子どもが伸びる親力

子どもには自分の人生を生きさせてあげよう

子どもには自分の人生を生きさせてあげよう

医学部をやめると言い出した学生

関東地方の某大学の医学部に通っていたある男子学生の話です。
彼は、大学2年生のとき「映像制作の勉強をしたい。だから今の大学をやめて別の大学に入り直す」と決心し、それを両親に伝えました。

父親は大いに怒り、「絶対に許さない」と答えました。
なぜなら、その父親は開業医で、息子が生まれたときから彼を跡継ぎにすると決めていたからです。

彼は子どものころから親の言うように勉強し、親の決めた中高一貫校に行き、親の決めた大学に入りました。

ところが、大学1年生の時に見た短編映画に感動し、自分もこの道に進みたいと思い始めました。

その後の1年間というもの、大いに迷いながらも決心できずにいました。
そして、大学2年生になってようやく決心できたのです。

彼が言うには父親の反応は予想よりちょっと激しかったとのことです。

彼は家を出て自分でアパートを借り、受験勉強とアルバイトに精を出しました。
半年後には新しい大学に合格し、今は映像制作の勉強に夢中になって取り組んでいます。

父親とは絶縁状態のままだそうです。

教育学部をやめると言い出した学生

これと似た話をもう一つ聞いたことがあります。
似てはいますが、親の反応はまったく違います。
話してくれたのは、近畿地方の中学校の校長先生です。

その校長先生の息子は大学の教育学部に通っていましたが、ある日の真夜中に父親の寝床にやってきて、「親父、話があるから起きてくれ」と言いました。

「いったい何ごとなのか?」と驚きながら起きた先生に、その息子は「オレは料理人になりたいから、今の大学をやめて専門学校に行きたい」と言いました。

くわしく聞いてみると、次のような内容でした。

以前から「美味しんぼ」という漫画が大好きで、よく読んでいた。
そのうちに料理人になりたいと思うようになり、年を追うごとにその思いは強くなった。
でも、なかなか言い出せないまま教師になるための勉強をしていた。
だけど、やっと決意して話すことができた。

結局、その校長先生は息子の願いを受け入れ、好きな道に進ませたそうです。
本人が喜んで専門学校に通っているのを見て、校長先生は「まあ、これでよかったかな」と思っているそうです。

話の最後に、その先生は、「『お前、今までいくら掛かってると思ってるんだ』くらいのことは言いたかったですよ」と笑いながら言いました。

子どもの人生は子どものもの

私はこの校長先生は立派だと思います。
開業医の父親にも見習って欲しいです。

子どもの人生は子どものものです。
人は誰でも自分の人生を生きるために生まれてきたのです。
それなのに、子どもの人生を親の思い通りにしたがる過干渉の親がたくさんいます。

親の価値観、親の夢、親の願い、そういったものを子どもに押しつける親がたくさんいるのです。

そういう親だと、子どもは自分の人生を生きることができなくなってしまいます。

子どもを親の自己実現の手段にしてはいけない

もちろん、子どもが親の言うことを聞いてくれて、そのときは一見うまくいったように見えることもあるかも知れません。

ても、あとで必ず反動が出ます。

その後うまくいなかなくなれば、子どもは親のせいだと思わずにはいられないでしょう。
親を恨むようになるかも知れません。

たとえ順調にいったとしても、自分のやりたいことができなかったという気持ちはずっと残ります。

中には、30代や40代になって自分探しを始める人もいます。

子どもには自分の人生を生きさせてあげてください。
子どもを親のコピーにしてはいけません。
子どもを親の自己実現の手段にしてはいけません。

親野智可等(おやのちから)
教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。
公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。
著書多数。
Webサイト http://www.oyaryoku.jp/