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尾木ママに聞く! 子どもの生き抜くチカラを育むために家庭でできる事とは?

尾木ママに聞く! 子どもの生き抜くチカラを育むために家庭でできる事とは?

子どもたちのキャリア教育が学校教育に登場してから、まだ15年ほど。保護者の中には「キャリア教育って何?」「進路指導とはちがうの?」「親はいったい何をすればいいの?」など、疑問を持ち不安な人も多いでしょう。
そこでいま、なぜキャリア教育が必要なのか、子どもの将来のために保護者は一体何をすべきなのか、「尾木ママ」の愛称でお馴染みの教育評論家・尾木直樹さんにお話しを聞きました。『学研キッズネット』の動画でわかるオンライン社会科見学「シゴトのトビラ」で「おしごとキャプテン」を務めるタイチお兄さんから尾木さんへの質問や、シゴトのトビラへ込めた想いを交えながらお届けします。

「ポスト・コロナ」に相応しいキャリア教育とは?

尾木さんによると、キャリア教育が学校教育で推進されるようになったのは、2006年に改正された教育基本法に「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと」と規定された影響もあるそうです。これを実現するために、教育現場では、職業体験学習のほか、最近では学びのプロセスを子ども自身が記録して後から振り返ることのできる教材「キャリア・パスポート」を導入するなどして、小学校から中学校、高等学校までの一貫した教育を目指してきました。

いま、こうした従来のキャリア教育の方法が大きく変わるかもしれない「大改革の時期にある」と尾木さんは見ています。きっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大(以下、コロナ禍)です。

コロナ禍は、2020年の一斉休校をはじめ、その後の分散登校や夏休みの短縮、オンライン授業の導入など、子どもの教育環境に大きな影響を与えました。リアルな社会科見学や職業体験の機会がなくなってしまった学校も多いでしょう。そのなかでキャリア教育についても、コロナ禍以前とは異なる展開を考える必要が出てきました。

同時にコロナ禍は「働き方の複雑化や多様化など保護者の仕事環境にも大きな変化をもたらしている」と尾木さんは指摘します。

『リモートワークを導入する企業が増え、子どもがお父さんやお母さんの働く姿を目にする機会が多くなりました。オンライン会議や電話できびきびと部下に指示を出したり、意見を述べたりする姿を見て「カッコいい」と感じる場面もあったでしょう。自分もああなりたいと憧れる子どもが増えたのではないでしょうか』

尾木ママ

保護者の仕事に触れることは、最も身近な“社会科見学”です。仕事・働くことへの関心が高まるかもしれませんし、これまで憧れていた職業以外に興味が広がるかもしれません。コロナ禍で学校のキャリア教育が制限される一方で、家庭におけるキャリア教育のチャンスが生まれたとも言えるでしょう。子どもが抱いたシゴト・働くことへの興味を新たな学びにつなげ、家庭でも充実したキャリア教育を実現するために何ができるのか見ていきましょう。

家庭でも取り組めるキャリア教育の手段として学研キッズネットでは、「動画でわかるオンライン社会科見学」と銘打った「シゴトのトビラ」を提案しています。同シリーズでは、ある職業の人に「先生」として出演してもらい、先生が働く仕事現場をのぞいたり、先生や周りで働く人から経歴や仕事への思いを聞いたりします。ふだんは見られない仕事の舞台裏をのぞけるなど、従来の社会科見学から一歩踏み込んだ内容を盛り込んだのが特徴です。

その点について、尾木さんは「とても実践的で、ポスト・コロナ時代に相応しい学び方ができるわ」と評価。「お父さんやお母さんにも『なるほどなあ』と思わせ、お家でも子どものためにキャリア教育を実践してみようと思わせるきっかけ作りにもいいわね」と、期待を語ってくれました。

「グローバル化」「AI」が教育を変える

尾木さんによると、キャリア教育に限らず、コロナ禍の少し前から教育全体が変わってきているとのこと。その理由は「グローバル化の進展」「人工知能(AI)の登場」の2つです。グローバル化により、世界全体の繁栄や持続可能性といった視点で考えられる人材を育てる重要性が増しました。そしてAIの登場は、知識や経験の“積み重ね”という従来の教育の土台を崩すもの。知識の積み重ねによる仕事や定型的な作業はAIに取って代わられる可能性があり、尾木さんは「人間には、AIが持たない感情・感性を発揮することがより求められていきます」と語ります。

