ノーベル化学賞に硤合憲三さん 生命の起源にせまる発見【子ども向け解説】
記者会見で笑顔を見せる東京理科大学名誉教授の硤合憲三さん=10月7日、東京都新宿区 朝日学生新聞社
フランスのアンリ・カガンさんと
アミノ酸などの化学物質には、右手と左手のように、そっくりでも同じ形ではなく対になっている二つの型があります。けれども生き物の体内にあるアミノ酸などは多くが一方の型で、どうしてそうなるのかは長年のなぞでした。
硤合さんは、初めに少し多かった型が、自ら反応を速める働きをしてどんどん増える「不斉自己触媒反応」を見つけました。「硤合反応」と呼ばれます。
受賞発表後、東京理科大学(東京都新宿区)で記者会見が開かれ、硤合さんは「大変うれしい」と笑顔を見せました。受賞によって、この研究の重要さを広く知ってほしいと期待をよせました。

解明まだまだ おもしろい
受賞の知らせは、買い物中に受けたスウェーデンからの電話でした。おどろいたかと聞かれると「自分で言うとおこがましいですが、受賞できても文句は言われないだろう、と思っていました」と会場を笑わせました。
研究で大切にしていることは、たくさんの実験です。「やってみないとわからないこともある」と硤合さん。
「この研究にはまだまだ解明されていないことも、おもしろいこともある」といい、すぐ応用できることだけではなく「(自然の原則や理論をとき明かす)基礎研究を評価してもらえたことがうれしい」とも話しました。
硤合憲三(そあい・けんそう)
化学者。1950年生まれ、広島県出身。東京大学大学院を修了。1981年から東京理科大学の理学部専任講師、1991年に教授となり、いまは名誉教授。2012年に紫綬褒章、25年に日本学士院賞を受けました
早実初等部の理科の先生が解説!

実験室でアミノ酸などの物質をつくろうとすると、ねらった物質は2種類できます。二つはたがいを鏡に映した関係になっています。左右の手のように、パーツは同じですが、立体としては向きが逆のものです。
物質をつくるとき、このような関係の二つの型ができるのは不思議です。もっと不思議なのは、私たちの体をつくっているタンパク質は、左手型のアミノ酸ばかりが握手をするようにつながっていること。その理由はわかっていません。
硤合さんが取り組んできたのは、右手型、左手型どちらか一方を選んで物質をつくる「やり方」を見つける基礎の研究。薬の中には一方の型だけに効き目がある場合があり、この研究は薬の開発に役立つ可能性があります。また生命の起源にもせまる壮大な研究ともいえます。
取材・文/奥苑貴世(朝日小学生新聞)
(朝日小学生新聞2026年10月9日付)
