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科学教育で子どもの創造性と社会性をはぐくむ サイエンス倶楽部第2回(全4回)

第2回 子どもの力を伸ばす、科学実験の教育効果

前回はサイエンス倶楽部のカリキュラムの概要と教育理念についてお話をお聞きしました。今回は子どもの力を伸ばす教育効果について、さらにくわしくうかがっていきます。

−−幼児から小学生、中学生まで幅広くコースを展開していますが、学齢ごとにカリキュラムの特徴はありますか。


鈴木:子どもたちの成長に応じて、テーマが段階的に、そして体系的にステップアップしていくようになっています。

実験器具に関して言えば、1年生の後半にはマッチをすって火をつけます。2年生になるとひとりでアルコールランプをつけられるようになります。3年生になってガスバーナーが使えるようになって、4年生以降は、ほぼすべての実験ができるスキルが自然と身についていきます。

また、五感を働かせ、身体を動かし、心を弾ませて考えることができるよう、すべてのカリキュラムに体験的要素を盛り込んでいます。
そして、実験をする姿勢として、全員が白衣を着用します。もちろん幼児コースからです。

広永:実験室で実験をするということは、遊びの延長ではありませんので白衣を着て、精神的にもきちんと身を正します。また白衣はいろんな意味での安全管理につながります。薬品がかかったとき色がつけばわかりやすいですし、炎から身を守ったりもします。実験と向き合う姿勢として安全管理もきちんと身につけてもらいます。

 

−−薬品や実験器具を扱う際の安全管理はどのように行なっているのですか?


広永:「しつけ」というとおこがましいですが、先生の話を聞くときはきちんといすに座る、あるいは、薬品や危ないものを使うときは立って実験する、ということも含めて安全管理としています。

低学年のうちは先生に言われたからやっていますが、なぜそうするのかは学年が上がってくればわかるようになりますし、小さいうちからやっていると、いつのまにか習慣になって、自然と安全な立ち居振る舞いが身についてしまいます。

あとは集中することですね。一人ひとりが全員実験をします。傍観者はいません。だれかが実験をして、まわりは見ていて記録係になるということは一切ないです。それでは本人がおもしろくないですから。

そして、本格的な実験器具を使っていることもポイントです。本物を使うから大事にしますし、取り扱いにも注意をはらうので、結果的には安全につながるんです。

 

−−そういう体験をクラスの友だちと共有することで育つ力があるのではないでしょうか。


小学校低学年クラスの実習風景

そうですね、実験をしながら協力したり、自分の意見を話したりして、人とコミュニケーションをとることによって「あの人はこういう考え方や仮説を持ったんだ」と鏡のように自分を見ることができますので、実験を通じて社会性も身につけて欲しいと思います。

 

−−近ごろアクティブラーニングという言葉をよく聞きますが、すでに実践していたわけですね。

広永:そうですね。アクティブラーニングは、お互いの考え方を見て自分自身がどういう立ち位置にいくべきかがわかり、協力することによってどういうことができるのかがわかるので学習の相乗効果はだいぶ高くなります。

 

−−夏休みには宿泊をともなう国内外での野外実習コースがありますが、どんなねらいや教育効果があるのですか?

広永:実験室の中でできることは限られていますし、どうしても物理と化学の内容が多くなります。そこで野外実習では化石を掘ったり、カヌーを体験したり、望遠鏡で天体を見たり、そういった野外でしかできない本格的なフィールドワークを通して本物を体験させようというのがねらいです。日常生活とはちがった大自然のなかで体感することは、自然科学への興味や関心をより大きなものにふくらませてくれます。


熱気球に搭乗できる野外実習も

また、教室や学年が異なる仲間と集団生活をすることで、ルールを守る大切さ、協調性、社会性を身につけていきます。

 

子どもたちが生き生きと取り組む姿が見えるようですね。次回は、2016年10月に設立されたプログラミング教育「プロ・テック倶楽部」の設立の経緯や学びについてお話をお聞きします。

第1回 実験に特化した科学教育でどんな子どもに育って欲しいのか
第2回 子どもの力を伸ばす、科学実験の教育効果
第3回 プログラミング「で」なにを学ぶのか
第4回 家庭で「科学する力」を育てるために

梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。