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中学入試・合格者の本棚① 女子学院へ進学~読書習慣が育んだ多角的な視野と学びの土台

中学入試・合格者の本棚① 女子学院へ進学~読書習慣が育んだ多角的な視野と学びの土台

中学入試で志望校への合格を手にした子どもたちはどんな読書習慣を持ち、本を読んできたのでしょうか。朝日新聞EduAの好評連載企画「国語のチカラ~生きる力につながる言葉の学び方」の筆者・南雲ゆりかさんに、自身が運営する国語教室で学んだ子どもと保護者の方を紹介してもらい、読書への取り組みの内容、家庭での工夫を語ってもらいます。1回目は、2026年度の受験で桜蔭、女子学院、渋谷教育学園幕張ほか、淑徳与野、浦和明の星女子の計5校に合格したYさん(女子=匿名をご希望)と、受験に伴走したお母さんへのインタビューです。小3の9月から四谷大塚、新小5からサピックスに通い、新小6直前から南雲国語教室で国語対策を行ったそうです。

バードウォッチング中のYさん
バードウォッチング中のYさん

受験では、読書好きのお母さんがメインで伴走した。自由な校風が気に入り、女子学院へ進学予定。もとからの志望校だが、試験対策では主に桜蔭を対象とした。中学では「部活は数楽班(数学的な思考や幾何学をテーマに、精巧な切り絵や模型作品の制作を行う)に入りたい。あと、もうひとつ運動系をやりたいな」と夢を膨らませている。

姉の影響で始まった中学受験への道

――中学受験を意識し始めたのはいつ頃でしょうか。

お母さん(以下「母」と略称):2歳上の姉が中学受験の塾に入っていたのに影響を受け、小3の9月から塾に通い始めました。本来は新小4が始まる前の入塾テストに慣れることが目的で試しに早めに受けたテストでしたが、思いのほか良い成績だったので、本人が「もう入りたい」と希望したのです。

最初は四谷大塚に通い、その後、本人の意向により新小5からサピックスに移りました。それ以外に、新小6の直前から南雲国語教室に通い始めました。国語の成績が伸び悩んでいたため、親から提案して一度行ってみることにしたのがきっかけです。

国語教室の通常授業は7月までで、8月は夏期講習を受けました。その後は、サピックスの授業日が増えたのと家庭で過去問を解く時間を確保することが必要になったので行けなくなりましたが、月に1回程度マンツーマンで国語の過去問対策講座を受講しました。これがとても良く、力がつきました。

読書習慣の形成――低学年から高学年まで

――読書習慣は小さいころからあったのでしょうか。また、どのような本を読んでいましたか。

Yさん(以下「子」と略称):学校の友達も読んでいるような本が好きで、青い鳥文庫の小説をよく読んでいました。『氷の上のプリンセス』(講談社)というフィギュアスケート選手の物語はとくにお気に入りでした。書店で気になったから読み始めたんですが、元々スケートには少ししか興味がなかったのが、読むうちにどんどん知識が増えていくし、それがすごく新鮮で楽しくなって、ずっと読んでいました。ほかにも、『若おかみは小学生!』(講談社)シリーズなども気に入っていました。

母:昔から読書好きで、低学年のうちはいろいろ読んでいました。フィクションだと、ほかにも「こまったさん」や「わかったさん」のシリーズ(いずれもあかね書房)、「かいけつゾロリ」や「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ」シリーズ(いずれもポプラ社)など、気に入ったシリーズものが多かったです。「10歳までに読みたい世界名作」「10歳までに読みたい日本名作」のシリーズ(いずれも学研プラス)もありましたね

本棚に並ぶお気に入りの作品たち(Yさん提供)
本棚に並ぶお気に入りの作品たち(Yさん提供)

子:5年生になると、『ハリー・ポッター』シリーズ(静山社)を読み始めました。最初はグロテスクなイメージがあったから、精神的にダメージが大きいかなと思って避けていたんですが、読んでみたらすごくおもしろくて。映画は見てなくて、本だけ読んでいます。舞台脚本の『ハリー・ポッターと呪いの子』(同)も読みました。

母:主人公がいろんな困難を乗り越えながら仲間と一緒に成長する、といった物語が好みなのだと思います。あとは、専門的な要素があるお仕事小説のような世界観のある物語が気に入っていたようです。

読書量も多かったし、そもそも読書も好きだったので、てっきり国語は苦労しないだろうと思っていました。だから受験の勉強が始まってから、逆に本人も親も「なんで苦労するのかな」と思ったくらい、蓋を開けてみると、国語は苦戦しましたね。

読書棚にそろえる本を選んで

――読書について、親としてどのような工夫をされましたか。

母:読書は強制や義務感ですると続かないと思って、読む、読まないという選択は基本的に本人に委ねていました。

大きく分けると、図書館に連れて行って好きに選ばせるパターンと、家の本棚で好きな物を選んで読むというパターン。後者は例えば、 上の子の中学校で「月に1冊は読みましょう」と推奨されている中1向けの本のリストがあったので、「これは、いっぱい買っておかなきゃ」と思ってそろえたんです。リストにあったのは、私も前に読んだことがある本が大半だったので、その中から子どもが興味を持ちそうだというのを選びました。もともと上の子のためのものだったのですが、実は下の子が好んで読んでいたという感じです。

