いま話題のキーワード「子ども食堂」ってなんだろう?

最近、ネットやテレビでよく目にする「子ども食堂」。ほんの2年前まで全国に319カ所だった子ども食堂は、いま2200カ所以上に増えているそうです。でも「子ども食堂という名前は聞いたことあるけれど、よく知らない」という保護者も多いのではないでしょうか? 今回は「こども食堂ネットワーク」事務局長の釜池雄高(かまいけ ゆたか)さんに、子ども食堂とはどんなところなのかを聞きました。


「こども食堂ネットワーク」の事務局長を務める釜池雄高さん。

「子ども食堂」は「子ども」と「食」を中心にした地域みんなの居場所

編集部:「子ども食堂」とはどんなところなのか教えてください。

釜池:子ども食堂とひとくちに言っても、食堂ごとに運営する方が違いますし、目的ややり方もそれぞれです。だから「こういうところ」と一概には説明しづらいのですが、

  • 子どもがひとりでも利用できること
  • 地域の人たちが、無料または低額で食事を提供する

という2つがそろっていれば、子ども食堂と呼んでいいとわたしたちは考えています。
食事の料金は、子どもは無料から高くても300円くらい。大人は100円から500円のところが多いです。なかには「だれでも無料」というところもあります。

編集部:運営しているのはどういう方たちなのでしょうか。

釜池:NPOや企業によるものもありますが、多くは個人が運営しています。50~60代の女性、つまり子育てがひと段落した主婦の方が子ども食堂を始めるケースがよくあります。ほかにも会社を定年退職した60代の男性が運営の中心を担ったり、育児真っ最中の30~40代のママたちが手がけているところもあったりして、多種多様なんです。

編集部:子ども食堂は毎日開いているものなのですか。

釜池:月1~2回というところが多いですね。なかには週1回開催するところや毎日オープンしている子ども食堂もありますが、全国的にも少数派です。時間帯は、主に平日の夜か、週末の昼に開催しています。

場所は公民館や児童館を利用しているところが多いです。飲食店を使っているところもありますし、お寺や教会ということもあります。最近はデイサービスの介護施設で開催されることも増えてきました。日中はお年寄り向けのデイサービスとして使われている施設を、夕方は子ども食堂として活用しようということですね。

編集部:子ども食堂はだれでも利用できますか。

釜池:子ども、子どもの親、地域のお年寄りなど、本当にさまざまな人が利用しています。
子ども食堂のほとんどは「子どもの貧困対策」と「地域の交流拠点」という2つの意味合いで開催されていますから、基本的には地域の人がだれでも利用できる場所です。ただし運営者の考え方によって、どちらに力を入れているかはそれぞれで、「だれでも来てください」というところもあれば、「貧困家庭の子どもを優先したい」というところもあります。

編集部:気楽な気持ちでふらっと入ったら、ちょっと場違いだったということもあり得るのですね。行ってみたいと思った子ども食堂が、だれでも利用してよいという方針なのかどうかを見分ける方法はあるのでしょうか。

釜池:お客さんの対象をチラシやポスターなどで知らせてある場合もありますが、見分けるのが難しい場合もありますね。事前に電話かメールで問い合わせてみるのがよいと思います。運営者のみなさんにはしっかりとした考えがあるので、きちんと説明してくれると思います。

わたしは、子ども食堂は“「子ども」と「食」を中心にした地域みんなの居場所”だと考えています。子どものためだけではなく、たとえば育児や仕事で忙しい親が、1食でも作らずに済むということでホッとできるなら、それはすごくいいことだと思うんですよね。


「子ども食堂」は「子ども」と「食」を中心にした地域みんなの居場所。[イラスト出典「広がれ、こども食堂の輪!」全国ツアーウェブサイト]

「子ども食堂」の数は2年間で7倍に!

編集部:2016年に319カ所※1だった子ども食堂が、今年4月には2,286カ所※2へと急増していますね。子ども食堂がここまで広まったのはなぜでしょうか。

釜池:「子どもの貧困」という問題が、新聞やテレビなどのメディアで多く取り上げられたことが大きいと思います。そして「7人に1人の子どもが貧困状態にある」といった報道にふれたとき、「自分に何かできないか」と考える方がたくさんいた。そうした方が、子ども食堂の活動を知ったとき、「それなら自分にもできるかもしれない」と思ってくださったんですね。子ども食堂を中心的に担っている主婦の方は、家族のために食事をつくることには慣れている方が多いので、始める際の心理的なハードルが低かったのだと思います。

編集部:このような広がりをみせるなかで、「こども食堂ネットワーク」は、どのような活動をしているのですか。

釜池:子ども食堂同士のつながりをつくったり、企業や団体が商品などを寄付したいという情報を子ども食堂に流したりしています。子ども食堂って、一つひとつは規模が小さいので、たとえば企業の方が「食材や物品を寄付したい」と考えても、どの子ども食堂に送ったらいいのかわからない。そういうときに、わたしたちが窓口となり、メーリングリストで各地の子ども食堂と情報を共有して、必要としているところに寄付物資を届けるお手伝いをしています。

