AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素

子どもの頃の体験が、大人になってからのやる気にも影響

子どもの頃の体験が、大人になってからのやる気にも影響

子どもの頃の体験が多いほど、学歴や年収も高い

お子さんに、リアルな体験をさせていますか? ここでいう体験とは、直接自然や人・社会にかかわる活動のことです。スマホなどIT 機器が発達して便利になった一方で、リアルな体験をする機会が減っているいまの子どもたち。子どもの頃に自然体験や友だちとの遊び、地域活動などの生活体験、お手伝いをしている人ほど、自己肯定感や、「経験したことのないことには何でもチャレンジしてみたい!」といった意欲・関心が高く、しかも学歴や年収も高いという調査結果があります。


「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」報告書 第2章 調査研究結果の概要 p18(国立青少年教育振興機構)

これは、国立青少年教育振興機構が幼児期から青年期までの年齢ごとの多様な体験と、それを通じて得られる力の関係を調べた結果です※1

調査では、子どもの頃の「自然体験」、「動植物とのかかわり」、「友だちとの遊び」、「地域活動」、「家族行事」、「お手伝い」といった6つの体験と、大人になってからの「自尊感情」、「共生感」、「意欲・関心」、「規範意識」、「人間関係能力」、「職業意識」、「文化的作法・教養」といった7つの「体験の力」との相関を見ています。

自然体験は人間関係能力を育て、地域活動は意欲を引き出す

調査の結果を細かく見ていくと、子どもの頃「海や川で泳いだこと。夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見たこと」など、豊かな自然体験をした人ほど、「人前でも緊張せずに自己紹介ができる。けんかをした友だちを仲直りさせることができる。初めて会った人とでもすぐに話ができる」といった人間関係能力が高くなっています


「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」報告書 第4章 成人調査基礎集計結果 p97〔「自然体験」と「人間関係能力」の関係〕(国立青少年教育振興機構)

また、子どもの頃「近所の小さい子どもと遊んであげたこと。祭りや地域清掃に参加したこと」など地域活動の体験をした人ほど、「なんでも最後までやり遂げたい。経験したことのないことには何でもチャレンジしてみたい。いろいろな国に行ってみたい」といった意欲・関心が高いという相関関係が見られます。


「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」報告書 第4章 成人調査基礎集計結果 p101〔「地域活動」と「意欲・関心」の関係〕(国立青少年教育振興機構)

個別の活動とそれによって得られるとされる力は一見関係がなさそうにも思えます。しかし、考えてみれば、多くの人とかかわることで異なる年齢の人とのコミュニケーション力も身につくでしょうし、視野が広がるので、経験したことのないことにもチャレンジしてみたくなるというのはうなずけます。
こうした体験を積み重ねていくことで、少しずつ自分に自信がついて、自尊心や自立心、主体性や協調性といった社会を生き抜くための基礎的な能力が養われることになるのです。
そして、いろいろなことにチャレンジしようという意欲や関心が高まった結果、最終学歴が高くなり、年収も高いという結果につながるのかもしれません。

しかし、残念なことに、体験の機会は年々減っているようです。同じ調査では、とくに自然体験や友だちとの遊びの経験が、若い人ほど少なくなっています
身近に自然に触れる機会や安心して遊べる環境がなくなっているなか、子どもたちに体験活動をさせるのはなかなか難しいかもしれませんが、将来にこれほどまでにプラスの影響があるなら、できるだけ機会を作ってあげたいですね。

時期にあった体験が子どもを伸ばす

では、いつどんな体験をさせたら良いのでしょうか。

同じ調査で、小学校低学年まではとくに「友だちとの遊び」と「動植物とのかかわり」が、小学校高学年から中学生までは「地域活動」「家族行事」「家事手伝い」などが、7つの「体験の力」に関係しているという結果が出ています。


「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」報告書 第2章 調査研究結果の概要 10p 年齢期別「体験の力」との関係が見られる体験

この結果は、発達脳科学と照らし合わせてみても合点がいきます。

というのも、このコーナーで以前ご紹介したように※2、脳は
1)からだの脳(大脳辺縁系、脳幹)

(2
)おりこうさん脳(大脳皮質、小脳)

(3
)こころの脳(大脳皮質の前頭葉)

の順番で発達します。小学校低学年は、からだの脳が発達し、じょじょにおりこうさん脳が育ち始める時期です。そして、がんばり抜く力など非認知能力が育つ時期とも言われています。

また、この時期には遊びを通して五感を刺激する体験が大切だと言われていますから、動植物とのかかわりや友だちとのかかわりが大切という調査結果にも通じますね。
そして、小学校高学年から中学生までは、おりこうさん脳とこころの脳がじっくり育つ時期。家でのお手伝いや地域の行事に参加することで、社会の仕組みや役割を理解し、規範意識を学ぶのにちょうどいい時期と言えるでしょう。

子どもの育ちに寄り添いながら、さまざまな体験の機会を与えてあげたいものです。


《参考資料》

※1
「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」報告書(国立青少年教育振興機構)
第2章 調査研究結果の概要
第4章 成人調査基礎集計結果

※2 AI時代を生き抜くために~「失敗力」が育つ6つの栄養素
第2回 「キレる子どもたちの原因は眠りにあり」


中曽根陽子
中曽根陽子
教育ジャーナリスト

教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。子育て中のママたちの絶大な人気を誇るロングセラー『あそび場シリーズ』の仕掛人でもある。 “お母さんと子ども達の笑顔のために”をコンセプトに数多くの本をプロデュース。近著に『1歩先行く中学受験成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などがある。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザ インする力を育てる学びの場「Mother Quest 」も主宰している。公式サイトhttp://www.waiwainet.com/