ラストスパートの時期によせて 家族で乗り越える中学受験

ラストスパートの時期によせて 家族で乗り越える中学受験

毎年、秋から冬にかけ、クリスマスの雰囲気が感じられてくると、今年も受験の本番が近づいたのだなと、今でも一種の緊張感のようなものが感じられます。

わたしの3人の子どもたちもすでに社会人となり、受験からは解放されたわけですが、あの苦しかった時代が今となれば懐かしく、家族が一体となって取り組んだいい思い出にもなっています。

現代において受験は、単なる子どもたちのハードルのようなものではなくなっています。というのは、受験をするためには受験のテスト問題は当然として、その制度や、そこに至る道筋についてさまざまな情報が必要であり、決して子ども単独の力で乗り越えていけるものではなくなっています。親は親の立場で情報収集や制度の研究をし、学校や塾と相談しながら分析と作戦を考えていかなければならない時代なのです。

だからこそ受験は、子どものハードルではなく、家族で乗り越えていくハードルになっているのだと思います。なかでも、関東地区を中心として、私立中学の受験はとても大きなハードルとなっています。

中学は、公立に行こうと思えば受験する必要はなく、授業料も払う必要はありません。当然のことですが、中学受験ということは受験をするのは小学生です。しかし、その受験内容や制度などは子どもだけでは理解できるはずもなく、入試問題も子どもだけで勉強して解ける問題ばかりではなくなっています。

そのため、家族の総力戦というような状況になっており、中学受験は家族にとって、ひじょうに大きな決断を要することになるのです。入試本番が近づくと、親子にとって大きな重圧になりがちだというのは当然のことと思います。こうした時期に何が必要なのでしょうか。

まずは、親が受験の圧力に押しつぶされることなく、前向きで明るい気持ちでいることです。合格すればうれしいのは当然ですが、受験は不合格の危険を伴うものでもあります。

志望校のレベルを上げるほどに、不合格のリスクは高まりますので、志望校を適切に選ぶことも大切です

もし不合格になったとしても、それは人生においてひとつの教訓にすればいいことであり、そのことで何か決定的なものが失われるものではありません。受験は、高校入学にもありますし、大学入学にもあります。まずは前向きにポジティブに取り組むことが必要でしょう。

また、食事や睡眠など健康状態に注意するのは当然のことです。体調を整えるのはもちろんですが、集中力にも関わってきます。

子どもにとって、最大限の力を発揮できる生活習慣は一体どのようなものなのか。今日までの学習とその成果を振り返りながら、もっとも効果的な生活習慣を意図的に作ることが大事です。

細かい食事や睡眠のアドバイスについては、多くの専門家が助言しています。その中で、子どもにふさわしいものを選択しましょう。

次に、学習内容です。

受験直前には、どうすれば合格できるか明確な方向性をもっていることが大切です。人間は、迷いや不安が大きいと力が十分に発揮できません。受験直前は不安になり、あれもこれもとさまざまな学習に手を出したくなるものです。しかし、冷静に考えれば、あれこれ学習を多くしてしまえば、そこから積み上がってくるのは学力ではありません。それは、不安です。だからこそ、何をやるべきかをはっきりと決めておく必要があります。

では何をすればいいのでしょうか。

それは、必ず出題されるであろう、もっとも出やすい問題を完全に固めておくことです。

重要なのは、何か問題を解いたときに、大体できたという中途半端な状態ではなく、瞬間に解けるぐらいに仕上げておくことが重要です。

そのことによって、受験本番には受験そのものに対して意識がより前向きになり、試験に没頭することができるからです。

もちろん、「この問題は絶対に出題されるだろう」という問題があったとして、もしそれが外れたらどうなるか、不安に思うでしょう。でも大丈夫です。

なぜなら、自分自身の十分な分析の上に立てた予想は、多くの受験生もそれをしているわけであり、自分がとまどうのと同じように、多くの受験生もとまどっているはずだからです。要は、受験本番では冷静さを失わず、前向きに集中できることが重要だと考えるといいでしょう。

直前になれば、対策としてやれることは限られてきます。もっとも効果的なものから順番にこなしていく。この要領をしっかり打ち立て、最後の準備をすすめておいてください。きっと自分の願いに結びつく未来が開けてくるはずです。みなさんの奮闘を願っています。

陰山英男(かげやまひでお)
1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/