メニュー閉じる

100点が取れず勉強嫌いになっている小2の息子/教えて! 陰山先生【第21回】

100点が取れず勉強嫌いになっている小2の息子/教えて! 陰山先生【第21回】

小2の息子が「100点が取れないから勉強が嫌いだ」というので困ってます。点数のことよりも、このまま勉強を嫌いになってしまうのではないかと心配です。どうしたら、息子の勉強嫌いを直すことができるでしょうか?

質問

小2の息子が「100点が取れないから勉強が嫌いだ」というので困ってます。

わたしは今まで「100点取れないから叱りとばす」ということはしたことはありません。息子の答案を見ると間違っている箇所は、だいたいがケアレスミス。ですから、「ちゃんと問題をよく見て」とは指摘しています。

どうやら、息子と席が近い友だちが100点しか取らない子で、その男の子に刺激を受けて、がんばってはみたものの80点台止まりのため、100点が取れない自分の不甲斐なさに落ち込んでいるようです。

その男の子とは、体育の授業でもライバル関係のようで、そちらでは息子が勝つことも多いようですが、勉強では太刀打ちできないことがくやしいようです。

最近では、宿題をやらないときもあります。学校の授業中もぼーっとしていることが多いと、担任の先生に言われてしまいました。
先日の算数のテストでは50点を取り、息子はさらに落ち込んでしまっています。

わたしは点数のことよりも、このまま勉強を嫌いになってしまうのではないかと心配です。どうしたら、息子の勉強嫌いを直すことができるでしょうか?

回答

ケアレスミスは注意するだけでは直らない

90点は取れるのに100点は取れない。しかし簡単な問題だから、注意していれば間違いを防げたはず……そんな子はけっこう多いものです。そして多くの場合、「これはケアレスミスだから、次からは十分注意してやろう」という指導になります。

しかし、これは非常に危ない兆候です。というのは、ケアレスミスというのは、注意していれば直るというものではなく、本質的に言えば実力不足だからです。

百ます計算(10個の数字がます目の縦横に並び、その数字が交差するところに計算の答えを書きこんでいく学習法)を例に考えてみましょう。よどみなく計算を進めていけば、だいたい1分30秒から2分ぐらいの間で終了できます。しかし、特定の覚え間違いや習熟不足があると、そこでスピードがガクンと落ち、時には3分4分とかかるようになってきます。

まずは、学習漏れや習熟不足の箇所を見つける

たとえば筆算では、ある子どもが仮に「6+8」が苦手だとすると、「6+8」という計算過程が出てこなければ正しく答えられますが、「6+8」が出てくると間違えてしまうこともあります。しかし、この「6+8」が苦手だということに気がつかなければ、「筆算はだいたいできるけれど、一カ所間違いがあったから次からは注意しよう」というアドバイスになってしまうのです。

つまり、子どもたちの学習漏れや習熟不足を見つけ、その穴を埋めることこそが重要なのです。百ます計算は、まさにそうした習熟不足の箇所を発見することができる学習法です。そしてトレーニングすれば、2分以内で終了できるようになります。

もし息子さんが算数で100点が取れないのなら、まず百ます計算をさせてみてください。小学校2年生でも、1カ月程度集中してトレーニングすれば、2分を切るのはそれほど難しくはありません。しかしこれが3分程度かかるようなら、そのままどんなに注意深くテストをやっても、100点を取れるようにはなりません。

国語のテストも、日ごろから文章の読解がスムーズにできるようにトレーニングしておかなければ、ミスが起こります。読解力を高めるには、音読が重要です。なぜなら、声に出さずに黙読していると、実は読めていないところでも読めたように錯覚してしまい、理解していないにもかかわらず理解しているように思ってしまうからです。

実際に音読をさせてみると、子どもたちはよくつまずきます。そしてそのつまずきの8割以上は漢字です。わたしは漢字をきちんと書くということを指導していますが、実は、漢字が正しく書けるということは漢字を正しく読むということにつながり、読解の基本的な前提条件となるのです。もし国語でも100点が取りにくいのなら、小学校1年生の漢字の習熟も一部漏れているのかもしれません。

勉強の弱点を克服する意義をよく説明すること

重要なのは、そのような習熟不足をきちんと見つけ着実に埋めていくことです。そして、そのことを子どもにもよくわかる形で説明すれば、子どもは納得するだけでなく安心し、穴を埋める努力を素直にするものです。そうしていくうちに、勉強が嫌いだという気持ちはなくなってくるでしょう。

ところが、「不注意だ」あるいは「もっとまじめにやれ」というように、子どもの態度の問題にしてしまうと、本人としては、一生懸命取り組んだことを否定されたと感じ、反発するようになってしまいます。

今回は友だちの点数と比べることによって、マイナス効果が生まれているわけですが、できれば、その友だちといっしょに百ます計算や音読をしてみたり、その子の勉強法を聞いて、違いを調べてみたりするのもいいでしょう。100点しか取らない子というのは、そうしたことを自覚している子であり、計算や漢字の読み書きの弱点がない状態になっているはずです。

ケアレスミスというのは、実力不足に気がつかないことが原因だということを理解し、その習熟不足が何なのかをはっきりさせることが大切です。そして、本格的な勉強がわからないということ以上に、厄介な問題だということを知っておいてください。

関連記事

【第22回】クリスマス会でのセリフが覚えられない小2の娘
シリーズ「教えて! 陰山先生」第1回から第10回まとめ
シリーズ「教えて! 陰山先生」第11回から第20回まとめ
シリーズ「教えて! 陰山先生」第21回から第34回(最終回)まとめ

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

PAGETOP