小5までは好きに読んでもらい、小6になると少し受験を意識し、私が本棚に中学受験頻出の作家さんの新刊本を並べておいておきました。中学受験の国語は新刊本から出題される場合が多いと聞いたためです。 本人が気になったら手に取って読んでみる、というちょっとした誘導のようなことは意識しました。

子:母がすごく本を読むタイプなので、それに影響を受けたというのもあります。

母:確かに、私自身が乱読で本をよく読んでいるので、その姿を見ていたということもあるようです。

同じ本を読んで語り合う親子の時間

中学受験を意識した本棚(Yさん提供)
中学受験を意識した本棚(Yさん提供)

――親子で同じ本を読んで、内容について語り合うことはありましたか。

母:重松清さんや、中学受験頻出作家さんの今年度の本は同じものを読んでいました。たとえば、瀬尾まいこさんの『ありか』(水鈴社)や、髙田郁さんの『星の教室』(角川春樹事務所)、伊与原新さんの『翠雨の人』(新潮社)などです。物語の中で起きた出来事についてどう思うかとか、「これって、こういうことなんじゃない」といった自分の意見について、たまに私から話しかけることはありました。少し、入試の面接を意識していたのもあります。面接で「最近読んだ本は?」と聞かれるかなと思って。本人はそういう意図はまったく知らず、語り合っていたようですが(笑)。

子:物語の中で起きた出来事について、母はどう思うかとか話したり、私は「これってこう思う」みたいな自分の意見を言ったりということはありました。

ただ、論説文は難しすぎて、母が読んでいるようなものはほとんど読んでいないと思います。興味がないというか・・・・・・。問題として出されている以上は読まなくちゃいけないから、読解は得意だったけれど、問題に出されていなかったら読まなかったかな。

母:もともと論説文は物語文よりは得意で、国語教室に通ってから、論説文を読む型を身につけて、すごく上達しました。最終的に「正確にポイントを押さえて読み解くことができる」と南雲先生に言って頂けるほどになりました。 なかなか試験に出る「あたり」はつけられないと思うのですが、ちくまプリマー新書や岩波ジュニア新書などを本棚には置いていました。ただ、物語文だと、模擬試験で出た作品の全文を読んでみたいと本人が望むことはありましたが、やっぱり論説文だとなかったですね(笑)。

塾の教材と参考書の活用法

――受験勉強で特に役に立った教材や参考書はありますか。

子:塾で使っていた歴史資料集と理科資料集がすごく好きで、よく読み込んでいました。親が「もう切り上げて」と止めるほど読んでいたと思います。『国語便覧』(数研出版)も同様で、受験に直結したかというとそうではないのですが、好きで読んでいました。

母:歴史資料集は、塾で習ったことよりも詳しいことが書いてあったりして、自分が知っている知識を元に考えていくとすごくおもしろくて気に入っていたそうです。

『国語便覧』は、渋幕で文学史が必ず国語で出されるので、その対策にいいですよと紹介されて買ったら、文学史対策以上に本人は気に入って読んでいたというわけです。ただ、本番の試験では文学史は1問で、松尾芭蕉が正解だったのですが、俳句自体は覚えていたはずが、学校の教科書でもよく見かけるから誰なのかこんがらがって、間違えてしまったとのことです(笑)。

歴史漫画の積み重ねが資料集を生かす

――資料集を楽しむ背景には、知識の蓄積があったのですね。

子:5年生のとき、家で塾の宿題をあまりやらない時期があって、その代わり授業だけはずっと集中して聞いていました。もともと歴史漫画は好きでかなり読んでいて、その知識が塾の授業での学びと結びついて、資料集を読むもとになっていたと思います。

母:低学年から歴史漫画は好きで読んでいて、日本史、世界史、歴史人物のシリーズも読んでいましたね。家では歴史教科書に定評がある山川出版社監修ということで小学館のものをそろえているのですが、学校や地域の図書館にあるほかの出版社のものも読んでいます。乱読しているように見えますが、頭の中ではつながっていて、知識が蓄積されているのかな。

学習漫画はほかにも「科学漫画サバイバル」シリーズ(朝日新聞出版)や、「ドラえもん」の学習シリーズや科学、社会、探求ワールドシリーズ(いずれも小学館)、学研まんがでよくわかるシリーズ(学研プラス)なども読んでいました。図鑑も好きで「図鑑NEOシリーズ」(小学館)も持っていますし、「ドクガク! 朝日小学生新聞の学習読みもの」シリーズ(朝日学生新聞社)など、勉強系のものも読んでいましたね。

歴史漫画もいろいろ読んだ(Yさん提供)
歴史漫画もいろいろ読んだ(Yさん提供)

