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現代版 “てらこや”で地域ぐるみの教育を NPO法人全国てらこやネットワークインタビュー 第2回(全4回)

NPO法人全国てらこやネットワーク
精神科医の森下一氏の提唱により、子どもたちが困難な状況におちいらない未然予防の取り組みとして2003年鎌倉でてらこや活動がスタートした。子どもの居場所づくりや体験活動の支援を行なうてらこやの活動は全国に広がり、2010年内閣府認証NPO法人全国てらこやネットワークが発足。現在では全国40カ所のてらこやで実施されている活動を結び、地域教育の再興によって子どもや若者、地域の明るい未来をつくることをめざして活動している。2016年、グッドデザイン賞受賞。同年、NPO法人鎌倉てらこやと共同で子供未来応援基金採択団体に選ばれる。

第2回 全国に広がるてらこやの活動

――てらこやには、全国でどれくらいの子どもが参加しているのですか?


村瀬:2016年の1年間、てらこやに参加してくれた子どもは全国で約11000名です。てらこやでは体験活動のことを事業と言っているのですが、2016年のてらこやの事業回数は1450回になります。学童保育への学生ボランティアの派遣も行なっています。

てらこや活動は全国に広がっていて、いま全国40カ所で展開しています。それぞれ地域ごとに異なった組織体で、NPO法人と任意団体が独自のてらこや事業を行なっていて、それをわたしたち全国てらこやネットワークが組織化しています。2016年には全国てらこやネットワークの取り組みがグッドデザイン賞(地域、コミュニティづくり/社会貢献活動)を受賞しました。


大西:てらこやネットワークでは、地域の独自性をとても大事にしていますので、その地域の自然や歴史、文化をいかした活動が多くなっています。

たとえば新潟や北海道の旭川では雪のなかで雪合戦や宝探しなどの外遊びを行なっていますし、広島ではもみじまんじゅうづくりをしたりします。


ふるさと意識、郷土意識って本当に大切なんです。てらこやは地域性やその地域の良さをきちんと子どもにわかってもらうことを一つの柱としています。

たとえば、小豆島でもてらこやをやっているのですが、小豆島には大学がないので、島を出ていってしまってそれきりになってしまう子もいるんです。子どもたちに将来小豆島に戻ってきてもらいたい、そのために地元の良さをしっかりと伝えるプログラムを作っていこうとしています。これを、鮭が生まれた川に戻って産卵することになぞらえて「鮭プロジェクト」と言ってるんです。
企画と運営は大学生が行なうのですが、地元に大学生がいないので、全国のてらこやから学生を募って行ないます。佐渡のてらこやにも同様のプログラムがあります。

――ちょっと変わった、珍しい活動はありますか?

大西:燕三条のてらこやつばさでは「はらぺこ塾」といって、断食体験を行なっています。看護士などをつけた体制のもとで、1泊2日、食事をとらずに空腹感を体験する取り組みです。2017年には11回目のはらぺこ塾を開催しました。

村瀬:はらぺこ塾の最後には、命あるものをいただくということを具体的に感じるために、鶏のと殺体験を行ない、その鶏肉を使って保護者のみなさんのために鶏の雑炊を作ります。子どもたちからは、「ニワトリは死にたくて死んだわけではないから、スーパーにも売っている野菜や肉などにも感謝の気持ちをもって、おいしく食べ物を食べたいと思いました」などの感想が寄せられています。


――それは強烈な体験ですね。

大西:ふるさと意識ということで、近年とても興味深いことがあります。転勤で海外にいる家族が夏休みに日本に一時帰国して、子どもに日本の文化を体験させたいということで、お寺の合宿に参加するケースが増えているんです。
究極の日本の文化のなかで夏休みを過ごして日本のコミュニティを実体験できる場として、子どもたちも保護者のみなさんもとても感動してくれます。

村瀬:これは本当にすごいことだと感じています。海外は送り迎えの文化ですから。海外で生活している人がこの合宿で子どもを他人に預けて手放すというのは、それだけわたしたちが信頼してもらえているしるしかなとうれしく思っています。

てらこやの活動の広がりに驚きました。地域の独自性をいかしたさまざまなプログラムはとても魅力的です。次回はてらこや事業の中心的存在だという大学生がどんなことをしているのか、子どもたちとどんなふうにかかわっているのかを聞きます。

第1回 現代によみがえる“てらこや”
第2回 全国に広がるてらこやの活動
第3回 てらこやで交わる、大学生と子どもたち
第4回 子どもたちの成長のために、てらこやと保護者ができること

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)
株式会社コドモット代表取締役社長。
NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。