
コウタの志望校のここ数年の倍率は、約5倍です。私立中学では2倍以上だと高倍率と言われているので、公立一貫校の倍率はかなり高いと言えるでしょう。私立も1校だけは受験しますが、あくまでお試しのため、事実上は1校のみの受験になります。コウタは、この高倍率・1校狙いのプレッシャーをじょじょに感じるようになっていました。
ベッドに入るとネガティブな言葉があふれて
年明けくらいから「緊張してきた~」と言うようになったコウタ。 1月半ばになると、塾から帰ってきたばかりだとテンション高めなのですが、ベッドに入ると急に弱気になり、
「落ちたらどうしよう」
「2年間やってきたことが台なしだ」
「受検に落ちたら恥ずかしい」
などネガティブな言葉を口にするようになりました。 それで眠れないか、といえばそうではなく、そう言いながらすぐに眠りについてはいたのですが、わたしも気のきいた言葉をかけることができずにいました。
夜の弱気発言はその後も続き、昼間に改めて話を聞くと、
「今のままがいやなんだよ。適性検査Iがダメダメだから」とコウタ。
「え? どこがダメダメなの?」とわたし。
たしかに最終模試では、適性検査Iで読解問題を落としていましたが、1月に入ってからの過去問では、平均して7割以上はとれていました。過去問演習の結果を電話で報告してくれた塾の先生も、
「いい感じに仕上がっている」
と言ってくれていました。コウタは、なんとも処理できない不安な気持ちを、ああいうふうに表現したのでしょうか? 合格のボーダーラインは6割と言われているので、このままの調子で本番に臨んでくれればいいなというのがわたしの気持ちでした。
受検前のリラックス法あれこれ
そのころ塾からもらってきたプリントには、メンタルケアについての内容が書かれていました。
- かかりつけの小児科に「自信がもてる薬」といってビタミン剤を処方してもらう。
- 先生や友だちからの励ましメッセージをながめる。
- 志望校に入ったつもりで「今日の部活は楽しかった」などイメージトレーニングをする。
- 志望校のパンフレットを見る。
など、実際に受験生がやっていたリラックス方法が紹介されていましたが、どれもコウタにはいまひとつピンとこないようす。そこで、塾から電話をもらったときに
「コウタが緊張すると言うので、なにか良いアドバイスをしてもらえませんか?」
とお願いしてみました。数日後、コウタが塾の先生から教わってきたのは、
「テキストを並べて、ながめてごらん。これだけやってきたんだから大丈夫! と自分に言い聞かせるんだよ」
というアドバイスでした。それからコウタが、国語・算数・適性検査のテキストを1冊ずつていねいに机に並べてながめている姿を、何度か目にしました。
その方法以外に、本人は無意識だったと思いますが、あれはコウタのリラックス法だったんだろうなと思うことがこれ。
- スターウォーズごっこ(剣を振り回して見えない敵と戦う)
- 好きな音楽を聴く
- サンダーマン(アメリカの子ども向け番組)を見る
入試まであと1カ月を切ったこの時期は、親のほうも神経質になるのは避けられません。次回は、思いのほか心が落ち着いた「お守りづくり」についてです。
(次回へつづく)