メニュー閉じる

子どもの“目”が危ない!? 視力低下は遺伝?/最近の近視事情から【前編】

子どもの“目”が危ない!? 視力低下は遺伝?/最近の近視事情から【前編】

メガネブランド「JINS(ジンズ)」でスタッフの教育につとめる田中勝美さんに、近視の原因から対策まで前編後編の2回に分けて話を聞きました。

日ごろからお子さんの健康には気を配っているという人でも、目の健康のことは見落としがちのようですね。あなたは、今どきの子どもの視力について、どれくらい知っていますか。まずは、①~③が○か×か、答えてみてください。

  1. 小学生の裸眼視力1.0未満の割合は、約20%である。
  2. 40年前と比べると、小学生の裸眼視力1.0未満の割合は、約半分になっている。
  3. 一般的に、小学生より大人のほうが視力低下の進行がはやい。

答えは……全部×でした。どうでしょう、わかりましたか。わかった人もわからなかった人も、目と視力についての正しい知識を身につけて、お子さんの目の健康を守ってあげてください。

メガネブランド「JINS(ジンズ)」でスタッフの教育につとめる田中勝美さんに、近視の原因から対策まで2回に分けて話を聞きました。

子どもの視力低下が深刻に。中学生では2人に1人が視力1.0未満。

文部科学省の「2017年度学校保健統計調査」によると、小学生の裸眼視力1.0未満の割合は、32.46%。およそ3人に1人は視力が低下していることになりますね。中学生ではなんと、56.33%。半分以上の生徒が視力に問題があるのです。この数値、どちらも過去最高。40年前と比べると、約2倍にもなっています。子どもの視力低下の割合は年々増しているのです。

JINSでスタッフの教育につとめる田中勝美さん

近視の目ってどんな状態?

子どもたちの視力が低下する背景として考えられているのは、近視の子どもたちの増加です。近視というのは、もちろん聞いたことがあるでしょうが、どのような状態のことなのか具体的にご存知でしょうか。

わたしたちは、目から入る光をとらえ、脳に信号を送って「見る」と認識します。目はいわば、脳の出先器官のようなものです。目には角膜と水晶体があり、入ってきた光を網膜の上でピントが合うようにしています。そのしくみは、ちょうどカメラで写真を撮るときに、レンズでフィルム(デジタルカメラなら撮像素子)上にピントを合わせているのと同じです。

ものがよく見えている人の目は、網膜上でぴったりピントが合っています

ものがよく見えている人の目は、網膜上でぴったりピントが合っています。ところが、眼軸長(眼球の奥行き)が長くなってしまうと、網膜の上でピントが合わなくなってしまいます。ピントが合わなければどうなりますか。そう、像がボケてしまいますね。これが近視の状態です。

これが近視の状態です。

近視の原因は遺伝だけではない?

では、近視の原因は何でしょうか。直接的には、眼軸長が長くなるからといわれています。では、どうして眼軸長が長くなるのでしょう。え? ゲームのし過ぎや、テレビの見過ぎじゃないかって? そう思う人は多いかもしれません。

近視の原因−眼軸長が長くなるわけ−には、大きく分けて2つの説があります。ひとつは、親が近視だと子どもも近視になりやすいとする遺伝説。そして、もうひとつは、生活のしかたが原因だとする環境説です。環境説の要因のひとつに、ゲーム機やスマホの画面を見る、パソコンの画面を見る、本を読む…などの近くを見る作業が増えたことがあげられます。また、昨今では屋外活動時間の減少も近視の増加に関係していることなどもわかってきました。

最近の研究では、この2つのうちどちらかだけが原因というわけではなく、どちらも近視の原因として関係していることがわかってきました。遺伝の影響もあるけれど、環境によっては近視が進んだり、逆に進行がおさえられたりすることがあるということです。

“たかが近視”ではない

中には、「近視といったって病気ではないし、メガネをかければ見えるわけだし、大さわぎするほどのことではない」なんて思っている人もいるかもしれません。でも、近視を軽く考えてはいけません。強度の近視は、ほかの疾患につながることもあるんですよ。

近視というのは、眼軸長が長くなることでしたね。長くなるということは、網膜が引っ張られているということです。風船を考えてみてください。引っ張られるとうすくなって弱くなりますよね。すると、頭を打つなどのちょっとした刺激で網膜がはがれてしまうこともあるんです。これは網膜剥離という症状で、視力が下がり、最悪の場合は失明することもあります。

あまり知られていませんが、強度近視は、日本において、失明(視覚障害1級)の主原因の4番目に入っているのです。

さらに心配されるのは、子どもの近視は、その進行が大人よりはやいということ。小中学生くらいから視力が落ちはじめることが多いのですが、早い場合は6歳未満から近視になることもあり、一般的に年齢が若い方が近視の進行が早いといわれています。大人でも近視を発症する場合や、大人になってからも近視の進行が止まらない場合もあります。

お子さんの目の健康のために、何ができるでしょうか。次ページでは、近視の進行をおさえる方法について紹介します。

>>子どもの“目”に必要なバイオレットライトってなに?/最近の近視事情から【後編】>>

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと)
『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。
学研の子ども向け書籍や雑誌の編集ノウハウを活かし、子どもたちが安全に楽しめるサイトとして運営しています。
子どもたちのしあわせのために、家族のしあわせのために、有益な情報やサービスをお届けできるよう、いつも精一杯がんばっています。すくすく伸びる
子どもたちのために

PAGETOP