
社会での生きづらさ、学校での学びづらさを抱えた、発達障害がある子どもたち。そんな子どもと保護者のサポートを行なっている「LITALICOジュニア」について、野口さんにうかがいます。
第2回 LITALICOジュニアでの取り組み
――LITALICOジュニアとは、なにをするところですか。

お話をうかがった株式会社LITALICO(りたりこ)執行役員の野口晃菜さん
児童福祉法に基づいた児童発達支援と放課後等デイサービスを中心に、私費の学習塾として運営している教室もあります。主に基本的な生活スキルや社会性といったソーシャルスキルを身につけるための支援、そして学習支援をしています。
―― LITALICOジュニアには、どんな子どもたちが通っているのですか。
現在、日本全国で約8,000人の子どもたちが通っています(2017年3月時点)。発達障害の診断名のある子どもやなんらかの傾向のある子どもたちです。そのほかには発達障害の診断は出ていないけれど不登校、普通学級に在籍しているけれどなんらかの理由で勉強についていくことが難しかったり、学校に適応することが難しい子どもたちもいます。勉強はできるけれどもコミュニケーションは難しいという子も多いです。
―― LITALICOジュニアでは、どんな授業を受けるんですか。
授業では、個別の計画を立てて、一人ひとりの課題に合わせた教育を行なっています。言葉の遅れが気になるとか、対人関係のトラブルになりやすいとか、どんなことで困っているかは一人ひとり違うので、それぞれに合わせた学びかたと環境でサポートしています。
週に1回、1時間の授業を受ける方が多いですね。授業のスタイルは個別と集団から選ぶことができます。

個別の計画を立てて、一人ひとりの課題に合わせた教育を行なっている
―― 保護者は授業を見ることができますか。
授業のようすは、教室内のモニターですべて見ることができるので、授業を見ていただきながら、保護者にも接しかたを参考にしていただけるようにしています。学齢期の子どもだと50分の授業と保護者への10分間のフィードバックの時間を設けているのですが、フィードバックの時間には授業以外でも学校であったこと、家でのようすなどの相談に乗っています。わたしたちも本当は毎日お話を聞きたいくらいなんですけど、みなさん1週間分の悩みを抱えていらっしゃいます。
―― 授業以外の相談にも乗ってもらえるのは、保護者のみなさんにとっても心強いですね。保護者の反応はいかがですか。
最初はわらにもすがる思いで問い合わせてくださる方ばかりなので「救われました」という声が一番多いですね。
たとえば自閉スペクトラム症の診断があり言葉でのコミュニケーションが難しく、意思疎通がなかなかできないお子さんの保護者からは、「LITALICOジュニアに来て、この子がなにを伝えたいのか分かるようになった」と言っていただけました。
わたしたちは「この行動の理由は?」を考えて心を読み解くプロなので、保護者のみなさんへの翻訳ができるんです。その方法を保護者が学んでくださって、お子さんとコミュニケーションが取れるようになったという声も届いています。指導員たちは子どもたちと保護者に寄り添うことを大切にしているので、電話で話し込むこともよくあります。
―― とても寄り添われているのですね。お子さんたちのようすはどうですか?
今まで分からなかったことが分かるようになるので、それを純粋に楽しいと感じてくれたり、学校では怒られてばかりだったけど、LITALICOジュニアでほめられることで自信がついたというお子さんが多いですね。
わたしたちはできないことを無くすよりも、できることを増やしていこうという働きかけをしているので、これでもかっていうくらい子どもたちにポジティブに関わるのです。

その子が将来、その子らしく生きて行くことを目指す
――一人ひとりをほめて伸ばすんですね。
わたしたちが目指しているのは「学校に適応すること」「ほかの子とおなじようになること」ではなく、その子が将来、その子らしく生きて行くことです。そこに向かっていくためには、その子がやりたいと思うことを大切にしないといけない。ですからLITALICOジュニアでは、まずは子どもたちの興味関心があることや好きなことから心に火をつけています。たとえば、その子が宇宙が好きなら、宇宙と算数、宇宙と国語を組み合わせた授業を行なったりしています。
単なる学習の習熟度ではなく、その学びが子どもの将来に役立つよう、一人ひとりに合わせた授業でサポートをしているんですね。次は、LITALICO のICT事業についてお話をうかがいます。
[企画・構成 渡邉純子]
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