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星空は科学への入り口 国立天文台が伝える星の魅力 第2回(全4回)

縣 秀彦(あがた ひでひこ)
自然科学研究機構国立天文台准教授、天文情報センター普及室長。専門は天文教育と科学コミュニケーション。国際天文学連合国際普及室長、日本科学教育学会理事、日本天文教育普及研究会長などを歴任するほか、テレビやラジオ等でも活躍。「面白くて眠れなくなる天文学」(PHP出版)、「地球外生命は存在する!」(幻冬舎)など多数の著書がある。

第2回 この夏は火星に注目!

――いま注目されている天文学のトピックスはなんでしょうか。

この夏、まちがいなく話題になるのは「火星大接近」です。2018年の夏は火星が大接近するので、とてもよく見えます。火星はおよそ 2年2カ月ごとに地球へ「最接近」しますが、その距離は毎回異なります。というのも、地球も火星も公転軌道※1は完全な円ではなく、少しひしゃげただ円なんです。すると、火星がどの位置で地球へ接近するかによって、地球との距離が異なってきます。地球と火星がもっとも近くなる位置で近づくこと「大接近」と呼んでいます。2018年7月31日は、2003年以来15年ぶりの大接近となります。

※1 公転軌道とは、ある天体が、ほかの天体のまわりを回る運動の道筋(学研ニューワイド百科事典より)。地球・火星の場合は、太陽のまわりを回る運動の道筋となる。


2018年地球-火星の位置関係と火星の視直径(写真:国立天文台)

――ぜひ7月31日に火星を見たいので、当日は晴れて欲しいですね。

そうですね。でも子どもたちが実際に火星を見るのにオススメの時期は、8月、9月なんですよ。なぜかというと、7月31日には火星は夜中でないと見えません。8月、9月だったら、火星はまだ大きく見えていますし、夕方、学校や学童、保育所などから帰る時間帯に見えますから、ちょうどいいと思います。

――火星はどの方角に、どんなふうに見えますか。


7月31日の火星の位置(写真:国立天文台)

その時期、東の空から南の空にかけて、赤くて、とても明るい星が見えます。これが火星です。星の明るさは1等、2等など等級で呼ばれ、数字が小さいほど明るく、マイナスがつくともっと明るいことを示しています。大接近のときの火星はマイナス2.8等という明るさです。それがどれほど明るいかというと、夜空で一番明るい、おおぐま座のシリウス(マイナス1.5等)よりも約3倍明るいんです 。すごいでしょう! 肉眼で見えますから、これは見ないわけにはいかないですよ。

――火星と言えば、NASA(アメリカ航空宇宙局)が火星へ有人宇宙探査を計画しているそうですね。


火星へ人が行こうとすると大変なんですよ。NASAは今年5月に「インサイト」という無人探査機を火星へ送っていて、11月に到着する予定です。いまは地球と火星が一番接近しているから半年で到着しますけど、場合によっては何年もかかる。ましてや人を乗せてとなると費用もふくらみますし、簡単ではありません。

それでもNASAは、人類が火星に行くのは当然だという風潮を世論にアピールしています。そこまでしてなぜ火星に興味があるかというと、火星には生き物がいるかもしれないからです。われわれとはなにか? という本質的な問いのひとつは「宇宙のなかで地球にしか生き物はいないのだろうか」ということなんです。

――地球以外にも生命は見つかるのでしょうか。

いまのところ地球以外で生き物は見つかっていません。だから探しに行こうというわけです。

太陽系のなかで火星は、生き物がいる可能性が圧倒的に高いと考えられています。火星は地球とよく似ているからです。火星は地球の半分ぐらいの大きさですが、30億年以上前の火星は、いまの地球みたいに表面に海がある状態だったことがわかっています。

地球に生命が誕生したのが約38億年前です。そのころの火星はもしかしたら、地球よりも生命が誕生しやすい環境だったかもしれません。火星で生命が誕生したり、あるいはどこかからやってきた生命が火星に住み着いていたとしてもおかしくないと思っている人は多いんです。

――宇宙における生命探査はすでに行なわれているのですね。

生命といっても、われわれと会話ができるようなレベルの生き物ではありませんが、科学者たちは本気で探しています。火星以外へも探査機を送る計画を練ったり、望遠鏡を使って観測したりして、さまざまなアプローチをしています。

宇宙における生命探査は「アストロバイオロジー」と言って、いまの天文学のなかで非常にホットな分野です。

 

地球以外に生き物がいるかもしれないと思うと、なんだかワクワクしてきます。そんな思いをもって、ぜひ大接近した火星を見てみたいと思います。

次回は、星空を見ることで子どもたちはどんな科学体験ができるのか聞きます。

参考
国立天文台 特集「火星大接近2018」

(企画・構成 渡邉純子)

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第1回 天文学とわたしたち
第2回 この夏は火星に注目!
第3回 星空は科学への入り口
第4回 家族みんなで星と宇宙を楽しもう

梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。