くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て

子どもの自主性についてアドラー流で考える

子どもの自主性についてアドラー流で考える

「自主的にあいさつできる子」は親の願いのひとつ

かつて、わたしが中学校の教員をしていたころのことです。勤務していた学校では、毎朝のように「あいさつ運動」が行われていました。あいさつは円滑なコミュニケーションのためにとても有効なので、全国の学校でこのような活動が行われていることと思います。あいさつが自主的にできる子どもは好感が持てますし、我が子もそうなってほしいと願う保護者の方も多いのではないでしょうか?

わたしも我が子たちが「しっかりあいさつのできる子に育ってほしい」と、機会あるごとに「あいさつは大切だよ。そこから会話が始まっていくからね。会った人にはしっかりあいさつしてね。」と言ってきました。ですが、残念なことに彼らは、照れ屋で社交的な性格ではなく、上手にあいさつができませんでした。近所の人に会っても、小さな声だったり、あいさつできなかったりすると、当時のわたしはとてもがっかりしたものです。でも、そんなわたし自身、実は子どものころ、母に「あいさつをしっかりしなさい!」と言われて育った子でした。

さすがにおとなになるころには、あいさつができるようになっていましたが、そんなことをふと思い出し、「子どもは親に似るんだなぁ」と、なんだかおかしくなりました。

子どもの自主性とは?

さて、今回のテーマである「子どもの自主性」についてです。あいさつに限らず、子どもたちには、何事も自分で考え判断し、行動できるようになってほしいものですね。ただ、「子どもの自主性を伸ばしたい」と思うものの、それが具体的には一体どういうことなのか、その意味について考えることはなかなかないと思うので、この機会に考えてみませんか?

自分から「あいさつする子」「勉強する子」「お手伝いをする子」「言われなくても、準備も片付けもできる子」。そんな子どもになるようにするのが、子どもの自主性を伸ばすことなのでしょうか? たしかにこれらのことができたら、保護者にとっては理想の子どもかもしれません。でも、それは親の都合であって、本人のやりたいこととはズレがあるのではないでしょうか?

自主性とはそもそも、自分がやりたいことを見つけ、判断し、行動を起こすこと。親がなってほしいようになることとは違うはずです。ここをはき違えてしまうと、本当の自主性は育たないように感じます。

アドラー流・自主性の育て方

アドラー心理学では、自主性を尊重します。本人のやりたいことを存分にやらせること(たとえそれが失敗に終わったとしても)を大切にするのです。でも、それは放任するのとは違います。本人が望めば援助しますし、いっしょに考えます。

<消極的な子どもへの対応>

「うちの子は何事にも消極的で、やりたいことがない」。このように思っている保護者の方がいらっしゃいますが、よくよく話を聞いてみると、そのようなことはほとんどありません。子どもはだれもが好奇心を持っています。ただ、それを親や周りのおとなが、失敗しそうだからとか、できそうもないとか、危なっかしいからのような理由でさせないことが原因で、いつのまにか、気力がなくなってしまったというケースもあるのです。

でも、ご安心ください。そんな場合は、今から、子どもといっしょに興味があることをさがしましょう。ちょっとしたことでも良いのです。「これとこれだったら、どっちが好き?」とか「この中だったらどれをやってみたい?」など、自分で選ぶ機会を多く与えてみることをお勧めします。子どもたちは自分で選ぶことが大好きです。そんな小さな経験の積み重ねから、徐々に自分自身で選ぶこと、自分自身で判断すること、やがては行動することが身についていきます。

<積極的な子どもへの対応>

好奇心が旺盛で「あれもしたい、これもしたい」と、自分の思うようになんでもやってしまう子どもに困惑している保護者も多いですね。親の思う通りにならず、いつもハラハラ、もしくはイライラしているという話もよく耳にします。でも、こちらの場合もご安心ください。そのような子はすでに自主性のある子どもです。自分のやりたいことがあるということは素晴らしいこと。たとえ、それが親の意向ではなかったとしてもそれで良いのです。もちろん命の危険があることはさせてはいけませんが、なんでもやらせてみるということは、決して悪いことではありません。体験に勝る学習はないのです。

保護者自らが自主性を示すことが大切

ちなみに、我が子たちがあいさつできないと感じていたのは、ほんの数年間。中学校に入ったころには自主的にあいさつができる子に育ちました。口を酸っぱくして言うよりも、わたしたちが自ら行動を示すことが、一番効果があります。

あいさつだけではありません。子どもの自主性を育てたいのであれば、まず、わたしたちから自主性を発揮し、行動や態度で示していくことだと思います。子どもたちは、わたしたちおとなのすることを見て、同じように育っていくもの。アドラー流子育ては、決して難しいものではありません。子どもの自主性を本当に育てたいと考えるのであれば、自らがそのように行動すれば良いのです

松井美香(まついみか)
東京音楽大学ピアノ専攻卒業。「勇気づけの音楽家」。大学卒業後約10年間公立中学校に勤務。その頃偶然、教員研修でアドラー心理学に出会い、岩井俊憲氏の元で学び約25年が経過。自身のピアノ教室や子育てにおいてアドラー心理学を実践する中、子どもたちが音楽や部活動を続けながらも有名大学に続々と合格し夢を叶えている。長男(21歳)と双子(18歳)三人の男子の母。現在、保護者や音楽指導者に向け、執筆やセミナーを通して「勇気づけの指導法」を広める活動をしている。

*学研「おんがく通信」にて、コラム「勇気づけのピアノレッスン」連載中

*学研プラス出版「あなたの想いが届く愛のピアノレッスン」にて、手記「ある教室のささやかなサクセスストーリー」を執筆

松井美香公式ホームページ: