学習指導要領の改訂で学校教育が変わる

第34回 社会課題解決力を育成し、実社会で実践する

第34回 社会課題解決力を育成し、実社会で実践する

今回は、高等学校の家庭科における次期学習指導要領の改訂のポイントを紹介します。

成人年齢、選挙権年齢の引き下げで高校生に求められる資質・能力

2015年に公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられました。2018年6月には、改正民法が国会で可決され、2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることになりました。

こうした動きのなかで、高校生が自立した生活者として生きていくにあたって必要なことを科学的に理解し、生活課題を解決する力を育成することが、社会的なニーズとなっています。

また子どもたちは、グローバル化、少子高齢化、持続可能な社会の構築などの社会的な課題を解決し、未来社会を担うことを期待されています。そうした背景から、社会への出口である高等学校で、家庭科の教育内容が見直されようとしています。

次期学習指導要領では、家庭科で育成をめざす資質・能力について、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の3つの柱で整理しています(図1)

図1 「高等学校家庭科において育成を目指す資質・能力の整理」


(出典:中央教育審議会「答申 別添11-1」をもとに作成)

自立した生活者として必要な実践力を身につける

現行の学習指導要領では、「家庭基礎」、「家庭総合」、「生活デザイン」の3科目から構成され、これらの3科目のうちいずれか1科目を必履修科目として履修することになっています。
次期学習指導要領では、「家庭基礎」「家庭総合」の2科目に再構成され、2科目のうち1科目を選択します(図2)

図2 「高等学校家庭科の科目構成」


(出典:中央教育審議会「答申」をもとに作成)

「家庭基礎」は、高等学校の卒業段階に自立した生活者として必要な実践力を身につけることを重視しています。そして、以下のような基礎的な内容を充実させ、実践力を定着させようとしています。

  • 子どもを生み育てることや子どもとかかわる力を身につけるなど、乳児期に関する内容
  • 男女が相互に協力して、家族の一員としての役割を果たし家庭を築くことの重要性
  • 高齢者の生活支援技術の基礎に関する内容(高齢者の自立のために個人、家庭、地域が果たす役割など)
  • 年齢や障がいなどの有無にかかわらず、それぞれのもてる力を生かし、ともに支え合いながら生活を創造する共生社会の実現
  • 健康で快適な衣食住の生活の実践

「家庭総合」は、現行の「家庭総合」と「生活デザイン」の内容を引き継いでいます。
「家庭総合」では、以下のような能力を育成することを目標にかかげています。

  • 自分の生き方を考え、社会のさまざまな人々との共生をはかる能力
  • 自分自身のライフスタイルを見直し、持続可能な社会を構築する能力
  • 健康や環境に配慮しながら衣食住、消費などの生活を創造する能力

そして、次期学習指導要領では「家庭総合」において、以下の内容を充実しようとしています。

  • 乳児とのふれ合いや子どもとのコミュニケーション
  • 高齢者の生活支援技術
  • グローバル化に対応するための、日本の生活文化の継承・創造等に関する学習活動
  • 生活と経済のつながり、資金管理、リスク管理など、生涯の生活設計にかかわる内容
  • 生活を総合的にマネジメントできるように、健康や安全等を考慮した学習活動
  • 豊かな衣食住の生活を創造するための実践力

問題解決につなげる学習を充実する

さらに、家庭科で学んだ知識・技能を活用して、「ホームプロジェクト」「学校家庭クラブ活動」を通じて問題解決的な学習を充実することをめざしています。

「ホームプロジェクト」は、家庭科で学んだことを自分の家庭や地域の生活にあてはめて考え、問題点を見つけ、問題を解決するために創意工夫しながら実践する学習活動です。

「学校家庭クラブ活動」は、ホームルームまたは家庭科の授業、さらに学校単位で、学校や地域の生活のなかから課題を見いだし、課題解決をめざしてグループで主体的に計画を立てて実践する学習活動です。

「ホームプロジェクト」や「学校家庭クラブ活動」の活動内容の例は、以下のとおりです。

  • 高齢者の介護を体験する
  • 地域の高齢者や福祉施設などを訪問したり、学校に招いたりして、高齢者とのふれ合いや交流をはかる
  • 幼稚園や保育所などを訪問し、実際に乳幼児とふれ合ったり、乳幼児をもつ親が子どもとかかわる姿を観察したりする
  • オリジナルの食事のメニューをつくる(お弁当やサラダなど)

こうした体験活動をとおして、生徒たちは課題を見いだし、解決する姿勢をはぐくんでいます。生活者として、身のまわりの課題の解決に取り組みながら、社会参画する経験を生涯を通じて継続してほしいものです。

藤田由美子(ふじたゆみこ)
藤田由美子(ふじたゆみこ)
株式会社ユーミックス代表取締役社長。1993年の創業以来、コンピューターリテラシー教育を数多く手がける。
「生きる力」「社会力」の育成をめざして、子ども向けICT教育のカリキュラム作りにも力をいれており、大手携帯電話会社のケータイ安全教室の企画立ち上げ、ネット安全利用推進プログラムの開発など、実績多数。