物理学，化学，工学，生物学，医学にわたって基礎・応用研究を行う日本唯一の総合科学研究所。独立行政法人。1917（大正6）年創設。皇室からの下賜金，政府補助金，民間の寄付金をもとに発足。22年に研究室制度を導入し，主任研究員は帝国大学教授と兼任でき自由な裁量をあたえられた。日本の最高研究機関として鈴木梅太郎，長岡半太郎，池田菊苗，仁科芳雄，湯川秀樹，朝永振一郎など多くの科学者を輩出した。研究費も自由裁量にまかされたためにまもなく財政難におちいることになるが，昭和時代初期，研究を応用した工業製品開発に進出，「理研ヴィタミン」をはじめゴム，マグネシウム，工作機械，飛行機部品，合成酒などを続々と開発し商品化，ばく大な利益を上げ，研究費をまかなうとともに100社以上の企業をかかえる理研コンツェルンにまで成長した（現在の企業のリコー…かつての理研光学工業，理研ビタミンなどはその流れをくむ）。1937（昭和12）年には仁科研究室が日本最初のサイクロトロン（陽子加速器）を完成させ，太平洋戦争中には軍部の要請により原子爆弾の開発・研究も行っていた。1946（昭和21）年，GHQによって研究所，コンツェルンも解体された。58年，特殊法人理化学研究所として新たに発足。2003（平成15）年，独立行政法人化。現在，各分野で最先端の研究・開発を行っており，研究所本所は埼玉県和光市，つくば市，兵庫県佐用町，神戸市，横浜市に研究センターがある。◇世界最高速の演算能力（1秒間に10の16乗＝1京）をもつスーパーコンピュータ「京」は理研と富士通が共同開発したもので，神戸の理研・計算科学研究機構に設置され，2012年9月に本格運用がはじまっている。
