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科学教育で子どもの創造性と社会性をはぐくむ サイエンス倶楽部第3回(全4回)

第3回 プログラミング「で」なにを学ぶのか

サイエンス倶楽部は2016年10月、あらたにプログラミング教育を行なう「プロ・テック倶楽部」を設立しました。サイエンス倶楽部がめざすプログラミング教育とは、どのような学びなのでしょうか。

−−設立してまだ間もないですが「プロ・テック倶楽部」の評判はいかがですか?

広永:おかげさまで好評です。1カ月で教室がいっぱいになってしまい、増設も検討しようかという状況です。


プロ・テック倶楽部の実習風景

−−それは素晴らしいですね。なぜこのタイミングでプログラミング教室を立ち上げたのでしょうか。

広永:わたしたちの暮らしはもはやコンピュータがなくては成り立ちません。ICT技術や人工知能などがさまざまに発展してきていますが、これからを生きる子どもたちは、自然科学の一部分としてのコンピュータとともに生活していくことになります。プロ・テック倶楽部は、単にプログラミングスキルを持った人材を育てることが目的ではありません。プログラムを学ぶのでなく、プログラム「で」学ぶことを目的としています。

最近の子どもたちはデジタルに強くて、Aの地点からBの地点にパッとぶ能力がとても高いんです。本当はAとBの間にはプロセスがあるのですが、デジタルはそこをあまり考えなくても答えが出るようにできています。便利な反面、プロセスを経験していないことによって、BからAに戻ろうとしたときには問題が生じます。どこで失敗したのか、なにがいけなかったのかがわかっていないと、うまくいかないときに戻れなくなってしまうのです。

プロセスを大切にする、それはアルゴリズムという思考法を学ぶことにほかなりません。

※アルゴリズムとは問題を解いたり、課題を解決したりするときの「やり方」のこと。

−−アルゴリズムという思考法をプログラミングで学ぶことにはどんな教育効果があるのですか?


広永:プログラミングという手法の最も大切なところは、思考プロセスをつくるというところです。まず課題がなんなのか、なにが問題でどうしたいのか、解決にすすむためにはどうすればいいだろうかと考えるところにアルゴリズムとフローチャートが出てくるわけです。

自分がこうしたいと思って、それを実現するためにはどうしたらいいのかという考え方をきちんと効率的に組めるのがアルゴリズム。そしてフローチャートは出発地点から到着までの思考の流れの検証なんです。

プロ・テック倶楽部の実習ではフローチャートを作成し、どのようにすればうまくいくかを順序立てて考え、その上でプログラミングを行ないます。そのなかで自然に課題感を持てる考え方が育ちます。

たとえば、大人は車を洗うときに、タイヤから洗う人はいませんよね。先にタイヤを洗っても、上から汚れが落ちてきてまた汚れてしまいますから。だから上から洗っていって最後にタイヤをきれいにして仕上げるわけですが、それは課題感を持って考えているからです。

−−なるほど。

どんな場合でも、そういう考え方ができるようにしておかなければいけない、これがサイエンス倶楽部のプログラミング教室が絶対的に大切にしていることです。使っているテキストでも、プログラムをパソコンに打ちこむことが主ではなくて、フローチャートを検討しながらつくることを一番大切にしています。


−−まさに「生きる力」ですね。

そうなんですよ。何が本質的に大切なのかというところで筋を通さないと、サイエンス倶楽部が創造したプログラミング教育として恥ずかしいですから。絶対的に大切なのは思考でそれはアルゴリズムなんだということを体感し、それをきちんとできるようになって、将来社会に出たときに大きく力を発揮できるようになって欲しい。それが「プロ・テック倶楽部」の願いですね。


アルゴリズムで生き方を学ぶ、目からウロコが落ちるようなお話でした。

最終回となる次回は、家庭で「科学する力」を育てるために、保護者が子どもとどのようにかかわりサポートすればよいかをお聞きします。

第1回 実験に特化した科学教育でどんな子どもに育って欲しいのか
第2回 子どもの力を伸ばす、科学実験の教育効果
第3回 プログラミング「で」なにを学ぶのか
第4回 家庭で「科学する力」を育てるために

梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。