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星空は科学への入り口 国立天文台が伝える星の魅力 第3回(全4回) 

縣 秀彦(あがた ひでひこ)
自然科学研究機構国立天文台准教授、天文情報センター普及室長。専門は天文教育と科学コミュニケーション。国際天文学連合国際普及室長、日本科学教育学会理事、日本天文教育普及研究会長などを歴任するほか、テレビやラジオ等でも活躍。「面白くて眠れなくなる天文学」(PHP出版)、「地球外生命は存在する!」(幻冬舎)など多数の著書がある。

第3回 星空は科学への入り口

――星空を見ることはどんな科学体験につながるのでしょうか。


まずは「星を見る」体験が大事だという縣さん

たとえば、スタジアムでサッカーの試合を観ると「サッカーっておもしろいな」と思って、実際にやってみたり、興味をもって応援したりするようになりますよね。
子どもにとって「興味のある・なし」というのは、「知っているか・いないか」とほぼ同じ意味なので、まずは実際に自分で体験して知ることが、興味をもつことへの第1歩になります。

――星を見たことがないのに「星がきれいだ」と言われてもピンときませんよね。

そうですよね。だから、まずは「星を見る」体験が大事なんです。星に限ったことではありませんが、子どものころになにを経験するかというのはとても大事だと思います。できる限り本物や、自然現象に接する機会をつくり、どれだけ子どもの興味や可能性を引き出せるかが、保護者や大人たちの務めだと思います。


8月12日から13日にかけての夜、ペルセウス座流星群が見ごろに (写真提供:国立天文台 2016年撮影)

――実際に体験をして星や宇宙に興味をもったら、さらに深めるための次のステップをどう用意すればよいでしょうか。

次のステップとして大事なのは、継続することです。わたし自身の経験ですと、本を読みました。当時あった「宇宙の神秘」(鏑木政岐著、あかね書房)という本がおもしろくて、何十回も読んで、そこにはまっていった経験はいまでも忘れられません。子どものころは、藤井旭さんの「科学のアルバム」シリーズ(あかね書房)などの写真図鑑のシリーズや、いろんな星の図鑑をよく見ていました。

本はいいですよ。繰り返し読めますし、自分のアイテムとして愛着がもてます。いまでも天文イベントの会場では、図鑑や本を全部暗記している小学1年生や2年生に出会うことがあります。


興味をもったら、次のステップは継続すること。

とはいえ、天文学をやったって、食べていかれないし、豊かになれない。生きていくためには、星や宇宙のことなんて関係ないと思っている人が実際はほとんどだったりします。そうであっても、年に1度くらいはプラネタリウムへ行っているかもしれません。

知っていますか? 日本人が年間にJリーグのJ1の試合を見に行く動員数が約600万人弱なんですが、それに対して、全国のプラネタリウムの年間動員数は、900万人ぐらいなんです。プラネタリウムって、じつはJ1の1.5倍くらいの観客動員数があるんですよ。

――驚きました。900万人ってすごい人数ですね。

そうなんです。それだけ多くの人がプラネタリウムへ行くということは、本人が意識していなくても、潜在的に星や宇宙への関心があるのかもしれませんね。

プラネタリウムは全国に350館以上もあるんです。また科学館など、公開している天文台施設は全国に500以上あります。各都道府県に複数のプラネタリウムや公開天文台施設がありますから、探せば意外と近所にあるんだと思います。そうした近くの天文施設に足を運ぶといいですよ。

――近くの天文施設に足を運ぶとどんな天文体験ができるのでしょうか。


国立天文台三鷹キャンパスの公開施設、天文台歴史館

冬の星空観察会(写真提供:国立天文台)

プラネタリウムや科学館では、最新の天文学や科学の成果をわかりやすく伝えてくれます。自分で望遠鏡を持っていなくても、星空観察会に参加すれば、望遠鏡をのぞいて星を見せてもらえます。とくに夏休み期間中はたくさんイベントをやっていますから、家族で出かけてみてほしいですね。

――夏休み期間中におすすめの科学イベントはありますか。

日本天文学会が行なっている全国同時七夕講演会があります。毎年7月下旬から8月上旬に、全国各地で同時に天文や宇宙の講演会を実施するイベントです。

星を楽しむ旅行もあります。「宙(そら)ツーリズム」は、空や星・宇宙を観光資源としたツアーを企画して、地域活性化をめざす活動です。空の澄んだ観光地へ行くと本当に星がきれいに見えますよ。

――いまから夏休みが楽しみになってきました。最終回の次回は、星と宇宙を家族で楽しむためのポイントを聞きます。

(企画・構成 渡邉純子)

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第1回 天文学とわたしたち
第2回 この夏は火星に注目!
第3回 星空は科学への入り口
第4回 家族みんなで星と宇宙を楽しもう

梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。