月30日(土)、“絵本で学ぶはじめてのプログラミング! 親子のための「ルビィのぼうけん」ワークショップ”が開催されました。

『ルビィのぼうけん』は世界19カ国で出版されているプログラミング教育のための絵本。この絵本はパソコンでコードを書く方法を教えるものではなく、子どもが将来プログラミングをするときに必要な考え方を身につけることを目的としています。


参加者は子ども25人・保護者25人。会場にはパパの姿がとても目立ちます

ワークショップにはフィンランドから著者のリンダ・リウカスさんが来日。

リンダさんは、「子どもたちが生きることになる未来では、世の中のすべての問題にコンピュータが関係するようになるので、子どもたちはそんな世界に対して備えておかなければいけない。だから保護者のみなさんは、子どもたちがテクノロジーに興味関心を持つような環境を作ってあげてほしい」と、気持ちのこもったメッセージをなげかけていました。


『ルビィのぼうけん』の著者、リンダ・リウカスさん

さて今回のワークショップは、パソコンを使わず、親子でいっしょに体を動かしたり手を動かしたりしながら、プログラミング的思考を学んでいくというもの。いったいどんなワークだったのでしょうか。

3つのワークで、プログラミングの考え方を体感

子どもたちはグループにわかれ、3つのワークに取り組みました。この3つのワークは、プログラミングの基礎となる3つの考え方を子どもが楽しみながら学べるように考えられたものです。

ワーク1 ダンス・ダンス・ダンス!

このワークでは、プログラミングの「ループ」という概念を体験します。「ループ」とは、同じこと、あるいは同じことのセットを決まった回数くり返すこと。ダンスで「ループ」を学ぶワーク、どんなことが行なわれるのでしょう。

まず、プログラマー(プログラミングする人)役の子どもが「まわる」「ジャンプ」「キック」「手をたたく」「足ぶみ」の動きを指示するカードを組み合わせ、オリジナルのダンスの手順を作ります。


複数の動きを組み合わせて、ダンスの手順を考えます

コンピュータ役の子どもたちは、その手順どおりにみんなでくり返しおどります。このとき大事なのは、なにをきっかけにダンスを始めるのか、ダンスをやめるのかを決めておくこと。合図でもいいし、ある回数に達したらやめるのでもOKです。ダンスがはじまると、会場の熱気は一気にアップします。


プログラマー役の子(青いTシャツの子)が考えたダンスをコンピュータ役の子たちがくり返しおどります

全員がプログラマー役を体験したあと、まとめとしてリンダさんがコンピュータと人間の役割の違いを説明しました。

人間は、素晴らしいダンスの振り付けを考え、いままでにない新しいものを作れるけれど、何度もくり返しておどるのは大変。

一方コンピュータは、ダンスを何回くり返しても疲れないし、間違えないし、休みも必要ないけれど、指示されないとダンスを始めることも終わらせることもできない、という話に子どもたちはうなずいていました。

ワーク2 ルビィのおしゃれのルール

プログラミングの「場合わけ(条件分岐)」について学ぶワークです。「場合分け(条件分岐)」とは、条件が違うそれぞれの場合においてなにをどうするべきか、コンピュータに指示すること。たとえば「もしボタンが押されたらジャンプ、そうでなければその場にとどまる」というように、プログラミングでよく使われる考え方です。

このワークでは、子どもたちは絵本の主人公ルビィのために、ある条件にあった服のパーツを選んでコーディネートします。「もし雨ふりなら、そのときはこのコーディネート、そうでなければこのコーディネート」というように、指定された条件に対応するコーディネートとそうでない場合のコーディネート、それぞれを考えていきます。


「ルビィのおしゃれのルール」で使ったワークシート

ワークに取り組むようすを保護者や指導者が見守ります

参加した女の子が考えたコーディネートを興味深そうに見つめるリンダさん

ワークのしめくくりにリンダさんから、このワークの考え方は、「if 〜 then(もし〜なら、そのときは), if 〜 else(そうでなければ)」といって、プログラミングによく出てくる考え方だということが説明され、いま行なったワークとプログラミングの考え方がしっかりと結びつけられていました。

ワーク3 こまったこと

最後は問題を解決するワークです。ここでプログラミング上の間違い(バグ)を追跡調査する「デバッグ」について学びます。

このワークで使うワークシートには、おふろに入る・食卓の準備をするといった行動が「おさらをならべる」、「スプーンをならべる」のような細かいステップに分けてフローチャートにしてあります。子どもたちは正しい行動ができるように、抜けてしまっているステップを埋めたり、順番を並べ替えたり、条件わけの矛盾を直したりしました。


どこが間違いかわかりますか?

ワークシートに書きこんでいます

次に、「はみがき」という問題を解決するにはどうしたらいいのか、自分で手順を考えて発表します。

ある子は「洗面台に行って、うがいを2回してから、うがいをするのをやめる。ハブラシで上の歯をみがく、下の歯をみがく、(中略)うがいをする、うがいをする、うがいをする、やめる」というように、回数ややめるタイミングまで盛り込んだ手順を考えていました。最初のワーク、「ダンス・ダンス・ダンス!」の成果でしょうか。


はみがきの手順を発表しています。完成度の高さに会場からどよめきがおこりました

そのほか、洗面台に歩いて行くことまで手順に入れた子、歯みがき粉をハブラシにつけることを手順に入れた子など、子どもたちの考えた「はみがき」という問題を解決する手順はさまざま。

リンダさんから、ものごとにはたくさんの解決法があり、そのなかで、間違いは必ず出てくる。そんな間違いを見つけて直すことをコンピュータでは「デバッグする」と言う、という解説があり、3つのワークは終了しました。

3つのワークにプログラミングのコードは全く登場しません。けれども子どもたちは、プログラミング的な考え方のポイントをワークを通して感じとっているようすでした。

人間にしかできないこととコンピュータが得意なことを見きわめる

ワークショップ全体を通じて印象的だったのは、人間が得意なことはなにか、コンピュータが得意なことがなにかということをはっきり伝え、人間とコンピュータの役割分担を考えさせる内容だった点です。

創造性やテクノロジーの原点は人間であり、人間は新しいものや考えを作りだし、協力しながらコンピュータを使いこなす立場だというリンダさんの考えが伝わってくる内容でした。

またプログラミング的な考え方は、パソコンの前に座ってコードを書かなくとも、ワークで体験したように日常生活のなかで学び取ることができるという発想は新鮮でした。

プログラミング教育といえば、パソコンを使い、初心者向けプログラミング言語を使って与えられた課題をクリアするもの……。そんな思い込みをひっくり返されたワークショップでした。


みんなで記念撮影

参加した方の感想

昭島市から参加した小2の女の子のパパ
思考力とか論理的な考え方を伝えるようなプログラムになっていたので、想像よりずっとよかったです。土台となる算数国語のようすをみながら、子どもにどうプログラミング教育にふれさせるのかを考えたいと思いました。

川崎市から参加した小2の男の子
自分で考えたりするところが面白かったです。ダンスでまわりながらジャンプキックというように、技を組み合わせたところをくふうしました。

※本イベントは『ルビィのぼうけん』の日本語版を出版した(株)翔泳社と小学生向けプログラミング教室を運営する(株) CA Tech Kidsの共催で行われたものです。

書籍情報

ルビィのぼうけん こんにちは!プログラミング(翔泳社)
¥1,800(税抜き)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)
株式会社コドモット代表取締役社長。
NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。