動物園・水族館の赤ちゃん、観察のポイントは? 子ザルのパンチには世界が注目
千葉市動植物園提供
お母さんがわりのぬいぐるみをぎゅっとだきしめる子ザルのすがたが、日本だけでなく世界からも注目を集めています。千葉県の市川市動植物園で生まれたニホンザルのおす、パンチです。たくさんのお客さんが訪れるなか、飼育員さんたちはパンチに一日も早く群れになじんでほしいと見守る毎日です。
群れのなかの一頭にすることが目標
4月初めの春休み、市川市動植物園のサル山のまわりには、いくえもの人垣ができていました。「パンチくん、どこ~?」と、子どもたちの声も。群れのなかでひときわ小さい体のパンチがすばしっこく走り回るすがたを見つけると、笑顔の輪が広がりました。

オランウータンのぬいぐるみをだっこするパンチがSNSで大人気になった2月から、入園者数は増え続けています。3月は過去最高の約9万人で、前の年の3月の4倍ほどになりました。「約半数が外国からのお客さんではないか」と動植物園課の課長・安永崇さんはいいます。
園では、動物もお客さんもストレスなくすごせる環境づくりに心を配っています。小学生以下の子が最前列で見られるキッズゾーンをもうけたり、「スマホより心のフィルムにおさめよう」といったマナー標語を募集したり。サル山の整備などへの寄付を呼びかけたところ、3月末までに約2千万円が集まりました。
最近のパンチは、ぬいぐるみとはいっしょにいません。「パンチが一頭のニホンザルとして群れのなかで成長して、他のサルと見分けがつかなくなる日が来ることが目標です」と安永さんは話します。
パンチのあゆみ
2025年7月26日 誕生
お母さんザルは、猛暑のなか初めてのお産でパンチを育てようとしなかったため、人の手による「人工哺育」が始まりました。ニホンザルの赤ちゃんはお母さんにしがみつく習性があるため、タオルや動物のぬいぐるみを準備。パンチは、オランウータンのぬいぐるみの毛あしの長さが気に入ったようだといいます。

9月

2026年1月19日 生後約半年
55頭の群れに入れる訓練をスタート。市の動植物園課長・安永崇さんは「初めのころ、パンチはポツンとしていました」

2月
2月5日、園の公式Xに、写真とともに「パンチの成長をあたたかく見守ってください!」と投稿したところ、人気が爆発。アメリカ、台湾、イタリアなどからもはげましの手紙が届きました。


3月
だんだんと群れになじみ、ほかの子ザルと遊ぶすがたも見られるようになりました。

4月
親がわりに育ててくれた飼育員さんたちが大好き。えさの時間になると、ぎゅっとしがみつきます。

動物の赤ちゃん 静かに時間をかけて観察を

春は、さまざまな動物の赤ちゃんが生まれる季節です。動物園や水族館でも赤ちゃんがお母さんやお父さん、飼育員さんのもとで、すくすく育っています。観察するときには、どんなことに気をつければいいでしょうか。
模様、動き方…成体とのちがいは?
「赤ちゃんと子育て中のお母さんにストレスを与えないように、静かに見守るのが基本です」と話すのは、東京・上野動物園の元園長、小宮輝之さんです。
特に初めて赤ちゃんを産んだお母さんの場合は、まわりで大きな声で騒ぐと、おどろいて赤ちゃんをかくしたり、ストレスで育児をやめたりする心配もあるそうです。

赤ちゃんのちょっとした動きを見のがさないために、ゆっくり時間をかけて観察することも大切です。赤ちゃんが見えなかったとしても、時間をあけてもう一度見に行ったり、時間帯を変えて観察してみたりするのもよさそうです。「朝一番や夕方は動物がよく動く時間帯なので、ねらい目です」と小宮さん。
模様や毛の色、形、動き方、鳴き声など成体(おとな)とのちがいも見てみましょう。動物の赤ちゃんの成長はとても早いので、定期的に観察に出かけるのもおすすめです。
「たとえば1か月に1回程度見に行くと変化を感じられるかもしれません。おとなになるまでの成長を観察し、記録していくと、たくさんの学びがあると思います」

コミュニケーションのとり方は?
子ザルのパンチのニュースで、ニホンザルに興味を持った人もいるでしょう。サル山がある動物園や、野生に近い状態でくらしている野猿公苑は各地にあります。
愛知・日本モンキーセンターの学芸員・赤見理恵さんは「ニホンザルは群れで生活するので、ぜひコミュニケーションのとり方に注目してほしいですね」と話します。全身の動きや表情、声で伝えるそうです。
生まれたばかりの子ザルは、お母さんにぎゅっとしがみつき、やがて子ザルどうしで遊んだり、おとなや赤ちゃんとかかわったりしながら群れでのルールを学びます。「双眼鏡を持っていって、表情をよく観察することをおすすめします。何回か通っているうちに、サルたちの見分けがつくようになります」と赤見さん。

愛知県の日本モンキーセンターで4月5日に生まれたクロミミマーモセットのふたごと、お父さん=4月12日 日本モンキーセンター提供
もし訪れた動物園で数種のサルがいたら、見比べるのもいいそうです。「ニホンザルはお母さんが子育てをしますが、クロミミマーモセットやタマリンは、お父さんがだっこやおんぶをします。社会のちがいを比べるのもおもしろいですよ」
さらに知りたくなったら、図鑑や本を読んでみましょう。「身近なニホンザルは、人と野生動物の共存について考えるきっかけを与えてくれる動物でもあります」と赤見さん。観察から調べ学習へと広げてもいいですね。
家族と話そう
動物園に行ったら見たい動物はなにか、どんなところに注目したいかを話してみよう。
取材・文/別府薫、浴野朝香(朝日小学生新聞)
(朝日小学生新聞2026年4月16日付)