――読んで、その世界の知識が増えるというのは読書の醍醐味ですね。

子:ちょうどミラノ・コルティナオリンピックがやっていたから、『氷の上のプリンセス』とか、すごくよくわかりました。あまり言っちゃいけないのかもしれないけど、トイレとか、濡れないようにお風呂の中に持ち込んだりして読んでいました(笑)。受験前の小6の11月ごろに『氷の上のプリンセス』を再読していて、学校に持っていって読んだり。

母:テレビを見ていて解説してくれるんです。ジャンプの種類について、ルッツとフリップの違いとか、アクセルは回転が半分多くなるとか。選手がやっていたスピンをよくまねしたりしますね(笑)。

Edua_本棚の本

机上の勉強だけでなく体験を重視

――読書用の本に限らず、参考書などの使い方で工夫された点はあるでしょうか。

母:勉強でわからなくなったら塾のテキストを見るのですが、それだと索引が付いていないから見つけるのにすごく時間がかかってしまいます。そんな時は、『自由自在』(受験研究社)など、単元ごとになっているものや索引がついているものが便利で、それで探して解説を読んで突き止めていました。

『自由自在』は塾で推奨されていたわけではありませんが、内容が詳しいのと学校の宿題で「自主学習」という、ミニ自由研究みたいなのが毎週あって、そのネタ探しに使っていたというのもあります。

――学校の自主学習とはどのようなものでしょうか。

子:自分で自由にテーマを選んで、ノート見開き最低1ページ分にまとめるというものです。理科だと図鑑を見てプランクトンについてまとめたり、冬鳥について種類ごとに分けてまとめたり。タンポポの種類や外来種の特徴についてまとめたこともあります。

母:テーマは本当に何でもよくて、豊臣秀吉について調べるでもいいし、新聞記事をまとめるでもいいという形でした。実際にバードウォッチングに行ったときに見かけた鳥とか、自分の体験を元にまとめるときもありました。探求とかアクティブラーニングの素地のようなものを養う目的があったのではないかと思います。そういうときにも、図鑑や学習本をいろいろ活用しました。

図鑑類は学校の宿題にも活躍(Yさん提供)
図鑑類は学校の宿題にも活躍(Yさん提供)

――勉強以外で気にかけていたことはありますか。

母:勉強一色の生活にしないことです。勉強面でも、机上の勉強一色にしないことは気にかけていました。例えば実験教室に行ってみるとか、自然観察に行ってみるとか、そういった実体験と机上の勉強を両輪でやるということです 。

習い事も小5までピアノやプログラミングなどいくつか続けていました。小6の夏前まではチアダンスを週1回で続けて、開催される発表会などにも参加していました。

あとは、YMCAさんやYWCAさん主催の小学生だけで行くキャンプなどにも、新小5まで参加していました。初対面のお子さんやボランティアの大学生の方々との集団生活を通して協調性や社会性を育んでほしい、大自然に親しんで体を使った体験もしてほしいと、受験勉強一色にはならないようにしていました。

何かを体験して、発見したり、感じたりといったことはよかったと感じています。正直、家での勉強時間は塾のほかのお子さんと比べると少なかったと思うのですが、そういった体験は意識して機会を設けていました。

EduA_本棚の本

読書を通じて広がる世界

――今後、読書をどのように役立てていきたいと思いますか。

子:読書を通じて、世の中のいろんな考え方とか、多種多様な考え方を知ることができて、それがいろんな人の考えの理解につながると思います。特定の分野に限らず、様々なジャンルの本を読んでいきたいです。

母:一番は、読書を通じて視野や世界観を広げていってほしいです。いろいろな考えや、人によって様々な境遇や世界があるということを知ってもらいたい。特にフィクションだと疑似体験とか追体験ができるので、他者の思いに気づいてその境遇に思いを馳せられるような、理解を深められる人になってほしい。

たとえば、伊予原新さんの『翠雨の人』(新潮社)だったら、女性が理系に進みにくい、科学者として生きることが難しい時代があったこと、それをどう乗り越えてきたかも知ってほしいし、ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)もイギリスの格差社会というのを肌で感じてほしい。朝比奈あすかさんの『ななみの海』(双葉社)は児童養護施設で親と離れて暮らす子どもたちの生活が描かれていて、そういう環境のお子さんがいることを知ってほしいです。

日本に限らず世界各地の境遇についても、時代も現代だけでなく、戦前や戦中などについてもです。本人はまだ読んでいないかもしれませんが、本棚には『わたしはマララ』(光文社)や、向田邦子さんの『父の詫び状』(文芸春秋)なども置いています。身の回りだけだと経験したり見聞きしたりすることがなくても、本を通じて触れる、思いを巡らせることができるので、世界を広げていってほしいなと思っています。

「中学入試・合格者の本棚②」など、子どもの国語力・読解力を伸ばす長期連載「国語のチカラ~生きる力につながる言葉の学び方」のバックナンバーはこちら

 福留 香織(ふくどめ かおり)さん

 福留 香織(ふくどめ かおり)さん

福留 香織(ふくどめ かおり)さん

EduA編集部
1999年入社。「アサヒグラフPerson」「週刊朝日」「AERA with Kids」「AERA大学ムック」、朝日学生新聞社などを経て現職。

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