ただし、ネットワーク活動を全国規模でやるというのはなかなか難しいのが実情です。わたしたちの事務局は東京にありますから、都内の子ども食堂のことはある程度わかっていますが、地方のことはわかりません。そういうこともあって、いまでは全国の都道府県や市区町村単位で、子ども食堂のネットワークがどんどん生み出されているんです。なかには、わたしたちよりもずっと先進的な取り組みをしているところもあります。ですからわたしたちのところに問い合わせが来ても、内容によっては各地のネットワークを紹介しています。


「子ども食堂」同士や、「子ども食堂」と「企業や団体」とのパイプ役として、「子ども食堂」の活動をあと押ししていきたいと話す釜池さん。

安定して続けられる、安全な子ども食堂を目指して

編集部:子ども食堂が抱える課題はありますか。

釜池:大きな課題は3つあります。
まず1つめは、子ども食堂を運営するのに必要な資源――場所、資金、食材、ボランティア人材をどう安定的に確保していくか。

2つめは、子どもとどうつながるかということ。運営者側の悩みどころは「子ども食堂を必要としている子にきちんと情報が届いているのかどうか」ということです。「子ども食堂を利用していない子どもの中に、お腹をすかせて困っている子どもたちがいるのではないか」という問題は常に頭の片隅にあるように思います。

わたしはこれら2つの課題は地域の結びつきで解決できると考えています。1つめの資源については、企業も含めた地域の人々が、自分たちの持っている資源を少しずつ提供すれば子ども食堂は成り立つのではないか、と。2つめの必要としている子どもについても、子どもの状況をいちばん把握しているはずの学校や行政とうまく連携できれば、解決の糸口が見つけられると思います。

3つめの課題は衛生面です。子ども食堂を開くのに、原則的には必要な資格はありません。とはいえ、もしどこかで食中毒などの問題が起これば、子ども食堂の活動全体に影響が出てしまいますから、運営者のみなさんも衛生面にはかなり気を遣っています。わたしたちも食品衛生責任者を1人以上置くことや、保健所への事前相談をすすめていますし、万が一の事故に備えて保険に加入している子ども食堂も増えています。それでも資金の関係もあり、保険加入率が100%ではないのです。ですから、すべての子ども食堂が保険に加入するために、クラウドファンディングによって資金を集める「こども食堂安心・安全プロジェクト」も行なわれました※3

編集部:課題はあるものの、よりよい子ども食堂を目指してみなさん動いていらっしゃるのですね。

釜池:そうですね。子ども食堂の取り組みが全国に広がったので、次に必要なのは子ども食堂の運営を支援する「中間支援組織」が各地にできることだと考えています。そうした組織が増えることで、子ども食堂を支援したい個人や企業といった「地域の力」がより集めやすくなるはずです。わたしたち「こども食堂ネットワーク」としても、今後、各地に中間支援が増えるような土壌づくりをしていく予定です。

編集部:ありがとうございました。

※1:朝日新聞調べ
※2:こども食堂安心・安全向上委員会調べ
※3:こども食堂安心安全プロジェクト
http://kodomoshokudou-network.com/anshin/

今まで漠然としか知らなかった「子ども食堂」について、釜池さんからのお話でかなりはっきりとしたイメージをもつことができました。
子ども食堂の運営者は、今まで社会活動を経験したことがなかったという主婦が多く占めているようです。社会的なかかわりを持ったことのなかった主婦たちが、「ご飯を満足に食べられない子どもや、いつもご飯をひとりで食べているような子どもがいる」という現実に触れ、彼らのために何かできないかと心を動かされたとき、自分にできることとして「子ども食堂」を始める人が多いと。

「貧困家庭の子どもたちを救う」というところに根ざした活動でありながら、運営者と利用者の関係は、一方的な「救う―救われる」といった間柄ではないように感じました。運営者も社会と接点を持つなかで自分の役割や社会的な意義を見出していけるし、だれかとご飯を食べたい子どもや、やむを得ない事情を持つ大人たちも地域や社会とかかわるきっかけを得ることができる。お互いがよい方向に変化していける試みだからこそ、「子ども食堂」はここまでの広がりを見せたのかもしれません。

「地域みんなの居場所である子ども食堂」、わたし自身も何らかの形でかかわっていきたいと感じたインタビューでした。

プロフィール

釜池雄高(かまいけ・ゆたか)
こども食堂ネットワーク事務局長

1977年、愛知県生まれ。成蹊大学法学部法律学科卒業。
2015年4月の「こども食堂ネットワーク」創設に参加。すべての都道府県でこども食堂の催事を開催する、「広がれ、こども食堂の輪!」全国ツアーでも実行委員を務める。
普段は、カタログ雑誌『通販生活』読み物編集部に所属し、同誌を発行する株式会社カタログハウスの社会貢献活動の一環として子ども食堂を広げる活動に携わる。

こども食堂ネットワーク
http://kodomoshokudou-network.com/

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと)
『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。
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