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多様性を力に変えて 障害のない社会をつくる   株式会社LITALICOインタビュー第1回(全4回)

多様性を力に変えて 障害のない社会をつくる   株式会社LITALICOインタビュー第1回(全4回)

「障害は人ではなく、社会の側にある」という考えのもと、すべての人が生きやすい社会を実現するための取り組みを行なっている株式会社LITALICO(りたりこ)。同社執行役員の野口晃菜さんに発達障害と社会の現状について、執行役員CTOの岸田崇志さんに同社におけるICTの活用についてうかがいました。

株式会社LITALICO(リタリコ)

LITALICOは“障害のない社会をつくる”をビジョンに掲げ、障害のある方の就労支援サービス「LITALICOワークス」、発達が気になる子どもも安心して通えるソーシャルスキル&学習教室「LITALICOジュニア」、子どもたちのためのIT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」を3本の柱として、障害のある方を中心に幼児期の教育から就労支援までをワンストップで提供。子育て情報メディア「Conobie」や発達障害児の家族のためのポータルサイト「LITALICO発達ナビ」など、インターネットでの情報発信に関する事業も展開。2016年3月に東証マザーズに上場、2017年3月に東証一部に市場変更。

第1回 発達障害がある子どもたちの現状とは?

初回は、野口さんに発達障害について、そして発達障害のある子どもたちに周りの大人ができることについてうかがいます。

――株式会社LITALICOでは、教室運営やサイト運営で発達障害がある子どもをサポートしています。はじめに、発達障害について教えてください。


発達障害とは、「自閉症、アスペルガー症候群そのほかの広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、これに類する先天的な脳機能障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして発達障害者支援法で定められているもの」の総称です。
現在の医学では脳の先天的な障害ということしかわかっていませんが、診断名は同じでも一人ひとり全然違う困難を抱えているというのが前提にあります。

たとえば「自閉スペクトラム症」のある方は、先天的に人とのかかわりかたやコミュニケーションが独特だったり、特定のものや状況についての強いこだわりがあったり、感覚が極めて鋭敏、または極めて鈍感であるといった特性があります。

この特性によって、社会に適応するために著しく困難さを感じているかどうかが「障害」かそうでないかをわかつ大事なポイントなんです。その困難さの段階にも個人差があって、コミュニケーションがちょっと苦手な人からすごく苦手な人までさまざまです。

――具体的に、学校生活でどんな困難を感じているのでしょうか。


お話を聞いたLITALICO執行役員の野口晃菜さん

先生の指示がその子には抽象的すぎてわからなかったり、友だちの言っている冗談を文字通りに受け取ってしまったりします。触感に特性のある場合は、プールの水の冷たさを痛いと感じたり、逆に痛みを感じづらかったりします。

そのほかにも、授業中の先生の声と窓の外から聞こえてくる風の音が同じボリュームで聞こえてしまって、先生の声が聞き取れないことなど、ほかの方だと脳で自動的にやってくれる機能が働きづらいこともあります。

――ほかにも発達障害の診断名と特徴があれば教えてください。

ADHD(注意欠陥多動性障害)のある方は不注意や多動性、衝動性といった特性があります。たとえば、忘れ物がすごく多かったり、じっとしていられなかったり、衝動的に物事を言ったりする特徴があります。

「こういう人、周りにいる」と思うかもしれませんが、なかなか自分ではコントロールすることが難しいのが特徴です。

そのほかにもさまざまな障害の種類があり、知的障害をあわせもつ人もいます。周囲が一人ひとりの特徴に合わせた接しかたをしないと、二次障害といって、行動上の問題や精神障害につながる可能性もあります。

――特徴に合わせた接しかたが大切なんですね。周りの大人たちの知識が必要だということでしょうか。

そのとおりです。脳機能の障害だということを理解して接することが大事なんです。発達障害が広く知られだしたのが最近ということもあって、それ以前は「わがままな子」「扱いづらい子」という風に見られていたケースが少なくありません。

保護者の方のなかには今でも「この子はダメな子だ」と子どもを責めたり、「わたしの育てかたが悪い」と自分を責める方がたくさんいらっしゃいます。育てかたが原因で発達障害が生じたわけではなく、脳機能の障害なので、どうか自分を責めないでほしいなと思います。

保護者や周りの大人たちが発達障害についての知識を持って、その子の個性や能力、希望を把握し、一人ひとりの症状に合った接しかたをしていくことが必要です。

――もしかしたら、うちの子……と思った場合には、どこに相談したらよいのでしょうか。


まずは専門機関に相談を

発達障害かどうかの前に、自分とその子は違うということを前提に、その子がどういう子なのかを知ることが重要です。そのうえで、ほかの子とちょっと違うかもとか、幼稚園や保育園、学校で困難さを抱えているのかもしれないということがわかったら、まず専門機関に相談してみてください。

――学校の先生でもよいのでしょうか。

いま、すべての小学校・中学校・高校に特別支援教育コーディネーターをおく制度になっていて、保護者の対応の窓口になっています。学校によってはスクールカウンセラーをおいていたり、特別支援学級や通級指導教室などの先生もいるので、まずは相談してみてください。

あとは小児科や児童精神科、それから自治体の障害福祉課でも相談できますし、わたしたちのような民間の施設の問い合わせ窓口に問い合わせていただくこともできます。

 

発達障害について、もっと知らなくてはいけないと感じます。次は野口さんが教室運営にかかわっている「LITALICOジュニア」での取り組みについてお話をうかがいます。


[企画・構成 渡邉純子]

川筋真貴
川筋真貴(かわすじまき)
中学校の国語教員を経てライターに転職。女性向けの媒体での執筆が多く、IT関係からファッション・ペット・インテリアまで、女性のライフスタイルに役立つ記事の作成を得意としている。趣味は長年続けている茶道と御朱印集め。東京都在住。