そんな中、経済協力機構(OECD)のプロジェクト「Education2030」(2015年~)は、2018年に「OECD Learning Framework 2030」を取りまとめました。同枠組みでは「新たな価値を創造する力」「対立やジレンマを克服する力」「責任ある行動をとる力」の育成が必要だと提言しています。

その土台となるのは、「生き抜く力」と、尾木さんは解説します。

『Education2030が提言する学力の第1が「新たな価値を想像する力」。それも、個人ではなくチームでつくり上げる力が大事だとしています。それに基づいて既に、私立中学・高等学校の入試問題がHQ(Human Quotient、人間力)を問うものになりつつあります。海外ではさらに進んでいて、STEAM教育(※)に則ってアートを重視。米国や英国の大学では、小説を書かせたり、絵を描かせたりして、アートをつくり上げる情熱・情念がどれくらい豊かかを測る試験があります』

また、文部科学省の国立教育政策研究所は、キャリア教育を通して「基礎的・汎用的能力」を育成すべきだとしており、基礎的・汎用的能力を構成する4つの能力として、「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」を挙げます。つまり、キャリア教育は「他者と協力して社会とのつながりを築きながら、主体的に行動し、さまざまな課題を発見・解決する能力を養うこと、さらに、働くことの意義を理解し、主体的にキャリアを形成できる能力を育てることを目指しているわけです」(尾木さん)。

『従来のキャリア教育は「school to work」。つまり既存の仕事のあり方に適応していくことを目指していましたが、そういう時代は終わり。今後は自立・協同して切り拓いていく主体的な力が求められます』

※ STEAM教育:科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)といった教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育

“好き”を共有する仲間になりましょう

では、子どもの「生き抜く力」を育てるには、保護者は何ができるのでしょうか。尾木さんは「夢を実現するための環境を整えましょう」とアドバイスします。

『子どもの夢に耳を傾け、その子が何に興味があるのか、どんな特性があるのかを大事にして育てるのが親の役割です。子どもが遊ぶ様子から「空間認識能力に長けているな」と感じた親御さんが子どもを算数教室に通わせたら、数学的な能力が伸びた、といった例があります。将棋の藤井聡太三冠の場合は、聡太さんの集中力に感心したおばあさんが将棋を与えたら力をつけていった、という話が有名ですね』

親の夢だからという理由で子どもにゴルフの英才教育を施す、というのではなく、あくまでも、子どもが好きなところを伸ばすことが大切。「好きこそものの上手なれ、ですよ」と、尾木さんはいいます。

『子どもを観察していれば自ずと、子どもが何を好きなのかが分かります。口出しをせずに、まずは2時間。それで分からなければ4時間、12時間、それでも分からないときは2~3日間、子どもをじっくり見るうちに、子どもが“好き”と感じる物事が見えてくるはずです』

子どもの“好き”を見抜いたら「仲間としての関係を築く」のが、次のステップと尾木さんは語ります。例えば、子どもが夜になると星を眺めているな、と気づいたら、天体望遠鏡を与えて、一緒に観測してみる。そうしているうちに親も楽しくなってきて、親子で宇宙・天文に関する検定の合格を目指す、といったイメージです。

子どもの“好き”を共有する中で、尾木さんは「子どもの自己決定を優先することを心がけましょう」とアドバイス。さまざまな場面で「自分で決める」体験を繰り返すことで、主体性が育まれるといいます。それは、普段の生活でも実践できます。

『例えば、新しい靴を履いて登校しようとする子どもに向かって「今日は雨だからレインシューズを履いていきなさい」と言うのではなく「午後から雨になるから、靴が泥だらけになってしまうわよ」と伝えてみましょう。その情報を基に、その靴を履いて行くかどうかを決めるのは子ども自身です。その結果、雨が降らず靴も汚れなければ、子どもは「自分の決めたことは正しかった」と満足感を得られます。反対に、雨に降られて靴が濡れてしまったとき、親が決めた場合は「ママのせい」と責任を転嫁してしまいがちですが、自分で決めたことなら「仕方ない」と失敗を受け入れられる。自己決定には自己責任が伴うことを学べるという意味では、失敗することは成功体験より大きな力につながるのです』

靴を汚しては大変、とついつい「レインシューズを履いていきなさい!」と先廻りしてしまうのが親心というもの。けれども、子どもの自己肯定感を高めるためにも、時にはぐっと我慢することが必要なのです。

