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低学年の子どもにとって算数を学習する上で最も大切なもの/「賢い子ども」の育て方【第9回】

低学年の子どもにとって算数を学習する上で最も大切なもの/「賢い子ども」の育て方【第9回】

低学年の子どもにとって算数を学習する上で最も大切なものは何だと思いますか?「計算力!」と信じている人はすぐに考えを改めましょう。その方が幸せになれます。

低学年の子どもにとって算数を学習する上で最も大切なものは何だと思いますか?

「計算力!」

9割以上の人がこう答えると思いますが、0点です。計算は移動の手段みたいなもので、目的地がわからないのに移動してもどこにも着きません。もちろん、楽しくもないし、学力が向上することもありません。

わたしは計算問題が大嫌いなので、受験直前の時期しか出しません。先日、小4のクラスで速さの問題をはじめて取り上げました。

最初の質問

「秒速って何?」

「1秒間に進む距離!」

「じゃあ、分速は?」

「1分間に進む距離!」

「あと1つは何速?」

「時速!」

「意味は?」

「1時間に進む距離!」

 

「秒速8mというのはこういう意味だ。この図を使って問題を解いてね。」

1問目

「秒速8mは分速何mかな?」

図を使って考えた子は正解できましたが、図の意味を理解せずに答えを出した子は間違えました。

その子の答えは

2/15mでした。

「1秒と1分はどっちが長いの?」

「1分!」

「8mと2/15mはどっちが長い?」

「8m!」

「1秒間で8m進むのに1分間で進む距離がそれより短いのはなぜ?」

ここで自分の過ちに気付き、次は正解を出すことができました。

でも、

8÷60=2/15(m)

としていたのを

8×60=480(m)

としただけなので、ちゃんと理解したとは思えません。

よくありがちな

「わってだめなら、かけてみよう!」

というパターンです。この子は計算はできるし、方程式も使えます。頭が悪いわけではありません。では、なにがいけないのでしょうか?

最初の質問に戻ります。低学年の子どもにとって算数を学習する上で最も大切なものは何だと思いますか?

正解は概念形成です。

問題の仕組みを理解し、進むべき方向を見定めてから解く。速く解く必要はないし、最短距離で進む必要もありません。いろいろな景色を見ておけばあとでいろいろなことに役立つのです。道を覚える一番いい方法は道に迷うことです。

間違えた答えを出した子は概念形成ができないまま、反射的に計算し、答えを出そうとします。自分が出した答えが合っているのか間違っているのかを確認することもできません。間違った指導を受け、つまらない問題が大量に詰め込まれたテキストを与えられているとそういうふうになってしまいます。

とても真面目な子なので、そのうち、自分の頭で考えられるようになり、

「算数って楽しい!」

と感じられるようになるはずです。

算数という科目は算数のルールから逸脱しなければ何をやってもいいんです。そして、概念形成さえ正しくできれば、自分の好きなように問題をいじり倒していいんです。

楽しいに決まっています。そのことに気づけばいくらでも伸びます。

「算数の学習で一番大事なのは計算力だ!」

と信じている人はすぐに考えを改めましょう。その方が幸せになれます。

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宮本哲也(みやもとてつや)

宮本哲也(みやもとてつや)

宮本哲也(みやもとてつや)

1959年生まれ。
学生時代に塾業界に足を踏み入れ、大手進学塾講師を経て1993年宮本算数教室を横浜に設立。
「指導なき指導」を授業の柱に「無手勝流算数家元」と自らを名乗る。
無試験先着順の教室ながら、近年卒業生の80%以上が首都圏最難関中学(開成・麻布・栄光・筑駒・フェリス・桜蔭など)に進学する実績をあげている。
2009年、教室を日本橋に移転。2015年、教室をマンハッタンに移転。2017年、教室を中野に移す。

Webサイト http://www.miyamoto-mathematics.com/

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