学習指導要領の改訂で学校教育が変わる

第18回 理科の学びをイノベーション、課題解決につなげる

第18回 理科の学びをイノベーション、課題解決につなげる

今回は、小学校と中学校の理科における次期学習指導要領の考え方を紹介します。

日本の子どもたちの理科・科学の力は世界トップクラス

日本の15歳の生徒の理科および科学的リテラシーは、世界のトップクラスだということをご存じでしたか? 「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)」で、科学的リテラシーはOECD加盟国35カ国中で第1位、調査に参加した72カ国・地域の中では第2位です。

また、2015年に行われた国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)(注1)では、図1のように平均得点が伸びています。平均得点の順位も小学生では第3位、中学生では第2位です。


図1「TIMSS2015平均得点の推移」
出典:「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント」 文部科学省

(注1)
国際教育到達度評価学会(IEA)が、児童生徒の算数・数学、理科の到達度を国際的な尺度によって測定し、児童生徒の学習環境等との関係を明らかにするために実施している国際調査。

 

一方、このような明るい調査結果とは裏腹に、課題も浮き彫りになっています。

中学校での理科の授業が課題

TIMSS2015によると、小学校では「理科は楽しい」と回答した児童が約90%で、国際平均を上回っています(図2)。

しかし、中学校では「理科は楽しい」「理科は得意だ」「理科を勉強すると、日常生活に役立つ」「将来、自分が望む仕事につくために、理科で良い成績をとる必要がある」(図3)と、肯定的に回答した生徒の割合は、増加しているものの、いまだに国際平均を下回っています。

中学生になると理科を学ぶ意欲が低下しており、中学校での理科の授業に課題がありそうです。


図2「各質問項目(理科は楽しい)の肯定的回答の変化」
出典:「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント」文部科学省

図3「各質問項目(将来、自分が望む仕事につくために、理科で良い成績をとる必要がある)の肯定的回答の変化」
出典:「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント」文部科学省

主体的・対話的で深い学びを充実させる

理科で育成を目指す資質・能力について、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力・人間性等」の3つの柱にそって整理すると、図4のようになります。


図4「理科において育成を目指す資質・能力の整理」
出典:「答申別紙」文部科学省

次期学習指導要領の答申は「観察・実験の結果などを整理・分析した上で、解釈・考察し、説明すること」などの資質・能力に課題が見られると指摘しています。

つまり、観察・実験の結果などを分析し、自分自身で考えたことをクラスやグループの中で説明するといった主体的・対話的で深い学びが十分にできていないということです。とくに中学校では、知識を得る学習が中心になっていて、「理科は楽しい」「理科は得意だ」といった気持ちが薄れてしまっていることが考えられます。

理科はイノベーションを生む原動力

「理科は楽しい」と感じるようになるには、自然の現象が起こるのはなぜだろう、いま起こっているさまざまな問題を科学的に解決するにはどうしたらいいのだろうといったように、探求的な学習を掘り下げ、子どもたちの科学的な関心を呼び起こすことがポイントになるとわたしは考えます。

気候の温暖化などの環境問題、ガンなどの病気の解明、ICTの進化など、理科はわたしたちの生活に密接に関係しています。既存の農業や水産業、サービス業に新しい技術をとり入れることによっても、わたしたちの生活は一変します。

また宇宙や人体など未知の世界を解明することにより、新しい発見が生まれていくでしょう。新しい世界を切り拓くことが、イノベーションを生み出すのです。ノーベル賞を受賞した科学者たちは、だれも手がけなかったことに挑んだチャレンジャーです。子どもたちも、理科の学習を通して未来に夢をはせながら新しいことにチャレンジしてほしいものです。

学校以外にも、テレビの科学番組(NHKやイギリスのBBC放送など)やビデオ教材、企業や自治体などの科学ワークショップ、e-LearningのMOOC(注2)やJMOOC Juniorなど、理科を学ぶチャンスは数多くあります。保護者のみなさんは、ぜひお子さんといっしょに取り組み、未知の世界への扉をあけるサポートをしてあげてください。

※注2
インターネット上で無料で受講できる講座。日本でもJMOOC(日本オープンオンライン教育推進協議会)が創設され、さまざまな大学や企業が無償で講座を提供している。JMOOC Juniorでも子ども向けに講座を開設している。

藤田由美子(ふじたゆみこ)
藤田由美子(ふじたゆみこ)
株式会社ユーミックス代表取締役社長。1993年の創業以来、コンピューターリテラシー教育を数多く手がける。
「生きる力」「社会力」の育成をめざして、子ども向けICT教育のカリキュラム作りにも力をいれており、大手携帯電話会社のケータイ安全教室の企画立ち上げ、ネット安全利用推進プログラムの開発など、実績多数。