卒業ソング、今どきの小学校では何を歌う? 先生たちは、どう選ぶ?
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歌に思いをこめ未来へ
もうすぐ卒業式。別れのさみしさや、未来への期待をこめて歌われる「卒業ソング」は、時代とともに少しずつうつりかわってきました。卒業ソングにはどんな思いや意味がこめられているのでしょうか。中学校で合唱を指導してきた横中純子さん(東京都府中市立府中第四中学校指導教諭)に聞きました。
選曲にこめられた先生からのメッセージ
小学校の先生が選ぶ「人気卒業ソングランキングベスト10」で1位になった『旅立ちの日に』は、「今 別れの時 飛び立とう 未来信じて」という将来への希望を歌った歌詞が印象的な、定番の卒業ソングです。
1991年に埼玉県秩父市の中学校で校長をしていた小嶋登さんが作詞、音楽の先生の坂本(現在は高橋)浩美さんが作曲しました。
横田さんは「小学校の卒業式で歌う曲は、先生が子どもたちに伝えたい思いをこめて曲を選ぶことが多い」といいます。
「はずむ 若い力 信じて」と語りかける歌詞は、先生が子どもたちの成長を実感するとともに、子どもたちに、将来への自信を持たせます。
また、卒業式の合唱曲でいちばん大切なことは「声を合わせること」だといいます。『旅立ちの日に』も、「ゆっくりしたテンポで歌いやすく、大人数でも声を合わせやすい」ことが多くの学校で歌われている理由だと考えられます。
横田さんによると、「現在の40代以上の世代では、『仰げば尊し』という曲が広く歌われていた」そうです。卒業ソングの歌詞は時代が進むにつれて、どのように変化してきたのでしょうか?
ともに学んだ仲間と声を合わせて
自分の思いを伝える歌が主流に
『仰げば尊し』は明治から昭和にかけて、多くの学校の卒業式で歌われました。「仰げば尊し わが師の恩」とは、「先生への恩は見上げるほど尊い」という意味です。先生への尊敬を強く表した歌詞は、当時の学校に対する考え方や、先生と生徒の関係性を色こく反映していました。

その後、「いざさらば さらば先生 いざさらば さらば友よ」と友達にも思いを伝える『巣立ちの歌』などが歌われるように。そして、「このひろい大空に 夢をたくして」と歌う『旅立ちの日に』や、「『ありがとう』を抱きしめて 歩こう」と歌う『次の空へ』など、自分自身の思いも伝える曲へとうつりかわっていきました。
卒業式で歌うことにはどんな意味があるのでしょう。

横田さんは、「主役である卒業生が人生の節目として成長を見せたり、決意を表したりすることと、参加する保護者や担任の先生に感謝を伝えること」の二つの役割があるといいます。
ともに学んだ仲間と声を合わせて歌うことで、別れに対する切ない感情や、未来に対する希望、そして周りの人に対する思いがより強く伝わります。「歌声には心を動かす力があり、会場全体の気持ちを一つにする効果があります」
また、卒業式に向けた合唱練習は、仲間や先生と一致団結をする最後のイベントです。練習する中で、ときにはうまくいかずに注意されたり、はげまされたりしながら本番をむかえます。「一生懸命に練習した分だけ『成長できた!』と自信につながり、卒業後も心の支えになると思います。式自体も、思い出深いものになるでしょう」
心身が大きく成長する小学校の6年間。その集大成である卒業式は、仲間と協力できるようになったことや、自分の感情を表現できるようになったことなど、成長した姿を保護者や先生、そして自分自身にも証明する場です。「上手・下手は気にしなくてだいじょうぶ。全部をさらけ出して歌ってください」

取材・文/鷲尾達哉(朝日小学生新聞)
(朝日小学生新聞2026年2月19日付)









