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科学館展示の舞台裏/シリーズ 専門家にきく! 体験が科学する心をはぐくむ 板橋区立教育科学館にきく科学館の楽しみかた【第2回】(全4回)

科学館展示の舞台裏/シリーズ 専門家にきく! 体験が科学する心をはぐくむ 板橋区立教育科学館にきく科学館の楽しみかた【第2回】(全4回)

動物、植物、星空などの自然、エネルギー、通信などのテクノロジー。子どもは目のまえのことに「どうして?」と疑問をもちます。ネット動画やテレビ番組で得られる情報だけではものたりない……そんな子どもたちの気持ちにこたえてくれるのが科学館です。

実際に見てさわって、体で感じながら科学を体験できる科学館の魅力、そして親子で楽しむためのコツなどを、東京都にある板橋区立教育科学館の持永雅之館長にお聞きした「シリーズ 専門家にきく!体験が科学する心をはぐくむ 板橋区立教育科学館にきく科学館の楽しみかた」の第2回です。(全4回)

第2回 科学館展示の舞台裏

渡邉:板橋区立教育科学館にある、体験型の展示について教えてください。

持永館長:地下1階の科学展示室には、大きなものから小さいものまで、体験型の展示が20以上あります。人気があるのは、「リニアモーターカー」「ふしぎな部屋」ですね。

ニアモーターカーの展示で解説をする持永館長
「ふしぎな部屋」で撮影

渡邉:目に見えないものをどうにかしてわかってもらおう、という展示が多いですね。
音とか、エネルギーとか、空気とか、それこそリニアモーターカーの電磁誘導とか……。

持永館長目に見えない科学の現象を、体験できるものに形を変えられないかというところに、知恵を絞っています。

でも、見えないものを見えるようにするだけだと、見て終わってしまうんです。
見えないものを、自分で動かすのが大事なんですね。自分で動かすことでその現象が起きたり、現象を感じたりできると、体験として身につきます。ですから、子どもたちが自分で体験するプロセスを入れることで、見えないから見えるに変換していくことに注力しています。

見る、聞く、だけではなく、自分でものを動かしてなにかをする体験の形ですね。

空気砲を操作して空気を動かし、的がゆれるのを体験する

渡邉:目に見えないものが、自分で手を動かしたらこんなふうに変化したという体験とおどろきの積み重ねが、子どもの経験になっていくのでしょうね。

持永館長:多分、子どもたちはそこまで考えず、「わー、なんか動いた」でそのときは終わってしまうと思うんです。でも、その記憶さえ残っていれば、学校で関連することを学んだときに「あっ!」と体験とつながることがあるんですよね。だから、とにかくやったということを感じて欲しいです。

渡邉:展示はどうやって作るのですか? 既製のものがあるのでしょうか。

持永館長:既製品があるわけではなく、オリジナルで、オーダーメイドのように作っています。
自分たちで企画して作るものもあれば、テーマを決めて外部に製作を依頼するもの、こんな展示物はどうですかという提案によるもの、さまざまです。

渡邉:持永館長が企画して作った展示はありますか?

持永館長:いまは公開していないのですが、以前「マグネットタワー」という展示を作りました。
とても強力な磁石をタワー状に積んで、極を反対にしてぷかぷか浮かせたり、金属のクリップを近づけて、クリップが磁石にくっついていないのに浮いているようすを体験したりして、磁石の強さを知ってもらうというものです。

以前サイエンスショーをやっていたときに感じたのですが、磁石って身近にあって、反応がおもしろく、子どもたちの受けもいいんです。そこで、磁石を見るだけでなく、もっと楽しんでもらえる展示ができないかなと考えたものです。

※デモンストレーション型の実験ショー

渡邉:磁力という見えないものを、極を反対にしたり、クリップを使ったりすることで見えるようにしたわけですね。
製作にあたって大事にしていることはありますか?

持永館長安全はとりわけ大事にしています
子どもたちの行動は大人が予測できないことがありますから、できる限り先を読んで子どもたちがケガをしないようにしています。メンテナンスも月に2回行なっています。

展示の製作では安全が大事だという持永館長

持永館長:わたしは天文が専門で、以前はプラネタリウムで解説員をしていたのですが、小学生向けに話をするとき、100%わかる話だと、子どもがつまらなくなってしまうんです。8割はわかるけれど、2割は難しくてわからない、けれどおもしろそうと子どもが感じるような内容にしていました。

展示物も、100%わかって安全というものだけでなく、2割くらいはなぞとか、注意して行なわないと危ないというような要素がある、そんな展示がいつかできたらいいなと夢みています。公立の科学館ではなかなか難しいのですが。

渡邉:その2割が、子どもの好奇心をさらにかき立てる力になりそうですね。いつか上級者向けの展示ができることを期待しています。
 

見えないものを見えるようにするでは受け身になってしまう、という持永さんの言葉には重みがあります。見る、聞く、だけではなく、自分でものを動かす体験は、ネットではできない、科学館ならではのものだとあらためて感じました。次回の第3回では科学館でのイベントがどんなふうに行なわれているのか聞きます。

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板橋区立教育科学館

科学に関する知識の普及・啓発を推進し青少年の健やかな成長をはかること、科学情報・教育情報を集めて学校教育・社会教育の充実に貢献することを目的に設立された東京都板橋区立の科学館。株式会社学研プラスが指定管理者となり運営している。2018年9月に開館30周年を迎えました。

「板橋区立教育科学館」Webサイトへ

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

株式会社コドモット代表取締役社長。
NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。

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