子どもの幸福度世界一! オランダの学校教育レポート

ピースフルスクール シチズンシップを学ぶ学校

前回はピースフルスクールの教育プログラムについて説明しました。今回は、引き続きピースフルスクールの教育の内容を紹介します。

お互いにほめあい、自尊心をたかめる

自尊心を養う教育の一例です。教師は、ある女の子の1日をストーリーにして語り、自尊心が低下するパターンと自尊心が向上するパターンを比較します。

自尊心が低下するストーリーでは、女の子が、朝お母さんから「なんでそんな服を着ているの?」と言われたり、通学途中で通りがかりの人に怒られたり、遅刻して先生に叱られたりすると、ハートの形をした紙が破かれます。教師は、ストーリーを聞かせてから「落ち込んでいる女の子にどんな言葉をかけますか」と子どもに質問します。

次に、ハートをちぎるのではなく、ほめ言葉を言ってハートにかわいいシールを張っていきます。たくさんほめると相手のハートが一層輝きます。ほめることの大切さを視覚的に理解することができます。こうして子どもたちは、相手を傷つけずに、互いを認め合い、ほめ合うようになります。

「いいとこさがし」掲示板

また学校の中には、「いいとこさがし」掲示板が置かれています。そこには、児童が、他の児童のいいところを捜して投稿した内容が掲示されています。この紙は1週間ほど貼りだされ、その中で最も素晴らしいと評価された児童には「ベストコンプリメント(最優秀ほめ言葉)賞」が与えられます。

地域の問題を子どもたちが解決する

前回、子どもたちどうしの対立を最上級生(G8、日本では小学6年生)が仲介し、解決を図っていることを紹介しました。仲介役の「メディエーター」になるには、G7(日本では小学5年生)のときに自ら立候補して、1年間トレーニングを受けます。


メディエーターは、オレンジ色のジャケットを身につける。

メディエーターはオレンジ色のジャケットを身につけ、学校内を巡回します。学校内で何か対立が起こったら、当事者の間に入り、解決を図ります。低学年の場合は、ボールの取り合いや髪の毛を引っ張ったなどの対立が起こることも。原則的に児童が話し合って解決を図りますが、解決できない場合は、教師に相談することもあるそうです。

また、ピースフルスクール・ネイバーフッドというプログラムもあります。このプログラムでは、地域の問題を子どもたちが解決する内容です。解決の範囲を学校から家庭、習い事のクラブ、公園やショッピングセンターなどへと広げ、けんかしている大人を見て「何かお助けしましょうか?」と言える子どもになることをめざしています。

現在オランダは、移民が増えたことにより異民族間の経済格差という社会的な問題を抱えています。地域社会の中でも、民族ごとに小さなコミュニティができあがり、お互いに交ざり合わないという問題があります。子どもたちは、そうした社会的な問題の解決にも取り組んでいます。

わたしが見学したときは、メディエーターが中心となり、地域の行政や警察、保護者、メディアなどを集めて「地域がひとつになるためにどうしたらいいのかについて話し合った結果」を発表していました。


地域の問題について発表する子どもたち

このような多彩なプログラムを学習することにより、オランダの子どもたちは主体的に考え、学校内だけでなく、地域の中で、異文化、多様な価値観を受け入れ、お互いに連帯するという民主主義の基本を学んでいます。

次回は、ピースフルスクールのプログラムの日本での展開を紹介します。

藤田由美子(ふじたゆみこ)
藤田由美子(ふじたゆみこ)
株式会社ユーミックス代表取締役社長。1993年の創業以来、コンピューターリテラシー教育を数多く手がける。
「生きる力」「社会力」の育成をめざして、子ども向けICT教育のカリキュラム作りにも力をいれており、大手携帯電話会社のケータイ安全教室の企画立ち上げ、ネット安全利用推進プログラムの開発など、実績多数。