雷はどのように落ちるの?
こたえ:
雷の正体は、積乱雲(入道雲)の中で発生した電気です。ふつう、雲がうかんでいる空気は電気を通さないのですが、雲の中にとどめておけないほど大量の電気がたまると、空気中を電気が通って地表まで届くのです。このように、雲から地表へ電気をにがす(放電する)現象を「落雷」とよびます。
では、なぜ、雲の中で電気が発生するのでしょうか。その電気は、どのように空気中を伝わって地面まで届くのでしょうか。雲の中で電気がつくられるところから、順を追ってみてみましょう。
(1)雲 の中 で電気 が発生 して「+」(プラス)と「-」(マイナス)に分 かれる
雲は、小さな水てき「雲つぶ」や氷のつぶ「氷晶」でできています(関連記事「雲は何からどのようにできるの?」)。雲が発達して積乱雲になると、氷晶が増えて空気といっしょに上下に激しく動き、氷晶どうしがぶつかり合って電気を帯びます。これを「電荷」といいます1)。
電気がたまってくると、雲の高い方から「+」「-」「+」の「三極構造」ができます。すると、雲の中では、この電荷のかたよりをなくそうとして、まんなかの層の「-」の電荷が下の方へ移動し、「+」の電気をなくしていきます(「中和」)2)。その後、「-」の電荷はさらに下へ、つまり地表へ向かいます。
(2)電荷 の通 り道 を探 す「ステップトリーダー」ができる
空気は電気を通しにくい性質のため、電気は一気に進むのではなく、進んでは止まり、また進んでは止まり、という動きををくり返し、通りやすい道を探しながら進んでいきます。これを「ステップトリーダー」(段階型前駆放電)とよびます。
ステップトリーダーは、約50m進むと30マイクロ秒~90マイクロ秒(0.00003~0.00009秒)止まり、また進みます3)。平均の速度は150km/秒ほどなので、雲の高さが地上から約3000mのとき、ステップトリーダーが地上へ接近するのにかかる時間は約0.02秒です。
(3)電荷 の“行 ったり来 たり”で、雲 の中 を中和 していく
ステップトリーダーが地表近くまで届くと、ステップトリーダーの先端と地表からの放電がつながり、地上から雲へ向かってプラスの電気が一気に流れる「リターンストローク」(帰還雷撃)が起きます。このステップトリーダーとリターンストロークのセットが、1つの落雷。電気の通り道の発光が「雷光」「稲妻」、雷の熱による空気の振動が「雷鳴」です(関連記事「なぜ、雷はジグザグに光るの?」「なぜ、雷はゴロゴロ鳴るの?」)。
ただし、ステップトリーダーとリターンストロークの“行ったり来たり”が1回起きただけでは、雲の中の電荷を中和しきれない場合があります。このときは、雲から地上へ向かって再び放電が始まります。
この2回目の放電では、すでに電気の通り道ができているため、「-」の電気は一気に地表へ向かいます。これを「ダートリーダー」(矢形前駆放電)といいます。ダートリーダーが地表にたどり着くと、またリターンストロークが起きます。落雷1回の時間は0.5秒~1秒ほどですが、電気の“行ったり来たり”は平均で3~4回、多いときは10回以上も起きています。
「落雷」という言葉の通り、雷は空から地表へ「落ちる」ものというイメージがあります。けれども実際は、下から上へ向かう雷もあるのです。
雷は、以下の4種類に分けられます4)。
①雲内の「-」の電荷からの放電が、「+」に帯電した地表へ向かう雷(上→下)
②地上の「+」の電荷からの放電が、雲の中の「-」の電荷へ向かう雷(下→上)
③雲の高い所、または底にある「+」の電荷からの放電が、「-」に帯電した地表へ向かう雷(上→下)
④地上の「-」の電荷からの放電が、雲の高い所にある「+」の電荷へ向かう雷(下→上)
①は、夏の落雷の約90%を占めます。その一方で②③④は、冬に多い雷です。また②は、鉄塔・風車・高層ビルなどの高い建物や山地でみられます。
参考 資料
1)荒木健太郎,津田紗矢佳『子供の化学サイエンスブックスNEXT 久本天気の関係を知って未来を予想してみよう 空を見るのが楽しくなる! 雲のしくみ』.2022年1月.誠文堂新光社
2)フランクリンジャパン「雷の知識」『雷とは?』:https://www.franklinjapan.jp/raiburari/knowledge/lightning/37/
3)音羽電機工業「技術情報 雷対策のポイント 雷放電現象」:https://www.otowadenki.co.jp/basic4/
4)小林文明『雷』.2020年6月.成山堂書店
監修者 :大山 光晴
1957