学習指導要領の改訂で学校教育が変わる

第36回 実生活の課題を探究し、将来のキャリアにつなげる

第36回 実生活の課題を探究し、将来のキャリアにつなげる

今回は、高等学校の総合的な学習の時間(以下「総合」という。)における次期学習指導要領の改訂のポイントを紹介します。

高等学校で探究型学習が十分に実施されていない現実

次期学習指導要領は、高等学校における「総合」をさらに充実させようとしています。生徒が地域の活動に参画し、地域の活性化につながるような事例が生まれている一方で、「総合」でめざしている探究型学習を実現できていない学校もあるからです。小学校・中学校での取組みの成果のうえに高等学校にふさわしい実践をめざしています。

高等学校の「総合」の名称を「総合的な探究の時間」と変更する案も検討されています。探究型学習を押し進めようとする意思がこめられています。

次期学習指導要領は、「探究の見方・考え方」※1を働かせて課題を解決し、自分の生き方を考えながら、以下のような資質・能力を育成しようとしています。

  • 課題の解決に必要な知識や技能を身につけ、探究の意義や価値を理解する。
  • 実社会や実生活のなかから問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現する力を育成する。
  • 主体的・協同的(協働的)に課題を探究し、自分や他者のいいところを生かしながら、新たな価値の創造やよりよい社会の実現に努める態度を育てる。

※1 各教科等の「見方・考え方」を組み合わせながら、広範な事象を多様な角度からふかんしてとらえ、実社会や実生活や自分自身の生き方と関連づけて問い続けること。

実社会の課題を探究し、キャリア形成につなげる

次期学習指導要領では、「総合」で育成をめざす資質・能力について、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力・人間性等」の3つの柱で整理しています。


「高等学校総合的な学習の時間において育成を目指す資質・能力の整理」 (出典:中央教育審議会「答申 別添18-1」をもとに作成)

とくに高等学校では、「学びに向かう力・人間性等」に関して、自己のあり方や生き方に向き合い、キャリア形成と関連づけようとしています。つまり、実社会や実生活から見いだした課題を探究しながら、自分が得意なことを見つけ、将来なにをしたいのか、どんな仕事をするのに向いているのかに気づき、キャリアの方向性を見つけることにつなげます。また、学んだことを生かしどのように社会に還元するのかを考えさせようとしています。

地域の団体と連携して「総合」を充実させる

高等学校の「総合」では、国際情勢、情報、環境、福祉・健康などの教科横断的な問題をはじめ地域の人々の暮らし、地域の伝統文化、歴史など、テーマを広く設けています。「総合」では体験活動にも取り組んでいます。たとえば文化・芸術体験、ボランティア活動、就業体験、自然体験、ものづくり生産体験などを行なっています。

そうした活動を通じて、生徒は正解のないテーマに向き合い、①課題の設定⇒②情報の収集⇒③整理・分析⇒④まとめ・表現の一連の探究のプロセスを体験します。

生徒が、実際に観光客向けに地域の観光地のガイドをつとめた事例、地域の活性化プロジェクトに参画し、アイデアを市長に提案した事例、地域の野菜を使ってジャムなどの製品を開発し販売した事例などがあります。

このような活動を実践するために、地域のNPO法人や地域の文化を継承している団体や企業、地域ボランティアなどの協力をあおぐことがあります。各学校が、地域の人材とうまく連携することが求められます。

また、保護者や地域の人も学校運営に参加して、「開かれた学校」を実現することが求められています。コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)※2を利用して、学校と地域が連携するのも有効です。

※2 学校と保護者や地域の人たちがともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させながら協働して子どもたちの成長を支えるしくみ。

次期学習指導要領は、これまでの実践事例、スーパーサイエンスハイスクールやスーパーグローバルハイスクールでの探究学習の事例などを参考にしながら、「総合」をより充実させようとしています。

高等学校での探究型学習を生涯学習につなげる

高校生が地域や世界の課題を探究する経験は、将来のキャリア形成につながり、生涯にわたって学び続ける姿勢を築く土台になります。また社会に参画し、社会貢献しようという気持ちを抱くきっかけにもなります。高等学校での実践事例を蓄積し、各学校が情報を共有し、学校教育での集大成としてほしいものです。

藤田由美子(ふじたゆみこ)
藤田由美子(ふじたゆみこ)
株式会社ユーミックス代表取締役社長。1993年の創業以来、コンピューターリテラシー教育を数多く手がける。
「生きる力」「社会力」の育成をめざして、子ども向けICT教育のカリキュラム作りにも力をいれており、大手携帯電話会社のケータイ安全教室の企画立ち上げ、ネット安全利用推進プログラムの開発など、実績多数。