記者会見で辞任を表明した石破茂首相=9月7日、首相官邸(写真:©朝日新聞社)
党内の分断をおそれ継続断念
石破茂首相(自民党総裁)は9月7日、総裁を辞任し、政権を退く考えを表明した。7月の参議院議員選挙で自民党・公明党の与党が過半数割れする大敗を喫した後も続投の意欲を示してきたが、自民党内では退陣を求める「石破おろし」が加速。党のルールに基づき、総裁選挙の前倒しを求める意思確認が8日に行われるのを前に、「党内に決定的な分断を生みかねない」という心配から続投をあきらめたようだ。
2日に行われた両院議員総会では参院選の結果について党所属議員を前に、「国民の期待を裏切り、多くの同志を失った。私の責任だ」と語った一方、進退については「しかるべきときに決断する」と話すにとどめていた。参院選からおよそ50日後の退陣表明となった理由について石破首相は、日本から輸入する自動車への関税を引き下げる大統領令の署名にこぎつけるなど、「米国の関税措置の交渉に一つの区切りがついた」ことを挙げた。
党員参加の「フルスペック型」で実施
石破首相の辞任表明を受け、自民党内では後任を決める総裁選への準備が一気に進んだ。9日に総裁選挙管理委員会を開き、今月22日告示、10月4日投開票の日程を決定。新しい総裁の任期は前任者の残任期間で、約2年となる。
総裁選の方法は、全国の党員・党友も投票に参加する「フルスペック型」と、その投票を省く「簡易型」がある。任期途中に総裁が辞任した場合、政治的な空白を避けるために簡易型で行うのが通例だが、今回はフルスペック型で実施すると決まった。衆参両院の議長をのぞく国会議員295票と、同数の295票が100万人規模とされる全国の党員・党友票に割り当てられる。簡易型より党員の声を反映しやすくなり、知名度が高い候補に有利とされる。
より時間のかかるフルスペック型を選んだことに対し、野党からは「国民生活にとってマイナスのスケジュール」(国民民主党の玉木雄一郎代表)といった声もあがっている。野党側は憲法の規定に基づき、臨時国会を早期に招集するよう求める文書を、衆参両院議長に提出した。
総裁選には12日午前までに茂木敏充前幹事長、小林鷹之元経済安全保障相が立候補の意向を表明。そのほか2024年の総裁選に出た複数の議員の出馬が見込まれる。立候補には党所属国会議員20人分の推薦が必要だが、自民党は二つの国政選挙を経て、1年で議員総数が70人以上減っている。その中で推薦人を集められるかも焦点となりそうだ。
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キーワード:2024年の総裁選
岸田文雄前首相の3年の総裁任期満了にともない実施され、過去最多となる9人が立候補した。党員・党友が参加するフルスペック型で行われ、党員に人気の高い高市早苗氏が1回目の投票で1位となったが、決選投票で石破茂氏が逆転。自身5度目の挑戦で、念願の総裁の座をつかんだ。