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「知識への扉をひらく 図鑑のひみつ」図鑑編集室インタビュー 第2回(全4回)

第2回 子ども向け図鑑ってどうやってつくるの?

―子ども向け図鑑ができるまでのステップについて「学研の図鑑LIVE 恐竜」を例に教えてください。


まずは図鑑で「伝えたいこと」を明確にします。「学研の図鑑LIVE 恐竜」をつくるにあたっては、恐竜って本当に地球上にいて、こんな生き物だったんだよ、人間よりもずっと長いあいだ陸上を支配していたんだよ、ということを伝えたいと思いました。

「ねらい」を明確にしたあとは、「なにをのせるか」を検討して決めます。どういう種類の恐竜をどういうレベルまでのせるかは編集上とても重要なポイントですが、ほかの生き物とちがって、恐竜の場合は独特の難しさがあるんです。

―それはどういったことですか?

発見されている恐竜って何種類くらいいると思いますか? 名前のついた恐竜は約1000種類いるんですが、それらの多くは全身骨格が見つかっていない。骨や歯の一部しか見つかっていないものも多いんです。恐竜って、骨の一部の化石が出ただけで名前がつく場合があるんですよ。

―一部の化石だけで恐竜の種類がわかるのですか。


前足の化石で名前がついている恐竜もいますよ。特徴的な化石だからこそ名前がつくんですが、とにかく多くの恐竜は化石が一部しかない。

そうすると、化石が一部しかないものをどう扱うかによって掲載する恐竜の数がちがってきます。

たとえば全身骨格の半分以上の化石が出ている恐竜だけをのせる、というふうに区切って分類していったとします。そうすると区切り方によっては、1000種のうちの100種類くらいしかのせられなくなってしまう。また、たとえ一部の骨の化石しか発見されていなくても、恐竜の進化のうえで重要だと考えられるものは掲載します。なにをのせるかという決めごとは恐竜独特の選び方なので、本当に難しいんです。最新版では、約200種の恐竜を掲載しています。

―それはたしかに難しそうですね。全身の絵をのせていますが、生きている個体がない恐竜は、どうやってイラストを描き起こしているのですか?

恐竜専門のイラストレーターが、資料や論文など、わかっている事実の範囲で正しい絵を描いて、その絵を監修の先生に確認していただきます。何人もの先生方や、それぞれの恐竜の専門の先生に確認してもらって、ようやくイラストが決まります。

―解説の文章はどうされているのですか。

専門のライターが文章を書いています。どの学者の情報をよりどころとするかとか、このデータが新しいとか、文献を精査しながらより正しい事実にもとづいた内容で解説しています。その文章を監修の先生が確認して、新発見があれば修正をして内容を確定します。

―論文や資料などをもとに、ていねいに作成しているのですね。

そうなんです。新しい化石が見つかれば新しい発見があるので、イラストも解説文も変わっていくんですよ。

―個体の写真がない恐竜の表現にリアリティをもたせる工夫について教えてください。


近ごろの恐竜の色って地味になったと思いませんか?

かつては派手派手しい、は虫類系の色が流行していたんですが、研究が進んだ結果、最近の図鑑では恐竜は地味な色に変化しました。それがいまの時代のリアリティです。

じつは脳の研究などにより、恐竜は色が見えていただろうと考えられています。

色が見えたなら、肉食系の恐竜が派手な色で目立っていたら獲物に逃げられてしまう、草食系の恐竜も目立つメリットはない、という推論にもとづいて地味な色になりました。

そうやってできるだけ新しい知見を反映しているので、図鑑は新しいものを見たほうがいいですね。

―なるほど、図鑑の内容は研究とともに進化しているんですね。次回は、そうした最新の科学研究の成果が図鑑に反映されるまでの過程を追います。

梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。