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国語辞典のひみつ 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー 第3回(全4回)

国語辞典のひみつ 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー 第3回(全4回)

第3回 子ども向け国語辞典ができるまで

そもそも子ども向け国語辞典は、どのようなステップでつくられているのでしょうか。2色刷りの第4版から、オールカラーになった第5版へ改訂する作業を例に、子ども向け国語辞典ができるまでの編集ステップについてうかがいます。

――子ども向け国語辞典の編集はどのような手順で進めていくのですか?

ステップ1 辞典にのせる言葉を採集する


今井:フィールドワークを行なったり、教科書改訂に合わせて教科書をチェックしたりして、辞典に収録する言葉を採集します。今回の第5版への改訂にあたっては、さまざまな教科書会社から出版されている小学1年生から6年生までの国語の教科書から、約8300語をピックアップしました。そのなかから、まだ国語辞典に収録されていない数百語について、収録するかしないかを検討していきます。また、日常生活において新しく使われはじめた言葉についても同様に、どこまで収録するかを決めます。

森川:社外の専門家の力も借りています。わたしたちのチームでは3名の専門家の先生方から指導を受けています。

言語学者の金田一秀穂先生からは、監修者として、全体的な方針、現在の日本語事情などにご意見をいただいています。辞書学の面では、国立国語研究所の柏野和佳子先生にお願いして、いまの時代の辞典のあり方や、子ども向けの辞典に入れるべき言葉、説明のしかたなどを具体的に示していただきます。また、辞書引きという観点から中部大学の深谷圭助先生のアドバイスを受けています。

それらを理解した上で、わたしたち編集室がひとつひとつの項目に反映していきます。

監修の金田一秀穂先生

ステップ2 子どもたちの生の声をあつめ、子どもが引きやすい辞典の形をさぐる


森川:子どもたちが実際に辞書を使っているようすを見る場はいろいろありますが、そのうちの1つが「辞書引き」イベントです。わたしたちは毎年、国語辞典を購入する人が多い3月~5月ごろに、おもに小学1年生を対象とした「辞書引き」イベントを開催しています。辞書のしくみや引き方、言葉のおもしろさや不思議さをクイズなどにして、冊子を使って取り組んでもらっています。

小学校で国語辞典の使い方を習うのは3年生なのですが、いまは小学校入学に合わせて購入することが多いんですね。ですから小学1年生をメインにしていますが、実際は、就学前の幼児から小学校5~6年生まで、さまざまな年齢の子どもたちが参加します。そこでは、辞典編集室のスタッフがみずから会場へ行って、「こうやってやるんだよ」と国語辞典の引き方をマンツーマンで教えています。

今井:そうすると、子どもたちが国語辞典を引くときに、うまくいかないポイントがとてもよく見えてくるんです。うまくページをめくれないときの指と紙の感じとか、「ここのツメを見て選ぶんだよ」と言ったときに、ツメの字を見落としてしまう、といった細かい部分がわかってくるので、そうして得た子どもの生の声を編集に生かしています。

――子どもたちが使っている新しい言葉なども採集できそうですね。

森川:そうですね。子どもたちとふれあうことで得た言葉の情報は、もちろん編集に生かしています。でも、それ以上にわたしたちは、国語辞典を通じて日本語というものを子どもたちにもう少し理解してもらえるといいな、という考えで辞書引きイベントを開催しているんです。国語辞典をちゃんと使ってもらえるようになるのがメイン。そのなかで、子どもたちの声も採集しています。

ステップ3 1500ページの編集作業

今井:次に辞典のデザインに入っていきます。編集室で案を考えて、デザイナーに複数のデザインパターンを制作してもらいます。文字の大きさや色、ふりがなの位置、品詞マークの大きさ、行間など、紙面の見やすさのためにミリ単位で厳密に検討して、デザインを調整しています。

『新レインボー小学国語辞典』は約1500ページ以上あるので、各ページの各段が1行増えるだけで、辞典のページ数が50ページ以上増えてしまうんです。コストに影響しますし、厚みにダイレクトに関係してきますから、1行も1文字もおろそかにできません。

 


森川:見やすくするためには、紙面をゆったりさせたい、でもそうするとページが増えてしまう。でも、子どもができるだけ読みやすいようにしたい。ここは、読みやすさの追求と内容量とのせめぎあいです。

今井:本文のデザインと並行して、表紙やカラーページの企画とデザイン、イラストや写真の手配なども行ないます。第5版ではオールカラー化に合わせてイラストをすべて新しくしたので、大変でしたね。

森川:そしてデザイナーに、イラストをもうちょっと大きくしてくださいとかフォントを変えてくださいといった注文を出して、6~7回やりとりがくりかえされ、ようやく最終的なデザインができあがるんです。

 

最終的にデザインが決まるまでの編集ステップをうかがいました。次回は、印刷工程について教えていただきます。お楽しみに。

第1回 いまどきの辞典って、どうなってるの?
第2回 子ども向け国語辞典のひみつ、つぎつぎに言葉を引きたくなる工夫
第3回目 子ども向け国語辞典ができるまで
第4回 辞書のひみつ

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梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。