くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て

人は、失敗という体験を通して多くのことを学ぶ

人は、失敗という体験を通して多くのことを学ぶ

わが子の失敗体験

先日、夕飯を食べ終わったあと、突然何を思ったのか、今は大きくなったわが家の三人息子のうちの一人が、小学生のときのことを話し始めました。

「お母さん、あのときは本当に悔しかったよ。あのことは、きっと一生忘れないだろうな」と。

わたしは、なんのことか一瞬わからなかったのですが、よくよく話を聞いてみると、それは、彼が小学校2年生の冬休みに起こった「ある事件」のことでした。

ある日、お正月にもらったお年玉(2千円程度)を入れたお財布と、図書室で借りた本をバッグに入れ、近所の公園に遊びに行きました。ところが遊んだあと、うっかりそのバッグを公園の隅に置きっぱなしにして、帰って来てしまったのです。

それに気がついたのは翌日のこと。気がついてすぐに公園に行ったのですが、バッグは見つかったものの、案の定、お財布の中身は空っぽ。彼は泣きながら帰って来たのでした。
いっしょに入れてあった、図書室から借りた本はあったのですが、お金がなくなっていたことは、本人にとって相当のショックだったようです。

わたしももちろん、そのときのことはおぼえていました。

あの経験があったから・・・

7歳だった彼にとって、2千円は大金だったはず。本人いわく、今でも大金だと思っているとのこと。でも、この経験は大きな学びだったと言います。

悔しくて、悲しくて、「なんで、自分は大事なものを忘れて帰って来ちゃったんだろう」「世の中には、なんて悪い人がいるんだろう! 信じられない!」と、思ったと。

そのときは、後悔ばかりが頭の中をぐるぐると回っていたそうです。

「でもそのとき、お母さんはぜんぜん怒らなかったよね。」とも言ってくれました。
わたしは、そのことをおぼえてくれていたことにも、ちょっと驚きました。

わたしが怒らずにいられたのは、そのとき偶然、アドラーの「失敗からこそ人は学べる」という言葉を思い出したからです。

今では、その体験があったからお金など大切なものをどこかに忘れるようなことがなくなったそうですし、失くしたときの悲しく辛かった気持ちは、人の痛みに共感できることにもつながっていると話していました。

失敗は決して怖くないのです

こんなふうに言っているわたしですが、このときはたまたま、子どもを叱りつけなかったというだけで、正直に言うと、長い子育て期の間に何度も理不尽な叱り方をしています。

わが子たちにも、本当に辛い思いをさせてきたと思います。体調が悪いときや疲れているときなど、子どもはまったく悪くないのに、イライラしたり、怒りの感情をぶつけて傷つけたこともありました。

それも失敗の一つと考えても良いのではないでしょうか?

失敗は痛みをともないます。だから、できれば避けて通りたいもの。でも、人は体験からしか、本当に学ぶことはできないとも言われます。理屈だけでは、本当の学びは得られないものなのかもしれません。

理想の子育てってなんでしょう?
完璧な親になることでしょうか?
一つの失敗もない子育ては、実現可能なのでしょうか?

人間ですから、完璧なことはできないと思います。ですから、わたしたち親自身も失敗することを恐れずに、子育てをもっと楽しんで良いのではないでしょうか。

失敗しても、何度でもやり直せます。親であるわたしたちがそれを自ら実践し、子どもたちに伝えていきませんか? もちろん、命の危険があることは避けなければなりませんが、それ以外であれば、何にでもチャレンジしてみることをお勧めしたいのです。

親だって、ひとりの人間なんです。
夢もあります、やりたいことだってあります。それをひとつひとつ叶えていきませんか?

子どもたちに自信とやる気をもってほしいのであれば、まずは親であるわたしたちから!
失敗を恐れず、自信をもって子育てしていきたいものです。

松井美香(まついみか)
東京音楽大学ピアノ専攻卒業。「勇気づけの音楽家」。大学卒業後約10年間公立中学校に勤務。その頃偶然、教員研修でアドラー心理学に出会い、岩井俊憲氏の元で学び約25年が経過。自身のピアノ教室や子育てにおいてアドラー心理学を実践する中、子どもたちが音楽や部活動を続けながらも有名大学に続々と合格し夢を叶えている。長男(21歳)と双子(18歳)三人の男子の母。現在、保護者や音楽指導者に向け、執筆やセミナーを通して「勇気づけの指導法」を広める活動をしている。

*学研「おんがく通信」にて、コラム「勇気づけのピアノレッスン」連載中

*学研プラス出版「あなたの想いが届く愛のピアノレッスン」にて、手記「ある教室のささやかなサクセスストーリー」を執筆

松井美香公式ホームページ: