日本人親子がパリで暮らせば

第8回 フランスはオーガニック給食ブーム

パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏は「2020年までには学校給食の50%をBIO(ビオ=オーガニック)にしたい」と言っています。子どもにはより安全な食品を食べさせたい、そう思うのは日本の親もフランスの親も同じです。

しかし、オーガニック食品はコストが高くつくため、要望は多いものの、現在はその普及率は高くはありません。

けれども、パリの街中にはBIOショップが増え続けていますし、また大型スーパーでもBIOコーナーを拡大していることから、今後、給食のオーガニック化はパリのみならずフランス全土で進んでいくでしょう。


給食のオーガニック化が進むパリ。

給食を食べずに、自宅に帰って昼食もOK

フランスではエコール・マテルネル(幼稚園)に入った3歳児から学校給食がはじまります。昼休みは1時間半ほどあり、給食を食べるか食べないかは自由。幼稚園児だけでなく、小学生、さらには中学生になっても昼には家にもどって昼食を食べる児童生徒もいます。

また、日本と違う点は、教室では給食を食べないこと。幼稚園でも、小学校でも、中学校でも校内には食堂があり、給食はそこで提供されるのです。

給食費は公立校の場合、一律ではありません。家庭の所得によって異なり、パリ市の場合だと現在は一食が0.13ユーロ~7ユーロまで、10段階に分かれています。貧しき者からは少なく、富める者からは多くというわけです。
(1ユーロ およそ119円。2017年3月31日現在)

また、フランスのTVA(付加価値税で日本の消費税にあたる)は20%と高いのですが、生きていくのに必要なものは最低の5.5%に軽減されています。学校給食もその対象で給食費にかかる税率は5.5%です。

さてわたしは、娘には公立幼稚園のときから給食を食べさせていました。給食費はわたしたち日本人の場合は、外国人で査定対象外のため最高ランクの金額。それでも娘の偏食がひどかったため、食生活を改善したかったこと。また給食を食べた方が、友だちが多くできそう、と考えたからです。

給食はフレンチのフルコース!?

給食ではどんなものを食べていたのかというと、幼稚園当時のメモをみると、ある日のメニューは、
<キャロットとレーズンのサラダ、ローストビーフ、フレンチフライドポテト、ヨーグルト、フランボワーズのタルト>

また、別の日は、
<クレソンのポタージュスープ、白身魚ブロシェット(串焼き)、バスク地方の米料理、チーズ、季節のフルーツ>

と、なかなか豪華なフルコースでした。もちろん、どんなメニューにもバゲット(フランスパン)は付いています。しかし、娘は給食を残すことが多く、先生から「パンしか食べませんでした」とか「りんごだけ食べました」としょっちゅう報告されていました。

「どうして食べないの?」と聞くと、
「だって、カンティヌ(給食)まずいんだもん」などと娘は答えていたものです。

シュタイナー学校の給食は完全なBIO

その娘が「カンティヌはおいしいよ、ぜ~んぶ食べちゃった!」と言いはじめたのは、シュタイナー学校に入ってからです。

娘が通ったパリ郊外のシュタイナー学校では、幼稚園から高校までの全児童生徒400人分の給食を、校内の厨房でつくっていました。専任のシェフがいて、数人のスタッフとともに朝早くから調理をはじめるのです。

使われる食材は、もちろんルドルフ・シュタイナーが提唱したバイオダイナミック農法によるものです。100%のオーガニック給食ですから、安心、安全、そして味もとてもよかったようです。当時6歳の娘にはオーガニックの予備知識などありませんでしたが、それでも子どもの舌はなかなか敏感なようで、特に野菜が大好きになりました。

「ママ、キャロットもレタスも、そのままでもおいしいよ」と、それまでドレッシングやマヨネーズをたっぷりつけて食べていた習慣が変わり、何もつけずに生野菜をバリバリ食べたり、ほんの少しレモン汁をたらすだけになったのです。


シュタイナー学校の給食のサンプル

その後、シュタイナー学校のクラスメイトたちが、わが家に来ていっしょにサラダを食べると、みんな似たような食べ方をするのです。おいしい野菜なら本来持っている甘みやうまみだけで、じゅうぶんということでしょうか。

シュタイナー学校の給食メニューそのものは、公立校のフレンチのコースと似たようなものですが、味の差は大きかったようです。オーガニック給食を子どもに食べさせたくて、シュタイナー学校に入学するケースも少なくないと聞きました。

人気のメニューはピザ白身魚のフライソーセージハンバーグフレンチフライドポテトなどで、子どもたちには凝った料理より、やはり普通の味が受けるようです。

さて、シュタイナー学校は私立ですから給食費は一律です。現在は一食6.5ユーロ。娘が通っていた当時は5ユーロ前後だったと記憶しています。

ところで、フランス料理は一品ずつ食べていくもの。たとえトレーに全部が乗っていても前菜から順に食べていきます。長年、フランスの給食でこのテーブルマナーを守ってきた娘は、なんと和食でも同じ食べ方をするようになってしまいました。

日本では、ばっかり食べと言われる食べ方です。成長した現在では和食は違うと理解はしていますが、口の中で味が混ざるのを好まないのです。
日本人なのだから、ここだけは直してほしいと親としては思うですが……。


オーガニック野菜は栄養価が高く味も抜群。

第9回 作文力をつけるためのブログのすすめ

沼口祐子(ぬまぐちゆうこ)
1957年静岡市生まれ。編集プロダクションを経て、フリーライターになり、女性誌のさまざまなページ作りに携わる。1995年に渡仏し、パリで20年間子育て、犬育てをしたのち、2015年に帰国。
著書に、『しあわせになれるパリ幼稚園物語』、『気分はパリ暮らし』などがある。