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科学教育で子どもの創造性と社会性をはぐくむ サイエンス倶楽部第4回(全4回)


第4回 家庭で「科学する力」を育てるために

前回はサイエンス倶楽部がめざすプログラミング教育についてお話をうかがいました。最終回となる今回は、家庭で「科学する力」を育てるための保護者のかかわり方についてお聞きします。

−−保護者のなかには理系的な考え方が苦手な人もいると思いますが、そのような家庭の子どもでも、科学的な思考を持つことは可能でしょうか?

広永:もちろん大丈夫です(笑)。いろいろなお子さんがサイエンス倶楽部に来ています。自分は科学に携わっていないけれど、この子には科学をさせたい、といって保護者が連れてくる子どももいますが、子どもには必ず科学の力が育っていきます。


幼児クラスの実習風景

わたしが最近気になっているのは、自分が試さないで子どもにだけやらせる保護者が増えていることです。

子どもが虫を見つけて「これなに?」と言っても、遠くから見て「さあ……」って言うような。バッタでもチョウでもいいので、まず保護者がとってみましょうよ。子どもには経験値がないので、安全なんだよ、こうやって持てば大丈夫なんだよ、ということを積極的にやってみせて欲しいと思います。

−−本当にそうですね。では、保護者の科学に対する知識が不十分で、子どもに科学のことを助言したり話したりすることがむずかしいという場合はどうしたらよいでしょうか。

広永:家庭でできる最良の方法があります。それは、子どもが「なんで?」と聞いてきたら、保護者の方が「なんでだろうね」と答えてあげることです。

「なんで?」と聞いてくるとき、子どもは科学のとびらを開けようとしています。そのときに「そんなこと知らない」とか「あとにして」と対応し続けてしまうと、子どもの科学の芽をつぶしてしまいます。

まずは「そうだね」といっしょに思ってあげてください。「どうしてだろうね」「じゃあ、ちょっといっしょに考えようか」という会話があるかどうかが大切です。可能であれば、いっしょに図書館へ行ったり、ネットで調べてみたりして親子で発見や知識を共有する時間をつくってあげて欲しいですね。


サイエンス倶楽部本部教室の廊下。子どもの知的好奇心を刺激するさまざまなしかけが展示されている

−−「科学する力」を育てるために家庭で保護者が心がけるべき姿勢やポイントについてアドバイスをお願いします。

広永:家庭環境はとても大切です。ちょっと考えてみましょう。子どもにとって、学校以外で最も長い時間を過ごしている場所はどこでしょうか。活動の中心となる時間帯と場所がどこかを冷静に考えてみると、家庭のリビングですよね。つまりリビングにあるものが、彼らの経験値として一番大事なものなんです。

いま、リビングのテーブルに砂糖と塩が置いてあるとしましょう。どちらも白いけれど、どちらが砂糖か塩か、たぶん見ただけではわからないですよね。そこで、なめてみると砂糖か塩かがわかりますが、そのときに「この白いものって、なにでできていると思う?」という問いかけがあれば、科学になるんです。親が問いかけないかぎり、子どもでは経験値が少なすぎて「これがなにでできているか」を知ろうとするところまで思考が行き着かないんです。

砂糖ってなにからできるんだろう、塩ってどこからきているんだろう、ということをいっしょになって考えたり、本で調べたりして経験値が積み重なっていくのにリビングは一番いい場所なんですよ。家庭のなかの環境を上手に使うことによって、科学の芽が育ちます


まずは、保護者とのやりとりのなかで、彼らの考え方をちゃんとみとめてあげる、ほめてあげる、いっしょになにかしら経験をしてあげる、それから場所とモノを有効に使ってあげる。家庭のなかでそれらがきちんとできてくると、ものごとに自然と興味関心がわいて、科学する力が育ってくるのだと思います。


「科学する力」を育てるためには日常生活での保護者の姿勢が大切なのですね。広永さん、鈴木さん、どうもありがとうございました。

第1回 実験に特化した科学教育でどんな子どもに育って欲しいのか
第2回 子どもの力を伸ばす、科学実験の教育効果
第3回 プログラミング「で」なにを学ぶのか
第4回 家庭で「科学する力」を育てるために

梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。