シリーズ 専門家にきく!

スポーツ栄養アドバイザー石川三知さんに聞く チャレンジできる体のつくりかた(全4回・レシピあり)

世界のトップアスリートたちを栄養の面から支える石川三知さんは、彼らが能力を発揮するためのサポートに日々取り組んでいます。五輪など究極の状況のもとで選手の力を引き出すスポーツ栄養学のプロに、成長期の子どもたちに必要な栄養と食生活、家庭でできる食事のサポートについて聞きました。

三井淳平(みついじゅんぺい)さん
石川三知(いしかわみち)
Office LAC-U代表。スポーツ栄養アドバイザー。オリンピックメダリストをはじめとする多くのアスリートの栄養サポートを行なう。 いままでにサポートしてきた選手・団体は、中央大学水泳部、スピードスケート岡崎朋美選手、フィギュアスケート荒川静香選手、髙橋大輔選手、陸上短距離走/末続慎吾選手、競泳瀬戸大也選手、大相撲稀勢の里関、陸上短距離日本代表チーム、新体操日本代表チーム、全日本男子バレーボールチームなど多数。 2004年度~2014年度JOC(日本オリンピック委員会)強化スタッフ(医科学)。山梨学院大学スポーツ科学部非常勤講師。中央大学保健体育研究所客員研究員。八王子スポーツ整形外科栄養管理部門ディレクター。 著書には、『最新版 スポーツ選手のための食事 400レシピ』、『栄養のプロが教える 最新版 身長を伸ばす栄養とレシピ』(いずれも学研プラス)など多数。
Office LAC-U(オフィス・ラック・ユー)

第1回 スポーツ栄養学って、なに?

――石川さんは、世界レベルのトップアスリートを栄養面からサポートされていますが、その基礎となっているスポーツ栄養学について教えてください。


スポーツ栄養学について話す石川さん

スポーツ栄養学というのは、基本的な栄養学に運動をする人のためのエッセンスを盛り込んだものです。病気の方向けの病態栄養学があるのと同じですね。

病気の方向けの栄養学は、病気の症状を考えて、その病状が治まっていくためにはどうすればいいかを研究することですが、スポーツ栄養学は、運動をしながら目標を達成し、さらに元気に成長していくための知恵というふうに思っていただければいいと思います。

とくに、試合に向けて過酷なトレーニングを続けるアスリートは、体への負荷がとても大きくなります。その体を支えるためには、体のケアと同じように栄養面でのサポートも必要です。練習内容にあった食事をスポーツ栄養学に基づいて用意することで、食べ物が体と調和し、能力が発揮できる体内環境を整えることができるんです。

 

――アスリートのみなさんへ、どのようなサポートをしているのか教えてください。

希望によって、さまざまです。たとえば、山梨学院大学の陸上部の選手には講義やレクチャーをとおしてサポートしていますし、東海大学付属仰星高校のラグビー部には昼食の献立を届けて、年に何回かレクチャーするというサポートをしています。


新体操日本代表フェアリージャパンにレクチャーする石川さん

中央大学の水泳部では、献立作成だけではなく、プールサイドにいて、ドクターの指示で血液検査のデータをとり、トレーニング中の乳酸や血糖の測定をして、体組成の結果から栄養面のアドバイスをしていました。

レクチャーや献立づくり、アドバイスだけでなく、実際に食事をつくることもあります。フィギュアスケートの髙橋大輔選手の場合は、1年のうち7カ月くらい彼の拠点で食事をつくり、5日分ずつストックするというサポートもしていました。

オリンピック選手の強化合宿では、どの国へ行っても食事をつくりますし、陸上のサニブラウン・アブデル・ハキーム選手がオランダチームといっしょに合宿をしたときには、米や乾物、基本的な調味料以外のフレッシュな材料を、はじめて訪れた南アフリカ共和国で調達して食事をつくるという経験をしました。

――求められる内容に応じて、いろいろな形でサポートしているんですね。

「わたしのサポートは、これ!」というようなスタイルやパターンはないですね。チームや個人によって求められているものが違いますし、関わりかたの距離感や予算もありますから。指導者の方、そして選手本人がなにをめざして、なにを求めているのかによって、いろいろな提案をしながら、一人ひとりサポートのしかたを変えています。

――サポートを受けたアスリートのみなさんからの声は届いていますか?


食べ物が体をつくるということを意識すると、からだを構成する体組成が変化し、たとえば血液検査の結果も変わっていくんです。体内の変化は目に見えないので、体組成、栄養計算などもふくめ数値化することで食事でのサポートをわかりやすくして、継続しやすい環境をつくるようにしています。その数値に現れる変化や体感から、体の変化を実感していただけるみたいで、身近な選手にも食事の大切さを語ってくれていたと聞きました。すごくうれしかったですね。

――石川さんがサポートするときに心がけていることを教えてください。

食事面でのサポートは、選手にとってトレーニングや体のケアなどの要素のひとつだと思うんです。本人の目標を達成したい、成長したいという思いを、食事からどんな応援ができるかを常に考えています。自分の体は自分でしか作れないので、その人が能力を発揮して、その人なりの満開で咲くためにできることをめざしています。

――自分の体は、自分でしか作れないという言葉に、食事の大切さを強く感じます。次回は子どもの体と食べ物の関係について聞きます。
その前に……「最新版 スポーツ選手のための食事 400レシピ」より、小中学生におすすめのレシピを2つ教えてもらいました。

【石川さんおすすめ】ここ一番の日の応援レシピ 2種

発芽玄米と梅のおにぎり


撮影:武井メグミ

1人分269kcal、炭水化物55.3g、調理時間5分

材料(1人分)

  • 発芽玄米…1/4合
  • 白米…1/4合
  • 梅干し…1個
  • 白炒りごま…小さじ1

作り方

  1. 発芽玄米と白米を混ぜて炊く。
  2. 1にごま、ほぐした梅干しを混ぜてにぎる。

じゃがいも入りチンジャオロース


撮影:武井メグミ

1人分241kcal、炭水化物23.1g、調理時間15分

材料(1人分)

  • 豚肉…100g
  • 塩、胡椒、片栗粉…各少々
  • ピーマン…1個
  • じゃがいも…1/2個
  • パプリ力…1/4個
  • にんじん…1/6本
  • A[・オイスターソース、砂糖…各大さじ1/2・醤油…小さじ1・酒…大さじ1]

作り方

豚肉、野菜は細切りにする。豚肉は塩、胡椒で調味し、片栗粉をまぶす。フライパンを熱し、豚肉を炒める。さらに野菜を加え、Aをからめる。

この本にたくさんのレシピが載っています。

『最新版 スポーツ選手のための食事 400レシピ』
石川三知著/学研プラス刊/1,814円

スポーツ選手が強い体をつくり試合に勝つための、食事の知識とレシピを紹介。400レシピという豊富さであきずに毎日使えます。小中学生のスポーツ選手にも対応。またトレーニングやスケジュールに合わせたレシピが選べるつくり。食事の知識もしっかり掲載。

‎(企画・構成 渡邉純子)

第1回 スポーツ栄養学って、なに?
第2回 成長期の体を支える、食の環境づくり
第3回 わが子に合わせた栄養の摂りかた
第4回 家庭でできる、+1のアイデア

川筋真貴
川筋真貴(かわすじまき)
中学校の国語教員を経てライターに転職。女性向けの媒体での執筆が多く、IT関係からファッション・ペット・インテリアまで、女性のライフスタイルに役立つ記事の作成を得意としている。趣味は長年続けている茶道と御朱印集め。東京都在住。