主体性を伸ばすキーワード=「どうしたいの?」

ここで、尾木さんがおすすめする、自己決定を促す問いかけを紹介しましょう。それは「どうしたいの?」。

「天気予報では雨が降ると言っていたけれど、あなたはどうしたいの?」「サッカー教室が楽しいみたいだけど、あなたはこれからどうしたい?」といった具合です。それに対して子どもは自ら考え、「汚したくないから、新しい靴を履くのはやめておこう」とか、「もっと上手になりたいから、サッカー教室に通う日数を増やしたい」といった結論を出していくのです。

さらに尾木さんは、「親子で過ごす全ての時間がキャリア教育」と話してくれました。

『例えば、料理を作っておいしそうに盛りつけるなど、あらゆることに子どもと共に取り組むことで、保護者は興味・関心を共有しつつ自分の経験を伝えていくことができます。こうした日常生活の全てがキャリア教育の土台になるのです』

学校教育にはできない家庭でのキャリア教育。「どうしたい?」と問いかけたり保護者自身の経験も伝えたりしながら、楽しく子どもの「生き抜く力」を育みたいですね。

子どもには、働くことの“幸せ”を伝えていくことも大事

『シゴトのトビラ』キャプテンのタイチお兄さん

学研キッズネットで展開しているオンライン社会科見学「シゴトのトビラ」シリーズを通して、キャプテンのタイチお兄さんは「世の中にはこんな仕事もあったんだ」「働いている人たちはこんな想いで仕事をしていたんだ」と知ることが多かったそうです。同シリーズを視聴する親子にとっても、それは同じはず。だからこそ「いままでは“仕事”と認識されていなかったものも含めて、世の中の色々な仕事を子どもたちに紹介したい」と、キャプテンは意気込みます。

「これからも働く人の幸福感を子どもたちに伝えてくださいね」

尾木さんも「大賛成」として、もう1つのアイデアを寄せてくれました。それは、仕事に対する新たな価値観の紹介です。

『いま、企業が副業を認める動きが加速しています。より先進的な例では、IT企業のサイボウズが、退職から6年間は復帰が可能という制度を設け、転職や留学など、いったん環境を変えて学びたいという社員のチャレンジを後押ししています。さまざまな経験を積んで力をつけて帰ってきてくれたら百人力だ、というのです。同社代表取締役社長の青野慶久さんは「これからの日本は“最終学歴社会”から“最新学習歴社会”に変わるべき」と言っていて、自身も学びを続けているそうですよ』

こうした「生涯、学習」という姿勢が「社会を見る目を持つ人材、新しい仕事を開発できる人材を育てることになる」と尾木さんは言います。キャプテンも「新しい価値観として、副業についても子どもたちに伝えたい」と構想をふくらませています。

AIが普及してグローバル化が進むポスト・コロナ時代、これまでにはない仕事が生まれるでしょう。「シゴトのトビラ」シリーズでさまざまな仕事に触れながら、これから生まれる新しい仕事をあれこれ想像するのも、面白そうです。「シゴトのトビラ」シリーズは「とにかく、明るい!」と、尾木さん。キャプテンが元気に伝える様子が印象的だったそうです。「働くことの楽しさや幸福感、働きがいが、見ている子どもにも伝わるから、ぜひ明るいレポートを続けてほしいですね」と、キャプテンにエールを送ってくれました。

お話を聞いた人:尾木ママ(尾木直樹)

尾木ママ

1947年・滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、私立海城高校、東京都公立中学校教師として、22年間子どもを主役とした創造的な教育を展開。 その後大学教員に転身して22年、合計44年間教壇に立つ。それらの成果は230冊を超える著書(監修含む)、DVD・ビデオソフト、映画類にま とめられている。2004年に法政大学キャリアデザイン学部教授に就任。2012年4月法政大学教職課程センター長・教授。定年退官後、現在は法政大学名誉教授。主宰する臨床教育研究所「虹」では、所長として現場に密着した調査・研究に取り組んでいる。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」「めざまし8」、Eテレ「ウワサの保護者会」、日本テレビ「真相報道バンキシャ」「シューイチ」等の多数の情報・バラエティ・ 教養番組やCMにも出演しており、「尾木ママ」の愛称で幼児からお年寄りにまで親しまれ、全国各地への講演活動にも精力的に取り組んでいる。

学研キッズネット編集部

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