シリーズ 専門家にきく!

実践! 国語辞典を楽しく使いこなそう 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー第1回(全4回)

「国語辞典のひみつ」において、子ども用の国語辞典は限りない工夫とハイテクのかたまりだとわかりました。そこで本シリーズでは実践編として、子ども用の国語辞典を家庭で楽しく使いこなすコツ、ICT社会で国語辞典が果たす役割などについて、ひきつづき株式会社学研プラス 小中学生事業部 辞典編集室の森川聡顕副室長と今井優子編集長にお話をうかがいます。


写真左:森川聡顕副室長 写真右:『学研 新レインボー小学国語辞典 改訂第5版(オールカラー)』

第1回 国語辞典で伸びる力、養われる力とは


―はじめにお聞きしますが、子どもが国語辞典を使うことによって養われる力とはどんなものでしょうか。

今井:一言で言うと「自分で調べる力」です。国語辞典や図鑑、いろいろな本を調べ、それらの情報を総合して自分の情報としてインプットする、というのが「調べる」ということなんです。国語辞典は、日常生活の中で知らない言葉に出会ったときに「調べる」ためのいちばん身近なツールだと思います。


森川:自分が必要な情報の探し方の勉強にもなります。

たとえば国語辞典は日本語を調べる辞典ですが、漢字についてくわしく調べるなら国語辞典よりも漢字辞典を見てみよう、ことわざを調べるなら、ことわざ辞典を見てみよう、というように、そこで得られない情報をほかの手段で得ていくことの繰り返しによって、自分が必要な情報をきちんと探しあてる力が身についていきます。

得た情報は総合的に組み立てられて自分の中に蓄積されていきますので、国語辞典を引くことによって、自分が必要な情報を探す力を伸ばしてもらえればと思っています。

―子どもが国語辞典を使うことによるメリットがあれば教えてください。

森川:教育学者の齋藤孝先生がおっしゃっていますが、“体の感覚”って大事だと思うんですよ。たとえば国語辞典で「さ行」の言葉を引こうとしたときに、パッと「さ」のところを開けるのも、体の感覚ですよね。

「し」を調べたいんだけれど「す」が出てきた。ああ、「し」はもうちょっと前だな、という感覚が身につくことは、ネットとの大きなちがいです。ある順序に従ってものを並べていく、というルールを体の感覚として身につけて、その力を別の機会に役立てるためにも、国語辞典は無視できないツールになっていると思います。


今井:もうひとつ、国語辞典の長所として一覧性があります。言葉を探していく過程で、ちょっと前だったりうしろだったりして、1ページずつめくることがあると思うんですけど、途中でイラストがあって興味をひかれたら、そこで止まってもいいわけです。そうやって関係ない語にも目を止めて、言葉がこんなにあるということを感じるだけでも意味があると思います。

今井:学研の辞典を監修してくださっている言語学者の金田一秀穂先生が「語い力をデジカメの画素数にたとえて、画素数が少なくても写真は写るけれど、よりクリアに表現するためには画素数が多い方がいい。言葉もそれと同じで、たくさん言葉を知らなくても話はできるけれど、自分の気持ちや状況をより明確に伝えるためには、多くの言葉を知っていた方がいい」とわかりやすい言い方をされていて感銘を受けました。

もちろん国語辞典だけが言葉を知るツールではありませんが、その助けとなってほしいという願いをこめて国語辞典をつくっています。

―ネットで言葉を調べるのでは、そういった力は身につかないのでしょうか。

今井:ネット情報は便利なのでわたしもよく利用しますが、検索していちばん上に出てきたものが必ずしもいちばん正しいとは限らない。それに対して、本になっているものは何度も精査された情報です。とくに子どもはその情報が本当かウソか見分ける力がまだ十分ではないので、自分がどう考えたらいいのか判断する力をつけるためのツールのひとつとして、国語辞典を利用してほしいと思います。


森川:生まれたときからネットが当たり前にある今の子どもたちは、ネットのメリットを享受するでしょう。むしろネットの情報に触れないでいると、これからの社会では取り残されてしまうかもしれない。大切なのはバランスだと思います。きちんと編集して整理された信頼できるサイトはネットにもあります。そういう信頼できるサイトにたどりついて、きちんと調べられる力があればいいわけです。

とはいえ、やはり子どもが国語辞典を使うことにはお伝えしてきたようにさまざまなメリットがありますから、積極的に使って欲しいですね。

―国語辞典を使うことで、子どもにとって大切な力が養われることがよくわかりました。語い力はデジカメの画素数のようなもの、という金田一先生のお話にも納得です。次回は子ども向け国語辞典の買い方、選び方についてお話をうかがいます。

第1回 国語辞典で伸びる力、養われる力とは
第2回 子ども向け国語辞典、どうやって選べばいいの?
第3回 家庭で国語辞典を楽しもう
第4回 ICT時代の国語辞典の役割

関連記事

国語辞典のひみつ 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー
第1回 いまどきの辞典って、どうなってるの?
第2回 子ども向け国語辞典のひみつ、つぎつぎに言葉を引きたくなる工夫
第3回 子ども向け国語辞典ができるまで
第4回 辞書のひみつ

はじめての辞書ってどうやって選べばいいの? 新小1向け 国語辞典・徹底比較座談会

梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。