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国語辞典のひみつ 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー 第1回(全4回)


小学生が一度は手にする子ども向け国語辞典。大人用の国語辞典とちがってどのような特長があるのでしょう。子どもが言葉を引きやすくするための工夫とは? また、そもそも国語辞典とはどうやってつくられているのでしょうか。これまであまり明かされることのなかった、子ども向け国語辞典づくりのひみつについて、『学研 新レインボー小学国語辞典 改訂第5版(オールカラー)』の改訂を担当した、株式会社学研プラス 小中学生事業部 辞典編集室の森川聡顕副室長と今井優子編集長にお話をうかがいます。


写真左:森川聡顕副室長 写真右:『学研 新レインボー小学国語辞典 改訂第5版(オールカラー)』

第1回 いまどきの辞典って、どうなってるの?

――はじめにお聞きしたいのですが、辞典って何なのでしょう。定義を教えてください。


森川:わたしたち学研の辞典編集室では、事典(ことてん)、字典(もじてん)、辞典(ことばてん)の3種類を扱っています。「事典」は百科事典など事物について詳細に書かれたもの、「字典」は漢字字典や書体字典など、文字について書かれたものです。

そして「辞典」は、言葉について書かれたものです。いろいろな言葉を、あるルールにのっとって1冊の本にしているのが辞典です。国語辞典、英和辞典、漢和辞典などがそうですね。まんがを使って説明をしている辞典もあります。
わたしたちのチームは「辞典」を中心に編集を行なっています。

――小学生用だけを見ても、わたしたち保護者世代が使った国語辞典と、いまどきの国語辞典ではだいぶちがっていておどろきました。

今井:いまの保護者世代が子どものころ手にした国語辞典というと、表紙は硬い紙で、イラストもあまりなく、文字だらけで、なんとなく勉強のための道具という印象が強かったかもしれませんね。でも、いまの国語辞典はオールカラーで、イラストや写真、コラムがたくさん入って、楽しげで見やすくなっています。背表紙もやわらかくなって本が開きやすく、使い勝手が良くなりました。ディズニーのキャラクターを採用したシリーズもあり、表紙がピンクのリボン柄でかわいらしく、女の子にとても人気があります。


©Disney

――子ども向けの国語辞典は、大人向けのものとどのような点がちがっているのでしょうか?

今井:大きくちがっているのは収録語数です。小学生向けの国語辞典では37,200語を収録していますが、これが中学生向けになると50,000語になり、大人向けだと75,000語になります。

大人向け辞典の本文は黒と赤の2色刷りですが、この『学研 新レインボー小学国語辞典 改訂第5版(オールカラー)』はタイトルのとおりオールカラーです。1行の文字数もあまり多くならないようにして読みやすくしています。

森川:大人向けにはシンプルに説明できる言葉でも、子どもにはもう少しかみくだいて説明しないといけないことがあります。また、ある程度の文字の大きさが必要ですし、そのうえ全部の漢字にふりがなをふったり、品詞も記号ではなくきちんと表示したりして、子ども向けならではのたくさんの要素を入れています。この改訂第5版ではオールカラーにしたことによって表現の幅が広がったので、より子どもに特化した編集が可能になりました。

――『学研 新レインボー小学国語辞典 改訂第5版(オールカラー)』に小学生向けの国語辞典として日本初のオールカラーを採用したきっかけについて教えてください。


上は、2色刷りの改訂第4版。下は、オールカラーの改訂第5版。

森川:各社とも子ども向け国語辞典にさまざまな工夫をこらしています。そのなかでわたしたちが根本的に目指したのは「子どもたちが本当に使いやすいものってなんだろう」ということです。そして、子どもたちにとって一番のものをつくるためにはオールカラーしかないと思って踏み切りました。

オールカラー化したことによって、イラストや写真の品質が向上し、図表も見やすくなりました。色による表現の幅が広がったので、ツメの部分が色分けされて検索しやすい、対義語・類義語・四字熟語などのアイコンがひと目でわかる、例文を色で区別しているのでわかりやすい、といったメリットが生まれました。

――今後は他社の子ども向け国語辞典もオールカラーになっていくのでしょうか。

森川:そうなると思います。よく男子フィギュアスケートの4回転ジャンプにたとえて話をするんですが、30年前は4回転なんてほとんど飛んでいなかったのに、いまは4回転が飛べないとメダルには手が届かない時代になりました。それと同じように、子ども向けの国語辞典もこれからはオールカラーでないと買ってもらえない時代になるだろうと思っています。

 

国語辞典はどんどん進化していたのですね。次回は、子どもが国語辞典を使いやすくするための編集の工夫について、具体的にお話をうかがいます。

 

第1回 いまどきの辞典って、どうなってるの?
第2回 子ども向け国語辞典のひみつ、つぎつぎに言葉を引きたくなる工夫

第3回 子ども向け国語辞典ができるまで
第4回 辞書のひみつ

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梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。