手話の応援が熱戦をもりあげる こども記者が見たデフリンピック
デフバレーボール女子日本対イタリアの試合=11月16日、東京都世田谷区 ©朝日学生新聞社
11月26日まで東京などで開催
耳がきこえない・きこえにくい選手たちによる「デフスポーツ」の国際大会「東京2025デフリンピック」が開かれています。11月16日、駒沢オリンピック公園総合運動場(東京都世田谷区)の体育館であったデフバレーボール女子日本代表の試合を、読者代表のこども記者「朝小リポーター」が親子で観戦しました。(奥苑貴世、前田奈津子)
デフバレーボール 日本が初戦に勝利
参加した朝小リポーターはめぐみさん(東京都・6年)、すみれさん(千葉県・5年)、あやかさん(東京都・2年)と、お父さん・お母さんたちの親子6人です。東京都によるパラスポーツ応援プロジェクト「TEAM BEYOND」が開いた観戦会に行きました。

デフバレーボールの基本的なルールは、一般のバレーボールと同じです。6人制で競技を行い、1セット25点先取、3セットを先に取ったチームの勝ちです(5セット目は15点先取)。
選手たちは審判の笛の音がきこえません。そこでデフバレーボールでは、審判はネットをゆらすなどして合図することがあります。
また、選手どうしは手を使った合図「ハンドサイン」や、目と目を合わせる「アイコンタクト」でコミュニケーションを取るのが特徴です。

この日は体育館で男子と女子の試合がそれぞれ行われました。リポーターが観戦したのはデフバレーボール女子の初戦となる日本対イタリアの試合です。1セット目はイタリアにうばわれましたが、2~4セット目を日本が連続して取り、3-1で日本が勝ちました。
音に頼らず目でみて楽しめる観戦
デフバレーボール日本女子は、2017年にトルコのサムスンで開かれたデフリンピックで金メダルをとっています。この日は東京大会のバレーボール初日で、体育館の観客席はほぼ満員に。熱気につつまれました。
デフスポーツの観戦は初めての朝小リポーターたち。参加した「TEAM BEYOND」の観戦会では、試合をみるだけではなく、耳がきこえない・きこえにくい人も、そうでない人も楽しめる観戦方法も体験しました。
例えば手話の拍手。手をたたくのではなく、両手を体の前でひらひらと動かすことで表現します。リポーターたちもこのしぐさをすぐに覚え、点が入ったときなどに、たくさんの拍手をしていました。事前に配られた青い手袋をつけて、目でみても楽しい応援です。

デジタル技術を使ったさまざまな工夫もありました。
聴覚障がい者向けサービス「Pekoe」では、スマートフォンに実況解説を文字で表示できます。

スマートグラス「MiRZA」は、眼鏡のようにかけると、レンズの部分に文字が表示されます。試合をみながら、解説も目でみて楽しめます。デフリンピックの会場ではバレーボールのほか、陸上や水泳の競技でも、観戦に使われます。つけてみたリポーターたちは「字が映ってる!」とおどろきの声をあげていました。

解説などが表示されるスマートグラス「MiRZA」=11月16日、東京都世田谷区 ©朝日学生新聞社
※「MiRZA」の利用対象年齢は15歳以上です。保護者の承諾を得て、一時的に体験しました
試合では日本が逆転して4セット目を取り勝利が決まると、たくさんの拍手がひらひらと、選手におくられました。
出場した長谷山優美選手は試合後、「勝つことができてホッとしています」と笑顔をみせました。客席が満員だったと知り「びっくりしました。たくさんの人に興味を持ってもらい、応援してもらえたことがうれしい」と手話で話しました。
取材を終えて
迫力のあるプレーと仲の良さ
声をかけ合えないというハンデがあるけれど、手話で話したり、チームプレーを生かしたりして迫力のあるプレーをしていました。手話で拍手をしたり青い手袋をつけたりして、きこえない選手に伝わるように応援しました。練習のときの仲の良さや、試合中の励まし合いが、チームプレーを生んでいると思いました。(すみれさん・6年)
長いラリーが続いてワクワク
声はコートの中からはあまりきこえないけれど、手話などで会話していて、オリンピックなどとはちがうコミュニケーションの取り方でした。対戦相手のイタリアは守備がすごくて、日本は攻撃がすごかったから、長いラリーが続いて、どっちが点を入れるんだろうとワクワクしました。おもしろかったです。(めぐみさん・5年)
手話やハンドサインにおどろき
試合をみる前、試合中に手話で伝えるのはむずかしいと思っていました。でも、簡単にできる手話やハンドサインを使って、選手たちがうまくボールをキャッチできるように工夫していたのにおどろきました。みにきている人たちも、たくさん手話で応援していました。(あやかさん・2年)
東京2025デフリンピック
11月26日まで東京都・福島県・静岡県で開かれています。日本での開催は初めてです。世界70以上の国・地域から約3千人の選手がおとずれ、21の競技が行われます。競技は入場無料で観戦できます。
取材・文/奥苑貴世、前田奈津子(朝日小学生新聞)
(朝日小学生新聞2025年11月20日付)









